第519話 夢の……
しばらくはウィカラビアに戻りたくないなーと思って、秘湯の村を拠点にし、行ける範囲の温泉を探しまくって開発しまくった。
おかげで検索先生の機嫌がいい事。
『夢のようです!』
そーですね。旧ジテガン領でも大分増えたけど、今はさらに増えて三桁に届こうかという勢いですよ……
山に湧く事が多いので、温泉が出そうな山を見つけては、人がいないか確認して堀で周囲から切り離し、魔獣を掃討。それから温泉を掘ったり建物建てたり。
掃討には、三匹も付き合ってくれた。やー、楽しそうだね。今のところ、一番魔獣を狩った数が多いのはブランシュ、次いでノワール。
マクリアは二匹より若いから、これからかなー。ともかく、思っていた以上のスピードで、開発が進んだのは、三匹のおかげだと思う。
そして、ここにきて検索先生待望の温泉管理用のボディが完成。時間、かかりましたね?
『私の分身を入れるのですから、念入りに調整して仕上げました!』
怖い機能とか、入ってないですよね?
ボディの外観は、二十代中頃くらいの年齢で、中性的な顔立ち。全ての温泉別荘や施設に置くつもりらしく、目の前にずらっと並べられた。
まだ分身は入れていないようで、全て目を閉じている状態。着ているのは、白の半袖短パン。体操着みたい。
これ、圧巻というよりは……
「怖い」
『酷くないですか?』
「いや、だって……同じ顔、同じ髪型の人間が目の前にずらっと並ばれたら、普通怖いですよ」
SF映画のクローンみたい。
『そうですか……では、各所で変化をつけてみましょう』
途端に、端から髪が伸びたり縮んだり巻いたりする。普通にホラーな絵面ですよ!
『後は、各施設ごとに制服を変えれば問題ないかと』
「温泉施設の制服って、何を着せるの?」
『ここはやはり、メイド服でしょうか?』
温泉でメイド? ってか、このボディ、性別ないんですよね? 無性ですよね? なのにメイド服?
たまに、検索先生の感覚ってわかんない。
あれこれ検討した結果、作務衣に落ち着きました。結構あるよね、従業員が作務衣着てる施設。これなら性別関係ないし、動きやすいと思う。
『その分、可愛さが消えました……』
この際、可愛いからは離れましょう。だって、検索先生が出してきたメイド服のデザイン、見事にミニスカばっかだったんだもん……
本当、どこでこんなの見つけきたんですか。って、日本以外にないかー……
今までもあれこれ地球の情報を引っ張ってきてもらったけど、こんなものまでとは。
ともかく、各施設におけるボディ……これから検索先生の分身を入れて管理者になるから、これからは管理責任者とでも呼びますか。
ともかく、各管理責任者の個性も出来た事だし、早速分身を入れて、各施設に送りましょう。
あ、ウィカラビアはまだ送らないよ。あそこはジジ様達が暮らしているので、そちらに話を通さないといけないから。
ウィカラビアを留守にして、もう半月くらい。じいちゃんとは定期的に連絡を取っているけど、他の人からの連絡は一切出ない。
ミシアや領主様、叔父さん陛下からも連絡が入ってる。ヴィンチザードの件かなあとも思うけど、検索先生によればまだ落ち着いてはいないんだって。
なので、祝福が出来る頃になるまで、こうして一人でいようと思う。いい予行演習だね。
一人といったって、三匹も一緒だし、平気平気。
新たに手に入れた山に、どんな建物を建てるかを考えていたら、じいちゃんから連絡が入った。
「はいはーい」
『サーリか? ちょいと聞きたい事があるんじゃが』
「聞きたい事? 何?」
『あの空飛ぶ船は、わしでも動かせるかのう?』
「え? ボート?」
じいちゃんなら動かせるかなああれ、問題なのは動かす為の魔力供給だから。
あ、ボート専用の管理責任者も置こうか。そうすれば、ジジ様達も気晴らしに外に出られるし。
『では、管理責任者専用のボートを用意しましょう』
わざわざ作るの?
『既にノウハウはありますから、素材さえあれば即完成です!』
……検索先生がノリノリの時は、気を付けた方がいいって、さすがの私も学んだ。
『酷くないですか?』
酷くありません。当然の結果です。
『神子が厳しい……』
んで、今ウィカラビアに置いてるボートの管理者、すぐ送れますか?
『ウィカラビアにはいくつかポイントが打ってあるので、そこに送ってからボートに乗せれば、問題ありません。乗せるところまでは、こちらでやります』
んじゃ、お願いします。
『サーリよ、無理かのう?』
いけね、じいちゃんと通信中だった。
「ごめんごめん、えーっとね、動かせる人……じゃなくて、存在を送るから、そうすれば問題ないと思うよ。行き先を告げれば、動かしてくれるから」
『人なのか? ものなのか?』
「……見た目は、人。でも、人じゃない」
『人形のようなもんかのう?』
「えーと……実は中身は検索先生の分身」
『なんと! ……いいのかのう? それは』
「とりあえず、本人がやる気満々だからさ……」
『そうか……ならば、いいのかもしれんのう』
じいちゃんも、どこか諦めた感があるなー。私を通じてだけど、検索先生との付き合い、長いもんね。
そういえば。
「じいちゃん、どうしていきなりボートを動かしたいってなったの?」
『おお、言うのを忘れておったの。実はカイド殿達に帰国するようにという、領主殿からの要請があっての』
「え?」
銀髪さんが、帰国? どうして?
「それ、ニル……ううん、ミシアも一緒?」
『いんや、カイド殿とフェリファー殿の二人じゃ。ミシアは何やら怒っておるがのう。ダガードの国王陛下からも要請があったようじゃから、さすがにあまり文句も言えんようじゃ』
叔父さん陛下はミシアのパパだもんね。でもそうか……あの二人は残るんだ……
って事は、ヴィンチザードに関する事じゃない?
「じいちゃん、領主様からヴィンチザードに関する話、何か聞いていない?」
『はて? あの国に関する事なら、お主に直接連絡が行くんじゃないのかのう?』
う……確かに領主様からも叔父さん陛下からも連絡が来てるけどさ。でも、じいちゃんの方に何も連絡が行っていないって事は、やっぱりヴィンチザード関連はまだ動けないんだ。
一応話は誤魔化して、通話は終了。このタイミングで銀髪さんを戻すって事は、本気でヴィンチザードの王位を継がせるつもり?
それ、銀髪さんは受けるんだろうか?
翌日の朝には、ボート用の管理責任者が出来上がったので、早速ウィカラビアに送ったそう。
ちなみに、着せたのは作務衣ではなく、パイロット風の制服。パンツスーツっぽくて格好いいけど、これ、いいのかね?
ミニスカスッチーじゃないから、いいのか。誰かに見せびらかす訳でもないしね。
「じいちゃん、もうボート、使えるはずだよ」
『おお、そうか。助かるわい』
「見た目は人だから、行き先を伝えるだけで運んでくれるよ」
『そりゃ楽じゃの』
他にも少し近況報告をして、通話を切った。これで私がいなくても、ボートの運用が出来るね。
それがどういう結果をもたらすか、よく考えていなかった私が悪いのかもしれない。
管理者を送った日の昼過ぎ、じいちゃんから連絡がきた。
『サーリ、すまんのう』
「あれ? じいちゃん? どうしたの?」
『神子様!? 今どちらにいらっしゃるんです!?』
ジデジルー!?
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