第39話 かかりつけ薬剤師へお願い
ビニール袋に薬を入れた後、それを渡したら帰ってしまうと思うと、おじちゃんに渡せずそのまま握ったまま、ずっと下を見ていた。
「なぁ、春香ちゃんに一つだけ頼みがあるんだ」
「なぁに? 私、何でもするよ」
おじちゃんの声に顔を上げ、まっすぐ見つめた。その言葉に嘘偽りはない。私にはその覚悟がある。
「俺があの世に行く時、見送ってくれねぇか?」
「も、もちろん! わたし、おじちゃんのかかりつけ薬剤師だから!」
絶対、私が見送ってあげる。それぐらい簡単な事、そう思った。
「ありがとうな、じゃぁまた入院したら連絡するよ」
そう言って、おじちゃんは私の右肩をぽんぽんと二回叩き、笑顔で薬を受け取ると、クローバー薬局を出て行った。足取りはゆっくりで、その背中は少し震えているように見えた。
次に私がおじちゃんに会ったのは病室だった。
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