第460話 海といえばバーベキュー
既に出国の手続きは終わってるそうだから、いつでもキルテモイアを出国出来る。
で、その前に新しく手に入れた温泉に行きません? って誘ったら、領主様が二つ返事で乗って来た。
「いいねえ、この国では何かと疲れる事が多かったから、ぜひ」
そうでしょうとも。ジジ様達も行くって。というか、凄く楽しみにしてるんですが。
「熱い国で入る温泉は、どんな感じなのかしらね?」
「お風呂から、海が眺められますよ」
「まあ、そうなの? そういえば、ダガードの温泉は山の中が殆どで、海は見えないわね。でも、見てもどうという事はないのではないかしら」
ふっふっふー。ダガードの海とキルテモイアの海を一緒にしてはいけませんよ、ジジ様。いや、繋がってる海ではあるんだけどさ。
キルテモイアの海って、青く澄んでて凄く綺麗なんだよね。南国の海ーって感じ。
ダガードの海は、色が濃いめで北の海そのもの。しかも泳げないし。波が荒くて、海水浴に向かないみたい。
というか、ダガードの人って、海水浴とかするのかね? 泳ぐのに向いてる海も、国内で探せばどっかあるかもしれないし。
今回行くのは例の崖の上の温泉。ここは一カ所だけの温泉で二十二番湯。ここは塩化物泉で切り傷や冷え性、皮膚の乾燥なんかにも効くらしいよ。
飲んでも平気だそうで、便秘や胃炎に効果あり、だって。検索先生、最近は泉質も調べるようになったんですか?
『折角なので、用途に合わせて入れるようにまとめてみました』
おおー。まあ、今回は眺め重視って事で。海を眺めながら入る温泉、楽しみにしてたんだー。
別荘までは、空飛ぶ船で向かった。いや、人数多いし、絨毯だと端から誰かが転げ落ちそうな気がしたから……
「これは快適」
領主様も気に入ったみたい。これも売ってくれってきたら、どうしよう?
『材料費が高いので、国家予算程度はすると言えば、諦めるのでは?』
値段で諦めてくれるかなあ……まあ、その時になったら、考えよう。
崖の上は、ケーブルカーを作った時に比べて大分変わっている。別荘を建てるだけじゃなく、色々と手を入れたみたい。
魔法ロボット、あれこれ作っておいて良かった。
「サーリ、あれは何かしら?」
「ああ、あれは下の浜辺まで下りられるケーブルカーです」
ジジ様が、ケーブルカーに興味津々だ。浜辺に下りたいんじゃなく、単純にケーブルカーに乗りたいだけみたい。
とりあえず、ジジ様と侍女様方、領主様ご夫妻を乗せて、下の浜辺までケーブルカーを運転する。
「ほう、これは便利だな」
「楽に上と下を行き来出来るのね。屋敷の中にも欲しいわ」
リーユ夫人、それはケーブルカーでなくエレベーターですがな。言わないけどね。
あれを後付で作るって、大変そうだもん。エレベーターシャフトを外付けにすればいけるのかな?
『動力が問題ですね。もう少し魔法士の数が増えてきたら、提案してみてはどうでしょう?』
そうだね。何でもかんでも私頼りは良くない。他の魔法士達が仕事として請け負える形になれば、じいちゃんを巻き込んでエレベーターを作るのもいいかも。
浜辺を見た皆様、言葉をなくしています。そっか、ある意味これ、絶景じゃない? しかも、ダガードの人は見た事がない類いの。
「これは……」
「何て美しい……」
「海が、こんな色だったなんて」
「生きているうちに、このような景色を見られるなんて」
「ありがたい事よね」
「本当に」
領主様もリーユ夫人も、ジジ様、侍女様方も、その場に立ち尽くして浜辺から見る海の美しさに見とれておりました。
ふっふっふー、ここは日の入りという大スペクタクルも見られるのですぞー。夕方をお待ちあれ。
しかも、その日の入りをお風呂から見られるという贅沢さ! バッチリ時間も合わせて入浴時間を決めないとね!
リーユ夫人がすっかりケーブルカーに魅了されてしまい、あの後何度も往復させられたのにはびっくりした。楽しんでもらえて何よりですよ……
砂浜を堪能したり、崖上を散歩したり、昼にはまたウナギを出してみたり。今回は全員に出したのに、銀髪さんと剣持ちさんがなかなか手を出さなかったのは、何でだろ? 別に毒は入ってないですよー。
午後からは、室内でひたすらまったり。こういう時、読んでない本を読むといいんだろうなー。日本に置いてきちゃった本、今頃どうなってるんだろう?
たまに、前に読んだ本をもう一度読みたくなるんだけど、手に入らないからなー。向こうの本を、取り寄せ出来ればいいのに。
あれか? 本も創造出来たりする?
『一字一句間違えずに記憶しているのであれば、形を作る事は出来ますよ』
じゃあ無理だー。さすがに一部は憶えていても、全文憶えてはいないよ。まーいっかー。そのうち、こっちでも面白そうな本を探そう。
という訳で、本日は疲れも溜まっている事からお昼寝。暑い日の午後は、涼しい場所でのお昼寝が一番だよね。
ジジ様達は、昼食後に一風呂浴びてきたらしい。海が見えるお風呂は、絶賛されました。
「ダガードにも欲しいわ!」
うーん、無理かもしれませんよ、ジジ様。
『残念ながら、ダガード国内には海が見える場所に湧く温泉はないようです……』
あ、検索先生が本当に残念そうに告げてきた。それを伝えたジジ様も、とても残念そう。
そうだよね、海を眺めながら入るお風呂、最高だよね。温泉でないなら、ダガードでも出来そうなんだけど。
多分、それだと意味がないって言われそう。よし、ここは黙っておこうっと。
お風呂上がりには、イチゴミルク。そしてお昼寝。寝てばかりだけど、それだけ疲れてるんだよ。キルテモイアの辺りって、暑いから。暑いと、それだけで疲れるんだよねー。
別荘には護くんが結界を張って、気温と湿度を快適に保つようにしてある。気温に関しては、別荘がある場所を考慮しているので、ここではちょっと高めの二十七度。湿度はどこでも55パーセントを維持してる。
風は入るようになってる結界だから、海風が心地良い。もちろん、湿気は取り除かれてます。潮の匂いはするけどね。
そして夕方近く。これから温泉に入れば、日の入りを見られるかなー。
『いい頃合いだと思います』
検索先生のお墨付きがもらえたので、皆に温泉をどうぞと勧めてみた。温泉は、日に三度入るといいっていうしねー。
で、お風呂に入って海を見ると、太陽が大分低い位置にいる。よしよし、これなら日の入りを見られるー。
そして、目の前で海に沈む夕日をお風呂から眺め、その美しさにまたしても皆さん、声がなかったよ。
夕飯は、海鮮バーベキューにしてみた。広く作った庭に、常設のバーベキューグリルを置いてあるんだ。やっぱり海と言えば、バーベキューでしょ!
いや、日本にいた時はやった事ないけど。テレビで見て、憧れがあったんだい!
いやあ、魚もいいけど、ちょっと形の変わったエビやら色の違う蟹やらがいたからさあ。
しかもデカい。エビなんて、伊勢エビも真っ青ってくらいの大きさ。蟹に至っては、足一本の太さが私の腕より少し細い程度。
「サーリ……これは?」
「これは岩蟹って種類だそうです。こっちはツボエビ。何でツボなのかは、私も知りません」
「……食材、なのかな?」
「おいしいそうですよ!」
普通に食べられるエビ蟹だもんね。しかも新鮮。楽しみー。
殻を割ってから、用意したバーベキューグリルの上で焼く。野菜も焼く。魚も焼いて、こっそり醤油で味付けしたものも用意。
みんな、魚にしか手を付けないね。おいしいのに。これでタコやイカもあったら、もっと驚くのかな。
あっちはこの人数で食べられそうな大きさのが見つからなかったから、今回は諦めた。
だって、頭の部分が私と同じくらいの大きさのタコやイカなんだもん。食べきれないでしょ。
エビ蟹は私が独り占めになるかなーと思ったら、私に釣られてじいちゃんが食べ始め、その反応を見て皆恐る恐る口にし、その美味しさを知ると、我先にと網の上のエビ蟹を食べていく。
だから言ったじゃん、おいしいですよって。
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