第455話 貸すだけー

 ウナギ効果か、翌日には女性陣の体調も回復したっぽい。


「体が楽になったわ」

「本当に。あのだるさがなくなるだけでも、こんなに違うなんて」

「こんなにすっきり目覚めるなんて、何年ぶりでしょう」

「本当に」


 好評の様子。提供した私としても、大変嬉しいですよ。それに、こっそりうな丼にして食べたあのウナギ、美味しかったし。


 復調した途端、またしても買い物に出かける女性陣。精神がタフなのか、何なのか。まあ、またバテたらあのウナギを出せばいっか。


 私の方は、試作品のテストを行っていた検索先生からの報告が。


『搭載した魔法AIの調整が完了しました。量産体制に入れます。量産しますか?』


 もちろんイエース。これで放置中の山にも温泉別荘が建てられるー。ウィカラビアとキルテモイアと旧ジテガンは全部ちょっとずつ違うアジアンリゾート風にする。


 お風呂も解放的にして、壁を少なく。柱多め。板張りで、でも下足厳禁。素足でペタペタ歩くのだ。


 あ、お掃除ロボットも作っておいた方がいいか。掃き掃除と拭き掃除で、はきこさんとふきこさん。


 はきこさんには高いところのすす払いも出来るよう、小さめで軽く、浮力大きめで。


 ふきこさんは床ふきが主な場所だから、大きくパワー重視で。高い場所の拭き掃除は、アームを使用するようにした。


 床に転がっているものがあったら、はきこさんが亜空間収納内へ放り込む仕様。ゴミはその中から選別して捨てるし、何なら収納の肥やしにしていてもいい。


 建物維持管理はこんなもので。結界や侵入者対策は護くんととーるくんがいるしね。


 よし、これで……えーと、いっぺんにいくつの別荘の建築に着手出来るんだ?


『ウィカラビアの山脈に四カ所、キルテモイアの山に二カ所、旧ジテガンの山にそれぞれ二箇所、三箇所、二箇所、一箇所、五箇所、四箇所、二箇所、二箇所、七箇所、二箇所、六箇所、三箇所、二箇所の計四十七箇所です』


 そんなにあるの!? い、今更だけど、たてるくん達を作っておいて良かった……


『たてるくん達の量産体制も整いました。量産完了次第、別荘建築に取りかかる予定ですが、よろしいですか?』


 もちろんです。私も、早く試したいし。


『ですよね! では、張り切って参ります』


 が、頑張ってくださいねー。私は魔力の提供と応援くらいしか出来ないからね。


 それにしても、四十七もの別荘が、一挙に増えるのかー……はきこさんとふきこさんも、量産しておこうっと。


 あ、庭を造った場合、手入れするロボットも欲しいね。一番湯には和風庭園を造ったし、他にも緑を使った庭を整えたところもある。


 という訳で、庭師ロボットのうえきさんを開発! 庭に緑がないところは、花壇を作って管理してもらおう。


 庭師なので、アームを多めに入れようか。はさみを持つアームと、花がらを詰んだり雑草を抜いたりするアームも多めに。


 大きさは……小柄にしておこうかな。それで数を多めに。暑い場所は、雑草もすぐに生えてきそうだし。あ、鎌も必要か。


 のこぎりは専用アームとして内蔵させておくね。アームはメンテナンスフリー素材のドラゴンセラミックで。


 気づいたんだけど、このセラミックで刃物作ったら、もの凄く切れ味がいい。包丁も、これで作っておこうかな。


 たてるくん達をあれこれ作ったからか、似たようなボディで作る場合は自分だけで何とかなった。


 てか、うえきさんに関してはじいちゃんからダメだしが出そうで……刃物多いからね。


 なので、こっそり作っておく。はきこさんとかふきこさん、うえきさんに関してはそこまでの性能を求めないってのもあるし。


 後は検索先生に専門的な知識を搭載してもらって、出来上がり。先生、後はよろしくです。


『承りました。温泉を綺麗に保つのは、大事な事です』


 今までは魔法で掃除とかしてたけど、さすがに数が多くなってくると大変だからね。一番湯から八番湯にも、はきこさんやふきこさん、うえきさんを配備しよう。




 検索先生からの助言通り、ほっとくんにちょっと手を加えて、女王様に贈ってみた。ちなみに、領主様に同行してもらって、今王宮。


 料理全般ではなく、主にスイーツに特化したほっとくんなのだ。


「ほう? これはまた珍しい……」

「これは、どういったものなのかな?」

「えーとですね。魔法で自動的にお菓子を作ってくれる機械です」

「おかし?」


 女王様と王配殿下が声を揃えて聞いてくるよ。仲がいいねえ。


「背中部分から材料を入れて、前面のパネルで食べたいお菓子を選ぶと、自動で作ってくれるんです。試してみましょうか」


 そう言って、まずパネルでメニューを選ぶ。ちゃんとメニューの文字はキルテモイアで使われているもの。


 で、必要素材が出てくるので、それを背後の投入口から入れる。後はもう一度前面のパネルで作成ボタンをぽちっとな。


 いや、実際はパネルなので触れるだけなんだけど。


 そうすると、前面が開いて出来上がったお菓子が出てくるのだ。


「今回はキルテモイア特産のラジアーロを使ったシャーベットです」


 ラジアーロって、キルテモイアで多く作られているオレンジに似たフルーツ。甘くておいしいんだ。


 本当はアイスクリームを選びたかったけど、ミルクや生クリームがこっちで手に入るかどうか謎だったので。


 で、ここからが領主様の交渉。


「実は、この近隣で手に入らない材料を使ったお菓子も、このほっとくんで作れるのですよ」

「なるほど、それを貴国から買え、というのだな?」

「キルテモイアでも、富裕層には受け入れてもらえるかと」

「その為には、このほっとくん、とやらが受け入れた富裕層の家の数だけ必要なのではないかな? これも売り物か?」


 アイスクリームとかは、簡単なレシピだから、提供してもいいんだけど。


 交渉は領主様のお仕事なので、黙っておく。


「お買い上げいただければいいのですが、あいにくこれは高額な品でして」

「では、どうすると?」

「一定期間の貸し出し品とするのは、いかがでしょう?」


 もちろん、この辺りは既に打ち合わせ済み。じいちゃんのお墨付きも出ているので、問題なし。


 女王様達に詳しい話はしないけど、もし壊れた場合はこっそり回収して、新しいほっとくんとすり替える予定。


 で、修理し終わったらまた控えとして私が管理しておく、という訳。


 リース代金は全て私に入ってくる事になっているから、私に損はない。領主様としては、ミルクや生クリームが売れてほしいんだってさ。


 そういえば、コーキアン領の特産品に、チーズやバターがありましたね。それに加えて、他の乳製品も輸出品に育てようって事らしいよ。


 運搬には、じいちゃんが食料棚の技術で助けるんだって。確かに、ダガードからここまで船便で送ったら、途中でミルクや生クリームは腐るわな。


 港から王都まで運ぶ間だって、危ないんだから。それも含めて、運搬用の特別な入れ物を用意するんだってさ。


 そういえば、私のフルーツを送ってもらう時も、運搬方法を考えないとね。こっちは私個人のものだから、私がやるべきでしょう。


『では、果樹園のものしか開閉出来ないようにした、亜空間収納直結の箱を用意しましょう』


 あー、なるほどー。箱に入れてもらえば、そのまま収納に入る訳だから、運搬の必要、ないや。


『フルーツ以外は入れられないように設定しますから、悪用される事もないでしょう』


 入れたら最後、取り出し不可って事にしておけばいいもんね。よし、それでいきましょう!


 そして、領主様達の交渉もまとまったらしい。なので、シャーベットの他にアイスクリームも出してみた。


 女王様にも王配殿下にも、とても気に入ってもらえたようですよ。良かったですね、領主様。


 あ、マノンダ卿も家にほしい? わかりました。リースに出しましょう。後で領主様と契約してください。


*****


前話で温泉が湧く箇所の数を変更しています。

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