第38話 かかりつけ薬剤師として

 おじちゃんの言う通り、人はいつか死ぬ。それはわかっている事なのだけれど今まで生きてきて一度もちゃんと考えたことなんてなかった。ましてや、それが自分の身近な人で起こる事なんてありえないと思っていた。

 それに、それに、せっかく再会できたのに、もう会えなくなるなんて……。

 私は今にも泣き出しそうだった。むしろ、その場で大声で泣いて何もかも放り出してしまおうかとも思った。唇を噛みながら瞼から溢れだすのを必死で我慢していると、おじちゃんは優しい口調で私に言った。

「春香ちゃん、今日の薬がどんな薬か教えてくれねぇかな? 今日からかかりつけ薬剤師なんだろ?」

 私は流れ落ちる寸前の涙を手の甲でごしごしと拭った。未だに状況を受け入れられずにいた。でも、おじちゃんの言うとおり今日から私はおじちゃんの「かかりつけ薬剤師」になったのだ。ちゃんと「かかりつけ薬剤師」として務めを果たさなければならない。

「わがっだ。今がら説明ずるね」

 溢れ出る涙も鼻水も止められず、嗚咽だって構わず、薬の事を一通り説明した。たぶん、私が何を言っていたのか全然聞き取れなかったと思う。でも、おじちゃんは一言「よくわかったよ」と、言ってくれた。

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