3

不意にも頭の中に声が響いた。



“……カガリ……”



その瞬間、私は悟った。

きっと、これが私の名前。

そう。……きっとこれが。

だから、私は口を開く。



顔を上げて、柊の目をしっかり見て。



「カガリ」



確信なんてない。だけど本能が囁きかけてくるんだ。

“お前の名前はカガリだ”と。



「……思い出したのか?それが貴様の名前か?」



「……はい。」



「それじゃ歳はいくつだ?」



柊にそう聞かれる。



「12です。」



そう、答える。

……不思議だ。

名前が思い出せたら歳も思い出した。



「やはり俺より年下か。」



予想はしていたが私よりも柊の方が年上のようだ。

柊は一体何歳なのだろうか?



「じゃ、最後の命令(しつもん)だ。……貴様の名字はなんだ?」



一瞬にして悟る。

柊は最初からこれが聞きたかったのだ。

柊の雰囲気や、顔の表情から私はそう、悟った。



「分からない」



これだけはどうしても分からない。

どんなに頭を回転させても思い出せない。これだけは。



「……そうか、残念だな。ならここで貴様を殺すしかないな」



そう、柊が口を開いた。

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