第5話 最後だしご飯でも

「春香、せっかくだし最後にご飯でも食べに行かない?」

「良いよ。行こう」

 退職する一週間前に美希から仕事の引き継ぎが終わって、出勤最終日に声をかけられた。美紀とは同期だけれど、今まであまり関わりがなくてお互いの事をあまり知らなかったし、美紀の言う通りせっかくだから最後に一緒にご飯に行ってみようと思った。

 場所はみなとみらいの赤レンガ倉庫にある和カフェで、夜はお酒も飲める場所に、今度の金曜日20時に現地集合となった。

 約束の日、美紀は有給消化で休みだったので、薬局の閉店業務を終えてから一人で現地に向かった。

 クローバー薬局みなとみらい店はその名の通り、横浜のみなとみらいの中心にある。そのため、赤レンガ倉庫にも歩いて行くことができる最高のロケーションだ。

 薬局を19時に閉め、約束の20時までまだ少し時間があったので、ランドマークタワーに寄って餞別を買う事にした。

 みなとみらいのシンボルであるランドマークタワーは、夜景が見られるだけでなく飲食店やショップも豊富だ。特にプレゼントが決まっていなかった私はショップフロアをうろうろしていると、今治タオルのお店を見つけた。

「あっ、これ可愛い」

 白いタオル生地に桜が刺繍されていて手に取るとふわふわしてとても柔らかかった。きっとハンカチならいくらあっても困らないだろうと思ってレジに持っていくと、「春香、先にお店入っているね」と、約束の時間10分前に美紀からLINEが来た。美紀は案外時間にきっちりしているんだなぁ、なんて思いながら先を急いだ。

 約束のお店は私も一度来た事があって、人気店である事は知っていたけれど、今日もお店の外まで行列ができていた。それを横目に店に入り、美紀を探す。店内は薄暗いので目を凝らしながら店内を歩いていると、奥に美紀の姿があった。しかし、そこに座っていたのは美紀だけではなく、隣と向かいに同い年くらいの男性が座っていた。

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