第2話 白紙
私が働いているクローバー薬局は、あらゆるものがイメージカラーのグリーンに統一されている。薬局の外観や薬を入れる袋、お薬手帳など患者さんの目に触れるもの以外にも、社内文書や給料明細も薄いグリーンの封筒に入っている。しかし、一つだけ例外があった。それが『白紙』こと辞職勧告だ。
私は白い封筒を久美子さんから受け取ると、すぐにハサミで封筒を開けて中身を確認した。そこには、「社内規定によりあと1ヶ月以内にかかりつけ薬剤師になれない場合には解雇されます」と、記載されていた。
もしかしたら、白封筒でも中身は白紙ではないかもしれない、なんて心の隅で思っていたけれど、それも完全に打ち砕かれた。
「あなた、この3年と5ヶ月いったい何をしていたのよ」
苛立つ久美子さんの前で私は俯く事しかできない。
かかりつけ薬剤師になるには3年の実務と認定薬剤師の取得、地域活動を行う事が厚労省から出されている算定のための必須条件だ。それを満たした上で、患者さんから同意を得てかかりつけ薬剤師として選ばれる、いわゆる指名を受けなければいけない。
クローバー薬局ではその必須条件を満たせない者は当然解雇され、さらに条件を満たしても半年以内に指名が取れなければ解雇される。
「あなたを責めるわけではないの。この3年間何をしていたのか教えてちょうだい」
私はこの3年間についてありのまま話す事にした。
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