第37話 これから
「一応、抗がん剤をやる」
おじちゃんから言ってくれなければ、意気地なしの私から病気の事を聞くことなんてできなかっただろう。言ってくれてホッとした反面、「一応抗がん剤」という言葉に嫌な予感がしてハッと顔を上げておじちゃんを見つめた。
「本当は先週の火曜日から抗がん剤やる予定だったんだけどよ、風邪ひいちまったから来週からに延期だ。FOLFIRINOX療法っていうやつなんだけど、春香ちゃん知ってるか?」
「知ってる」
膵臓癌は偶然にも学生時代に病院実習で勉強した化学療法だった。だから、覚えている。FOLFIRINOXを使うのは最悪の状態……。
「膵臓癌ステージⅣだとよ。癌がいろんなとこに転移してるから、手術はできねぇ。余命を延ばすために月曜日から抗がん剤をやる。余命はあと半年。膵臓癌の進行は早いから、人によっちゃあ半年持つかもわからねえって」
そんな事、おじちゃんに言われる前にわかっていた。その化学療法をする人は本当に最悪の状況だということを。
「まぁ、半年って言われたけど、ガッツであと一年は生きるけどな。なんだよ、そんな暗い顔するなよ」
おじちゃんは私の肩をバチンと叩いて、がっはっはっと、大きく笑った。
「だって……」
「人間はいつか死ぬ。ただそれだけじゃねぇか」
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