第38話 かかりつけ薬剤師として
おじちゃんの言う通り、人はいつか死ぬ。それはわかっている事なのだけれど今まで生きてきて一度もちゃんと考えたことなんてなかった。ましてや、それが自分の身近な人で起こる事なんてありえないと思っていた。
それに、それに、せっかく再会できたのに、もう会えなくなるなんて……。
私は今にも泣き出しそうだった。むしろ、その場で大声で泣いて何もかも放り出してしまおうかとも思った。唇を噛みながら瞼から溢れだすのを必死で我慢していると、おじちゃんは優しい口調で私に言った。
「春香ちゃん、今日の薬がどんな薬か教えてくれねぇかな? 今日からかかりつけ薬剤師なんだろ?」
私は流れ落ちる寸前の涙を手の甲でごしごしと拭った。未だに状況を受け入れられずにいた。でも、おじちゃんの言うとおり今日から私はおじちゃんの「かかりつけ薬剤師」になったのだ。ちゃんと「かかりつけ薬剤師」として務めを果たさなければならない。
「わがっだ。今がら説明ずるね」
溢れ出る涙も鼻水も止められず、嗚咽だって構わず、薬の事を一通り説明した。たぶん、私が何を言っていたのか全然聞き取れなかったと思う。でも、おじちゃんは一言「よくわかったよ」と、言ってくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます