Part2 口から火を吹く

2-1 口から火を吹く

 「はは……。ドッキリにしては雑ですぜ……? あいつ……うちの支部長はそんなホイホイと攫われるような弱っちいタマじゃないんですがね……?」

「そうですよ! その2人の男たちだって、私達が一発殴って手負いのはずなのに……」

「残念ですが、ドッキリではありません」

「はあ」

「そこでですね。引き続き支部長の救出任務をお願いしたいのです」

「いやあー。見ての通り、2人とも満身創痍でしてね。我々には荷が重すぎると言いますか」

「とは言っても、あなた達以外に頼める相手もいないんですよ。それに、聞いたところによると、あなた達が例の」

「これを受けないと失業する、ですか……」

ガーネットはがっくりと肩を落とす。

「そうです」

「それは支部長との契約でオフィスのネフィリム退治をすればクビは免れるって話だったんですが」

「なら、今度は私と契約しましょう」

「諦めなよ白桃。そもそも、支部長さんがいなかったら契約も何もないよ」

ハァー……、と白桃は長い溜息をつく。

「わかりましたよ。頼みますから我々が帰ってきたと思ったらパースエイダー殿まで誘拐されました、なんて言わないでくださいよ」

「ご心配なく。私はこれでもGARDEN関東支部の支部長ですから」

「あ、一つだけ質問いいですか?」

「何でしょう?」

「そもそも、パースエイダーさんはどうして岡山に来てるんですか?」

「……というのは?」

「だって、私たちが任務を受けてからここまで帰ってくる間にうちの支部長が誘拐されたのに、それから数時間の間に関東支部から岡山に来るのって、ちょっと早すぎまムゴッ!」

ポーズを決めてパースエイダーに詰め寄るガーネットの口を白桃が必死に塞ぐ。

「これはとんだ失礼を。なにぶん躾のなってないガキでして」

「ええ、お構いなく。私はただの観光ですよ。ところで、あなた方は確か親子関係であるという風に聞いているのですが……」

「一応は。義理ですけど」

「なるほど……」

パースエイダーはガーネットをじっと見る。当のガーネットは口を塞ぐ白桃の手をはがそうと必死になっていてそれには気が付かなかった。

「では、私も用事があるのでこれで失礼します。では、任務の方、頼みましたよ」

「はっ」

パースエイダーが部屋を後にしたのを確認すると、白桃はガーネットの口を開放した。

「あの人、何か隠してない?」

「大人の秘密事に子供がズケズケと入ってくるなって言ってるだろ。悪い奴じゃなさそうだし気にしなくていい」

「もう。また私だけ仲間はずれにして。次にどっか行く時は私も連れて行って!」

白桃は、時々ガーネットに何も言わず旅に出ることがある。ガーネットがそれを問い詰めても何も言わずに誤魔化されて逃げられてしまうのだ。

「あーあー。わかったわかった」

「わかってない」

「支部長を探しに行くぞ」

「あ、また逃げた!」

白桃は小走りで部屋を出ようとした。ガーネットはその袖を掴もうとするが振り払われてしまった。

「親子水入らずって言うじゃん?」

それを聞いた白桃は急に立ち止まる。見事、白桃の袖を掴むことに成功したガーネットは不思議に思ってその顔を覗きこもうするがそっぽを向いて顔を隠された。

「どうしたの?」

「何でもねえ」

「そっか……」

秘密にズケズケ入り込むなって言ってるし、と空気を読んで様子がおかしいのを詳しく聞かないことにした。

「行くぞ」

「うん……」

ガーネットには白桃がどんな顔をしているかは見えなかった。わかるのは、腕を組んでのっしのっしと足を運んでいるということだけだった。

 吉備団子の箱を持った2人は岡山駅前の桃太郎像の椅子に座って、学生服を着て手を繋ぐカップルやスーツを着てせかせかと歩くOLを眺めている。白桃たちに向けられる好奇の目は気にしない風に装った。ガーネットは白桃の脇腹を小突く。

「白桃、思いっきりガン見されてるよ」

「そんなもん無視だ、無視」

「その和服を脱ぐって選択肢は無いの?」

ガーネットが白桃が着ている和服の右腕側にできていたシワを指先でなぞっていると、こそばゆいんだよ、と指を弾いた。

「当たり前だ。武士スタイルが俺のアイデンティティーなんだよ」

白桃は追撃を仕掛けようとするガーネットを無視して吉備団子を一つ掴んで小包を破ると、腕を狙っていたガーネットの狙いは吉備団子に変更され、白桃の手から奪いとってそのまま自分の口に放り込んだ。白桃は空になった手で、団子をモチモチと咀嚼するガーネットの頭を叩いた。

「痛った!」

「そもそも、お前のその、季節外れの服装こそどうにかならねえのか。暑苦しくて仕方ねえや」

「脱いだら寒い。死ぬ」

「そんなことねえだろ。こんな晴れ晴れとした陽気の日に。いいから脱いでみろって」

白桃はガーネットのぶかぶかしたジャケットのファスナーに手をかける。ガーネットは全力でそれを拒む。

「無理だって! そんなに薄着の私が見たいの? 変態か」

「馬鹿言ってんじゃねえ」

ガーネットの服から離した手で吉備団子を掴み、今度は奪われないように間髪入れず食べる。

「それにしても、見つからないね」

「真面目に探してねえからだ」

「え? 私は本気で探してたけど?」

「どの口が言ってんだ」

白桃は団子を頬張ったまま話しているガーネットの両頬を引っ張った。ガーネットはモゴモゴと何か話そうとするが言葉にはなっていなかった。

「やっぱ、聞き込みもしなきゃなんねえかな」

「もごもご」

「ちゃんと話せ」

白桃がガーネットの頬を離してやると、ガーネットは喉を大きく上下させた。

「そうだね、って言ったんじゃ!」

ガーネットは白桃の肩をポカポカと叩く。

「もっと建設的な意見を言え」

白桃は立ち上がり駅前をのんびり歩いている少年たちに近づいていった。白桃を不審がって相手にしなかった少年たちも、ガーネットが加わった途端によく喋りだした。白桃は一度舌打ちをしてその場を離れ、駅ナカで愛想を振り撒く美人の女性販売員に話を聞きに行った。


 調査に一段落ついた2人はファミリーレストランで腰を落ち着かせた。パフェにタバスコをおもむろにぶちまけるガーネットを見て、眉間にシワを寄せる。ピンク色になったドロドロの液体がついたスプーンをくわえながらタバスコを勧めると、シワは更に深くなった。

「そんなに険しい顔してたら顔に型が付くよ」

「誰のせいだと思ってる」

「美味しいと思うんだけどなあ。タバスコパフェ」

「砂の付いたマグロのほうがまだマシだ」

「いや、砂が付いてたらもう……」

「目障りだから早く食べてくれ」

「ひどーい。家庭内言葉の暴力。個性を潰す教育」

白桃は空になったパフェの容器に銀のスプーンを落とした。一方のタバスコパフェは半分ほど残っていた。ガーネットはあっかんべー、と舌を出してパフェのフレークを砕く。白桃は通信端末を取り出した。

 「……で、収穫はあったの?」

ガーネットは小さな櫛を使って髪を懸命に解き、白桃は口元を手で隠しながら通信端末に指を滑らせている。もちろんガーネットにもそれが笑いを隠しているものと気付いていたが、それよりも初老の男性が嬉々として電子機器を使いこなしている光景に引いていた。

「35歳、バツイチで」

テーブルが一瞬揺れて、その上に置いてあったパフェやら広告やらが音を立てる。ガーネットがテーブルの下で白桃の足を蹴って、その膝がテーブルに当たったのだ。店内が唐突に静まりかえり、その場にいた人々の犯人探しが4秒間だけ行われた。どこかにいた女性の笑いを押し殺す声を皮切りに、店内で再び、程よい雑音が鳴り始めた。

「婚カツの話はどうでもいいの」

「トンカツ?」

「……」

「俺が悪かった」

「許さないから」

「そういうお前だって髪をセットして色気付けてるじゃねえか。あんなガキどものどこがいいんだ」

「真面目な話をしようとしてる時に面白くもないダジャレをぶっ飛ばしてくるオッサンよりはマシでしょ」

「いいオッサンじゃないか。大事にしろよ」

ガーネットは白桃のコップにタバスコを混ぜる。

「食べ物で遊ぶな!」

「自分の娘で遊ぶな!」

食べ物で遊んだ、という言葉が胸に刺さったガーネットは白桃のタバスコ水を飲み干す。空になったコップをテーブルに置く。

「……で、収穫は!」

「どうにも、誘拐されてる割には支部長はあんまり抵抗している様子はなかったみたいだ」

「え、駅前を堂々と歩いてたの?」

「そうらしい。ヒョロヒョロのガキが一人、白目を剥きがちなマヌケが男は二人、女は一人」

「その女の人が支部長」

「だろうな。面倒くせえことになってきたぞ」

「え?」

白桃は、自分たちを襲った二人組の男が白目を剥いていたのを思い出していた。今回は事務所で争っていた時にデスクを飛ばしてきた支部長が敵になっているとしたら苦戦は免れない。

「支部長も白目を剥いてるなら、さっきの男どもと同じように俺らを襲ってくるって事だ」

「デスクを投げて?」

白桃はコップに水を注ぐ。ガーネットはため息をついて両手で顔を覆う。

「お前こそ収穫はなかったのか?」

「残念ながら」

「俺をバカにできた身じゃねえな」

「どーもすいませんね」

「俺はもう1つあるぞ」

「それ自慢するためにわざわざ聞いたでしょ」

「そいつらが入っていったビルもわかったぞ」

「すごいなあ。どうやったの?」

白桃は食器を廊下側に寄せて席を立った。その手にあった通信端末で、岡山県トップクラスに優秀なバディとの噂がある矢鳥へと電話をかけた。

「35歳、バツイチだ」

「聞いた私がバカだった」


 2人は待ち合わせ場所である市内某所のバーに来ていた。大通りを外れて裏路地に入った薄暗い場所にあるので客は一人もいなかった。その代わりに、この店のオーナーである男がカウンター席に座っていた。濃い茶色の服を着こなすその男は、少し長めの茶髪を垂らしながら通信端末をいじっている。2人が入ってきたのに気がつくと、通信端末の電源を落として顔だけを白桃たちに向けた。白桃はテーブル席のソファーに座る。その体がソファーに沈んでいく。

「女でもできたのか?」

白桃がそう聞くと、矢鳥は乾いた笑い声を上げる。

「冗談はよしてくださいよ。美作に殺されるッス」

「で、その美作は」

「ここッスよ」

「……」

矢鳥がキッチンを指す。その先には酒やワインが並べられた棚しかなかったが、一瞬まばたきをした間に、頭には大人の僧侶が被っているような大きい深編笠をかぶり、上下に小学校の体操服を着ている子供が現れた。身長は140センチほどだが、その体に対して大きすぎる深編笠があるために、身長150センチ弱のガーネットよりも背が高く見える。うわっ、と声を上げるガーネットに対して、白桃は無言でちらっと姿を確認するだけだった。

「毎回ビビるから常にステルスかけるのは止めてよ、美作」

「その奇妙な服装もな」

「否」

深編笠の前側に開いている穴から少年の高い声がする。

「自分からすれば、みんな異常な服装してるッスけどね。自分を除いて」

「お前は普通すぎる。無味無臭」

「私は異常じゃないって。環境に適した服装を着てるだけだから」

「でも、もうすぐ夏ッスよ? 冬真っ盛りみたいな服着てるッスけど」

「私が寒いと思ってるからいいの!」

「でも、見るだけで暑苦しいっす」

「それに加えて、密着されると余計に暑苦しい」

「同意」

「大人が揃って子供をいじめないで。あと美作は逆に寒すぎるでしょ」

「否」

ガーネットが美作の深編笠を外す。中からは短髪を逆立てている少年が現れた。三白眼で子供にしては妙に目つきが悪く、その目で睨まれたガーネットはヘビと目を合わせたような感覚に陥る。

(いっつも思うけど、なんでそんな怖い顔で私を見るの……)

登場してから微動だにしていなかった美作は両手で顔をあおぐ。その目は変わらず深編笠を持って苦笑いをしているガーネットに向いている。

「あちー」

生意気な声が聞こえて反射的に深編笠を被せる。美作は自分をあおぐ手を下ろし、再び棒立ちになった。視線を感じなくなって緊張の糸がほぐれたガーネットはソファーにドスンと座る。

「だってさ」

「お前しか興味持ってなかったぞ」

「……それで、手伝って欲しいってのは何ッスか?」

「支部長がさらわれたって話は聞いているか?」

「あの噂、やっぱり本当だったんスね」

「それも私たちが悪い、みたいな空気になってて」

「失敗したらバディ揃ってクビのオマケ付きだ」

「やっとクビになるんッスね!」

「なんか、喜んでるように見えるんだけど?」

「あ、あはははは、そんなことないッス! お願いだから店は燃やすのはダメッス!」

「とにかく、支部長を救出する手伝いをして欲しい」

「御意」

「やった! 美作は話が早くて助かるなあ」

「あの」

「やって欲しいのはビルの偵察でな。敵の兵隊の数、できたら弱点なんかも探ってもらいたい」

「精神投影が一人いるっぽいしね。できるだけ楽に倒したいから」

「了解した」

「じゃあ俺はおやつ食ってくるからな。ガーネットも引き続き情報収集を頼むぞ」

「え?」

白桃はそそくさと外に出ていく。残されたガーネットは机に伏せる。

「どんだけ自己中なのよアイツ……」

「そもそも自分、まだ調査するって言ってないッスけど……」

無言で棒立ちの美作をよそに、ガーネットと矢鳥はため息をつく。


 ガーネットは問題のビルの近隣住民に、最近なにか変わった事がなかったか聞き込みをした。しかし、明らかにイタい中学生オーラを醸し出しているガーネットはなかなか相手にしてもらえず、情報は得られないままであった。

「き、君……駅前で武士の格好をした人と一緒にいる子だよね……? 写真撮っ」

「ありがとうございましたー!」

(ダメだ……全っ然、真剣に話を聞いてもらえない……)

危険な匂いがした家から全力で逃げていると、ちょうど調査に向かおうとしていた美作と矢鳥に遭遇した。相変わらずの深編笠と無地Tシャツを身に付けている2人はのんびりと現場へと歩いていく。

「美作、ガーネットッスよ」

「認めた」

「小学生のくせに難しい事言わないでよ」

「否。忍者だ」

「深編笠を被っている間は小学生じゃなくて忍者ッスよねー」

「我は永遠に忍者だ」

「もうそれでいいよ」

「ところで、白桃はまだ戻ってないんスか?」

「もうアイツだけクビにして欲しいよ……矢鳥たちで暗殺してくれない?」

「不可能」

「そうッス。敵陣を前にバディの暗殺を頼むなんて、緊張感ないッスよ」

「反論できないけど、深編笠とTシャツで敵陣に潜入する人たちに言われても……」

「いやいや、これが仕事着ッスから!」

「よくそれで敵に見つからないよね」

「ふへへ。自分たちは優秀ッスもん。しょうがないッス」

「同意」

「うわあ殴り飛ばしたい」

「殴り飛ばされる前に逃げるッス」

「頑張ってねー……って、聞こえてるのかな」

ステルス能力によって美作と矢鳥の姿が消えた一秒後くらいに、ガーネットの頭が軽く叩かれた。ガーネットはその部分を向くが誰の姿もなかった。ガーネットに痛みは無かったが挑発的な何かを感じた。

「矢鳥、今殴ったでしょ!」

「おい……街中で一人芝居して騒ぐような娘に育てた覚えはねえぞ……」

「私は仕事をサボるような親に育てた覚えはねえぞ」

「まあ……それはいいだろ」

「いいわけないじゃん」

ガーネットは白桃を攻撃して八つ当たりしようとしたが、あっさりと避けられた。

「それで、何か情報はあったのか?」

「ううん……誰も協力してくれなかった」

「そうか。ほらよ」

「これは?」

「こっちで探りを入れてみたんだが、どうやら最近このビル付近をうろつくカップルがいたんだとよ」

「支部長たちなの?」

「いや、監視カメラを見た感じだと子供みたいだ」

「うーん。よく見えないね。この子たちとも戦わないといけないのかな?」

「いや、こいつらは今日までビルに入ってはないし、ビルの中で戦うことにはならないだろ」

「外で遭遇したら逃げればいいしね」

「そうだ。ただ……」

「ただ?」

「……いや、気のせいか」

「とうとうボケてきた?」

「んなわけねえだろ。アイツと会うまでボケてたまるか」

「せいぜい頑張ってね」

(アイツ、か……)

「ガーネット、ビルから何かが出てくるぞ」

「美作たちじゃないの?」

ビルの入り口からは30体ほどのネフィリムが出てきた。芋虫のような姿をした、ランク2クロウラーと呼ばれる種族だ。

「とうとう影分身と変化の術を習得したのか。もう俺の力は必要ねえだろうし帰」

「悪しゅうございました!」

「矢鳥の野郎も現れないし、不本意だが俺らでなんとかするしかねえか」

「もしかして、戦闘まで美作たちに任せる気だったの……?」

「当たり前だろガーネット」

「もうこの人とバディ組みたくない……」

「泣き言ほざいてる暇があったら敵の一匹でも倒しやがれ」

「もう一回言うね。もうこの人とバディ組みたくない……」

「頑張れ。以上」

「応援する暇があったら敵の一匹でも倒しやが……」

そう言うガーネットのすぐ横を、白桃は高速で通りすぎて、刀でクロウラーたちを次々に切りつけていく。斬撃を受けた10体のネフィリムが一斉に消えていく。

「倒したぞ。10匹」

「この人とバディ組んで良かったなー」

「当然だ。俺が誰だかわかってるのか」

「鬼でしょ?」

「桃太郎だ! そこを間違えるな」

「はいはいっ!」

ガーネットはマフラーの一端を近くにあった看板にくくりつける。もう一端を手で持ってクロウラーの周囲を円を描くように一周して、それを引っ張るとクロウラーたちの体はマフラーに絞められていき、鳴き声を上げながら消えていった。

「私が誰だかわかってるの?」

「俺の娘だ」

「不正解ではない……って、うわ!」

よそ見をしていたガーネットの脇腹がクロウラーに突進を決められてしまう。ガーネットは横に飛んで脇腹を押さえる。

「攻撃避けらんねえなら無駄話するなよ」

「ぐう……! 反論できない……!」

クロウラーがもう一度、ガーネットに向かって突進してきたところを、マフラーを使って闘牛士のようにかわし、マフラーに引っ掛かったところを一気に締め上げる。

「モブ級のくせに痛かったじゃないの……!」

「ったく。モブだろうがボス相手はお前を殺す気なんだから、弱くても油断するんじゃねえよ」

「はーい……」

「猫に噛まれるぞ」

「猫に? 『窮鼠猫を噛む』なら、ネズミにじゃないの?」

「……悪かったな。油断したんだよ」


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