私、かかりつけ薬剤師に立候補します!!
青砥白
第1話 指名が取れなければクビ!
「春香、あなたに渡すものがあるの。ちょっと事務室に来なさい」
朝礼が終わると薬局長の久美子さんは、私の目をじっと見つめて言い、ゆっくりと事務室に向かって行った。他のスタッフは各々、薬局の開店作業やすでにファックスで送られてきた処方箋を調剤し始めている。それを横目で見ながら、調剤室を出ていく久美子さんの後をついて行った。私が呼び出される理由はわかっていた。
「クビだ……」
事務室は朝礼が行われていた場所とは反対側からドアを一つ挟んだ隣の部屋で、休憩や事務作業に使われる。普段なら5秒で行けるその距離は、今日はもっと遠くなって欲しいと思った。一歩一歩ゆっくりと歩みを進めるその先には、すでに事務室の椅子に座った久美子さんが見えて、その姿は私を地獄へ導く閻魔様のように見えてきて、手のひらがじっとりと汗ばんでくる。
「春香、そこに座りなさい」
私が事務室に一歩踏み入れるか入れないかのタイミングだった。後手に事務室のドアを閉めると久美子さんの向かいの椅子に腰掛けた。
「もうわかっていると思うけど、あなたに白紙がきたわ」
『白紙』
それは辞職勧告だ。
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