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「柊(しゅう)様!」
女性特有の高い声が彼の後ろの方から響く。
その声に反応して、後ろをチラッと見る彼の動作から、彼の名前が“柊”だと分かる。
「柊様?その女の子は、一体誰ですか?」
そう言いながら柊の後ろから一人の女が歩いてくる。
この女も軍服らしきものを着ている。
この二人は軍人なのか?
それに「その女の子」とは、私のことだろう。
その上、“柊様”と呼ばれていることから少なからず女より柊の方が身分が上だと理解できる。
だけど柊は女の問に答えず私に命令する。
「貴様は本当に何もわからないのか。自分の名前すら思い出せないのか。」
そう言って紅の瞳をギラつかせ、睨みを効かせてくる。
……綺麗な瞳……
私はその瞳に一瞬にして心を奪われた。
「貴様、聞いているのか」
どうやら柊は私が命令を聞かないことに少しイラついているようだ。
柊の後ろにいる女は状況が飲み込めないという顔で私と柊の会話を黙って聞いている。
「……私の……名前……」
そう呟いて私は俯く。
思い出せそうなんだ。もう少しで思い出せそう。
そんなことを考えながら、頭を必死に回転させる。
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