第527話 殲滅計画
順調にダガードの王宮に到着し、箱を先に落とす。うん、下ろしたんじゃなくて、落とした。でもちゃんと、中身に支障のない高さからにしたよ。
先にスーラさんで領主様に事情を説明してあるので、ちゃんと引き取り役が来てた。箱から出された残党達は、網でぐるぐる巻きのまま。
あれから結構な時間が経ってるからか、臭う。垂れ流しだもんね……引き取りの人達も、嫌そうな顔をしてるよ。
「カイド様! サーリ! フェリファーも」
この声は、領主様? 声のした方を見たら、やっぱり領主様。こちらに向かって走ってくる。領主様も、走るんだ。
「三人とも、無事で良かった」
いや、二人程本当は無事じゃなかったんですが。時間の巻き戻しを知ってるのは、私と検索先生だけなので言えない。
「俺達は出る幕なかったけどな」
「そうですね……」
何故そこで、残念そうに言うのかな? 剣持ちさんは。余計な手間を省いたんだから、よしとしておこうよ。
「ところで……」
領主様の目が、下の方に向かう。ああ、手、繋いだままだからかー。ボートから下りる時、繋いでそのまま。まーいっかー。
何か文句言われるかなー? とも思ったけど、そのまま領主様はいい笑顔で何も言わず、手で付いてくるよう示すだけ。
そうして連れてこられたのは、叔父さん陛下の執務室。前は今となりにいる人の執務室でしたねー。
「ああ、無事戻ったね。良かったよ。まさか、反国王派の残党が襲撃してくるとは思わなかった。こちらの調査不足だ。カイド、許してくれるかい?」
「許すも何も、あそこでやられるようなら、それが俺達の命運でしょう」
「そういう事言わないの!!」
冗談でもやめて。思いっきり睨んで大声出したからか、室内の誰もが驚いている。でも、止めないからね!
「襲撃なんて、ない方がいいに決まってるでしょ! 何格好つけてんの! 死んじゃったら全部終わりなんだから!!」
「わ、わかった……」
本当にわかってんのかな、もう! 鼻息荒くしてたら、叔父さん陛下に笑われた。
「ぷっ。くっくっく、カイド、先々尻に敷かれそうだね」
「もう敷かれてます」
「そうかい」
悪かったな。
「サーリ、そんなにふくれないでおくれ。君をあまり怒らせると、後でカイドに叱られそうだ」
どーせふくれてますよーだ。ふん。
「まあそれはさておき。カイド、どうしてもヴィンチザードを治めるのは嫌かい?」
「興味がないと言ったはずですが?」
「君の立場では、言ってはいけない事だと、私も言ったよね?」
おお、両者にらみ合っております!
「何の為に王位を渡したと思ってるんだ」
あ、言葉が荒くなってる。でも、相手はスルー。
「では、何故私がおとなしく譲られたと思ったんだい? いつか借りを返してもらう為だよ。決まってるじゃないか」
腹黒度では、叔父さん陛下の方が上だよねー。
「それに、彼女を妻に迎えるのなら、それなりの地位にあった方がいいんじゃないのかね?」
「逆だ。地位なぞ邪魔でしかない」
「そうも、言ってられないんじゃないかな?」
ん? どういう意味?
「実は、書状だけだがローデンから抗議が入ってね」
ローデン? あの国が、また何か? 思わず顔が渋くなったら、繋いだ手がぎゅっと強くなった。
そうだ、今は一人じゃない。あの時みたいに、姿を偽らなくていい。
叔父さん陛下が、執務用の机の上に、一通の書状を置いた。
「まあ、想像はつくと思うが、神子を返せと言ってきたよ」
「またか」
「まただよ。あの国は、諦めていないんだね。一応確認だけど、サーリ、あの国に帰る気はあるかい?」
「まったくないです!」
帰るどころか、二度と行きたくないわ!
「ふむ。今回はヴィンチザードの件で、神子としての姿を表沙汰にしただろう? それが、これの原因なんだ」
う……ヴィンチザードに関しては、自分から神子として動くって決めたしなあ。
それにしてもローデン、異常気象で国力落としてるんじゃないの?
『逆に、それでまた神子の力を使おうとあがいているようです。読みが甘かった事を謝罪します』
いや、検索先生のせいじゃないから。懲りないあの国が悪いんだよ。
でも、そうか。懲りないから何度でも言ってくるのか。
いっそ、公衆の面前でメンツ潰してやろうかな。
『叩き潰しておきますか?』
うん、今なら出来そう。
「はい! 提案があります!」
「何だい? 急に」
「ローデンから文句言ってくるのなら、いっそ文句言いたい人達を呼び出しちゃいましょう。で、周囲の国の人とかも招いて、公開で叩き潰します!」
何でそんな残念そうな顔を皆するのよ……
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