第454話 暑い時はあれでしょ

 搭載する魔法AIは検索先生にお任せして、外側はじいちゃんに手伝ってもらって完成した。


 建築専門のたてるくん、土木専門のどけんさん、それと掘削専門のもぐらくんの三種類。


「また妙な名前をつけるのう」

「私の国の言葉だからね」


 正直、掘削専門のもぐらくんはどうかと思ったけど、他に思いつかなかったんだよなあ。


 試作品が完成したところで、検索先生からのお報せが。


『魔法AIの基礎部分が完成しました。これより先は、それぞれに搭載してから、調整したいと思います』


 了解です。まずは試作品で色々試して、大丈夫そうだったら大量生産に移りましょう。


 何せ今回、山だけで十三……十四だからね。一つの山に、一カ所の温泉って訳じゃないし。


 あ、ウィカラビアの山も、お風呂は作ったけど他がまだ手つかずだよ。あっちにも色々作らなきゃ。




 試作品を検索先生に預け、ただいま魔法AIのダウンロード中。亜空間収納内でやっているので、終わるまでは手持ち無沙汰。


 昨日の今日なので、夏バテを起こしている女性陣は、相変わらずぐったりとしている様子。


 夏バテに効く食材って、あったっけ?


『ウナギがお薦めです』


 ウナギかあ。日本じゃ食べ過ぎて絶滅寸前って言われてなかったっけ。


『こちらでは誰も食べようとしないので、いくらでも採れます』


 マジで!? うな丼食べ放題?


『ただし、大きさが日本のそれとは少し違いますが』


 あ、やな予感。もしかして凄く大きくて、しかも魔獣ってオチですか?


『そうです。ですが、滋養強壮によく、夏バテもすぐに解消出来るでしょう』


 うーむ、ユゼおばあちゃんなら、魔獣だろうと食べられれば文句は言わないだろうけど、ジジ様達貴婦人はどうかね?


 薬だって言って食べさせようか。よし、まずは捕ってこないとね。検索先生! そのウナギ、どの辺りに棲息してますか?


『もらった山に流れる川に棲息しています。どの山にもいるようです』


 なんと! あんなおいしいものがいる山をもらっていたとは。日本に輸入出来たら、一財産築けたかもね。ああいったのは管理が厳しいから、無理か。


 それはともかく、早速狩りに出かけましょう!


「じいちゃん、ちょっと山まで行ってくる!」

「今度は何をするんじゃ?」

「ちょっとウナギを捕りに」

「うなぎ……とは、何じゃ? 魚の一種? ふうむ。よし、暇じゃし、わしも行こう」


 って訳で、今日はじいちゃんとウナギ捕り。たくさん捕れるといいなあ。




 各山には既にポイントを打ってあるので、簡単に行き来が出来るのだ。とはいえ、人に見られていると困るから、こそっと隠れて行くけどね。


 マノンダ卿のお屋敷は広いし、庭も人目から隠れられそうなところがたくさんあるから助かるわー。


 で、やってきました山。えーと、便宜上名前をつけた方がいいよね。確か、ウィカラビアが九番、十番、十一番、十二番湯になる予定で、キルテモイアの山が十三番、十四番湯になる予定だから、旧ジテガンのここは十五番以降か。


 ここって、温泉が湧く場所はいくつだっけ?


『山の中に二カ所、確認しています』


 ほほう。大本は一緒かもしれないけど、二カ所に湧いてるのならここは十五番十六番だな。


 んじゃ、いちごいちろく山で。


『……それなら、頭の十五番だけでいいのでは?』


 えー、じゃあいちご山? 何か別のものみたいんだけど。


『十五番山でいいと思います』


 仕方ない。ではここは今日から十五番山で。ウィカラビアのが九番山、キルテモイアのが十三番山ね。


『登録しました』


 するんだ、登録……まーいっかー。


 さて、山の中程に、確かに川がある。小川なんて可愛いもんじゃなく、結構激しい流れで、大きな岩なんかもごろごろある川。


「イワナとかいそうなイメージ」

「それも、お主の国の魚かの?」

「うん、川にいる魚なんだ」


 たしか、うなぎって編んだツボみたいなので捕るんじゃなかったっけ?


『筌ですね。ウケともウエとも読むようです』


 そーなんだー。あ、で、どうやって捕るんですか?


『こちらのウナギも夜行性です。今は巣穴で寝ているので、そこを一網打尽にします』


 割とエグい捕り方らしい。いや、おいしいウナギが食べられるのなら、文句はいいません!


 もちろん、漁は魔法でだ。じいちゃんにも巣穴の場所とやり方を教えたところ、あっという間に大量のウナギを捕っている。


「こりゃ、蛇とは違うのかの?」

「うん、にしても、本当にデカいわ……」


 一匹で三匹か四匹くらいの太さがあるよ、このウナギ。でも良かった、大蛇クラスの大きさじゃなくて。


 早速亜空間収納内に入れて捌く。魔法って、本当便利。これ、手でやれって言われたら、すぐにギブアップするよ。


 その間に、検索先生が調べてくれたウナギの調理方法を見る。ほうほう、捌いた後に串を打って、軽く焼いて蒸した後に、タレを付けて焼くんだね。


 ちなみに、これは予備の護くんを使って映像として出力しているので、じいちゃんも一緒に見られるのだ。


「なかなか手が込んでおるのう」

「うん、すっごく美味しいんだよ。しかも、滋養強壮にいいんだって」

「ほう。なら、元陛下や護衛の剣士には食わせん方がいいかもな」

「そうなの?」

「領主殿ならまあ、いいじゃろ」

「よくわかんない」

「わからんでええ。で、それは今夜の食卓に上るのかの?」

「検索先生がタレを作っておいてくれたから、多分間に合うと思う」


 私達がウナギを捕っている間、検索先生が色々と合成してタレを作ってくれていたんだ。


 醤油は大豆を作ったから作れるけど、日本酒は挑戦していないので手元にないし、もちろんみりんもない。


 なので、その辺りは近いものから「合成」して作ってる。今度はその辺りも頑張ってみよっか。




 マノンダ卿のお屋敷に戻ったら、時間は午後三時をちょっと回った辺り。アイスクリームよりは軽いかと思って、フルーツだけで作ったシャーベットを女性陣に出してみた。


「おいしいわあ」


 気温や湿度は整えたけど、暑さで疲れた体はまだ戻らないからね。そういえば、朝食の時もあんまり食べていなかったような。


 お替わりを求められたけど、冷たいものばかり食べるのは夏バテによくないらしいから、と言って断った。


 そんな、この世の終わりのような顔をしなくても……


 その日の夜は、女性陣にのみ夏バテの薬として、ウナギの蒲焼き検索先生風を出してみた。


「まあ、これは一体何?」

「えーと、ウナギといいまして。私の国では滋養強壮にいいって言われている食べ物なんです」

「そうなのね。……まあ、何て柔らかいの?」

「本当に。それにこの、甘辛い味付けがなんとも」

「ええ、食欲をそそりますね」


 本当はうな丼かうな重にしたいところだけど、米はそこまで量がないからね……そのうち、大量生産しないと。


『近場で、米を作っている場所があります』


 うーん、多分、私にとっては自分で「作り出した」お米でないと、ダメだと思う。日本のお米って、品種改良を繰り返していて、凄くおいしいものになってるからね。


 日本のお米は世界一なのだ!


 翌日、女性陣にだけウナギを食べさせたのを男性陣に咎められたけど、じいちゃんが何か言ったら収まった。


 じいちゃん、何言ったのさ?

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