第12話 あと二週間

 白紙が来てから二週間、私はまったく指名を取れず、再度事務室に呼び出された。久美子さんは私の顔を見た後、視線を事務室の壁に移した。視線の先には、「かかりつけ薬剤師指名件数表」が貼られている。一番上には薬局長の尾崎久美子、管理薬剤師の桑原真澄、と、役職者の名前が記載され、その下には入社した順で名前が記載されている。私の名前は一番下に名前があり、その上には一つ上の先輩の「相田」、三つ年上の「横松」と名前が並んでいる。名前の右横には赤い円のシールが数枚貼られていてそれが指名数を表している。私の名前の横には依然としてシールがない。

「今月も指名が取れていないのはあなただけなのよ」

 指名件数表は月ごとに縦線が引かれ、久美子さんの横にはシールが2つ、真澄さんの横には1つ、相田さんの横には3つのシールが貼られていた。

「春香はどうして指名が取れないと思う?どういう患者さんに今まで投薬したの?」

 久美子さんはゆっくりとした口調で言った。

「私が今まで投薬した患者さんは、急いでいたり、すでにかかりつけ薬剤師がいました。そうじゃなくても、かかりつけ薬剤師についてよく理解してくれない人もいて、私があたる患者さんはそういう人ばかりでした」

「はぁ?あなたねぇ、人のせいにするんじゃないわよ」

 久美子さんはバンと机を叩き、立ちあがった。その顔は一気に真っ赤になり、その両手はプルプルと怒りに震えている。私は久美子さんを大激怒させてしまったみたいだ。

「指名が取れないのは患者のせいだっていうの?ふざけんじゃないわよ。人のせいにする前に、自分が何をしてあげたか考えてみなさい」

「はい……」

 久美子さんは怒って事務室を出て行った。開いたドアから、他のスタッフがざわついている様子が見えた。私はこれから一体どうしたら良いのだろう。

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