第453話 魔法ロボット

 大量の木材ゲット出来たー。これで主な建材は確保した。屋根はどうしようね? 瓦? 茅葺き?


『下位ドラゴンの素材を使って、瓦を作りましょう。色味が明るい黄色になりますが』


 うーん、アジアンテイストって黄色のイメージないな。でも、日差しの強い国で黒とかにすると、熱を貯め込んで大変だし。


 明るい黄色なら、きっと景色ともマッチするでしょ。じゃあ、それで。


『了解しました。では、生産に入ります』


 むふー。建築資材が集まったら、とっとと建設しちゃいましょ。でも、崖から山へ、そこからまた崖へとゆっくり移動したせいか、そろそろ夕暮れ。


 私だけなら高速移動するのにー。


「……何だ? 睨み付けて」

「睨んでませんー」


 銀髪さん達がいなければ、今日中に建設までいけたかもしれないのに。


『では、明日以降も同行を申し出た場合、意識を刈り取っておきましょう』


 待って待って待って! それヤバいから! もっと穏便に行きましょう!


 それに、明日には崖の別荘を完成させますから!


『……善処します』


 善処なんだ……まあ、別荘が出来上がっても、温泉を引っ張ってこないとだしなあ。


 いっそ別荘を建てるのは専門のロボット作ろっかな。魔力で動くやつ。で、そいつに丸投げすれば、私は他にあれこれ出来るかも。


 ついでに、温泉掘削用に魔法ロボットも作ろう。全部丸投げシステムが完成すれば、寝てても別荘も温泉も出来上がる。


『いいアイデアです! それで行きましょう!!』


 幸い、交換用魔力バッテリーも大量生産出来たし。あのバッテリーの元は、下位ドラゴンの骨なんだよねー。おかげで高性能なバッテリーに仕上がったらしいよ。


「今日はもう遅いので、王都のマノンダ卿のお屋敷に戻りましょう」

「そうだな」


 崖から海を見ると、大きな太陽が海に沈んでいく。ここ、西向きだったんだ。


『完全な西ではありませんが、崖の部分が西側に出ていたようです』


 崖も全部削った訳じゃないからね。でも、日の入りを見ながら温泉に入るのも、いいんじゃない?


『そうですね。今から楽しみです!』


 検索先生の機嫌が治って良かったよ、本当。




 明けて翌日、キルテモイアの王都ムタストは朝から雨。


「この国は通年雨の多い場所でしてなあ」


 マノンダ卿がにこやかにそう語る。まあ、湿気の多さから考えても、雨は多いだろうなと思ってたよ。日本の夏も凄い湿気だし。


 で、その湿気と暑さでジジ様達がバテました。あちゃー。


「今日は雨ですし、外に出るのはやめておきましょう」


 そう言って、屋敷の奥でぐったりしてる。シルリーユ夫人もユゼおばあちゃんも、侍女様方も同様みたい。


 まあ、毎日買い物に出歩いていたからね。疲れが溜まっていたのかも。


「ジジ様も君も、顔色がよくないね。しばらく休んでいた方がいい」

「ええ、あなた」

「ユゼおばあちゃんも、辛そうだから休んでて。部屋の湿度と温度は快適に保つよう設定しておくから」

「ありがとう、ユーリカ」

「お婆さま、大丈夫ですか?」

「大した事はありませんよ。少し、暑さにやられただけです。昔、くびれの国々を回った時にも、同様の事がありました。少し休めばどうって事はありませんよ。あなたはあなたの為すべき事をなさい」


 くびれの国々も、暑いからね。でも、あっちはここのような湿度はないし。


 とりあえず、皆さんがいる一角を結界で覆って、温度二十六度、湿度五十五度に保つよう設定して置いた。


 二十六度だと少し暑いかもしれないけど、半分以上が高齢だからね。少し高めにしておく。今度はこれで風邪ひいた、って事になったら目も当てられないから。


 んで、私も今日はこの屋敷の奥でじいちゃんと工作に勤しむ。銀髪さんと剣持ちさんは、領主様やマノンダ卿と一緒に王宮行きらしい。良かった。


「ほえ!? 今度は土人形に家を造らせるじゃと!?」

「うん、一体じゃなくてたくさんでやれば、何とかなると思って。で、温泉を掘ったり水路を造ったりするのにも、魔法ロボットを使おうと思ったんだ」

「うーむ……いや、しかし作業を細かく分類して単純化し、それらのみを扱うようにすれば出来るかのう」

「でしょでしょ!?」

「……お主の事じゃ。既に素材は用意出来てるんじゃろうな」

「もちろん!」


 ケーブルカーの線路に使用したドラゴンセラミックを本体に使うつもり。下位ドラゴンは、たくさんあるから。


 今のところ、作る種類は三つ。建物を建てて内装まで完璧に仕上げる担当、温泉掘削担当、水路など大がかりな土木工事担当。


 丸投げというからには、全部にある程度の自立機能を持たせないとね。護くんやとーるくんには、既に搭載済みだから、ノウハウはある。


 検索先生から建築に関する知識をもらって、最初からインプットしておこう。うーん、護くん達のより、もうちょっと細かい事まで自分で考えて出来るようにしたいな。


『地球で言うところの、人工知能を搭載してはどうでしょう?』


 AIってやつですか? でもなあ、それで知恵付けて、こっちの命令聞かなくなるのは困るんだけど。


『最初に決して破ってはならない原則をインプットします。魔法人工知能は、その上に構築すれば問題ないかと』


 あー、ロボット三原則だっけ? 昔ちらっと聞いた事があるわー。忘れたけど。


 でも、基本命令には絶対服従、後人間を攻撃しないって辺りは徹底したいな。


『自己防衛も外しますか?』


 そうだね。防衛は護くんととーるくんを置くから。他のロボット達は自衛はしないって方向で。


『了解です』


 検索先生が魔法人工知能の構築に入ったみたい。


 実は、ちらっと怖い事を考えてる。これから作る魔法ロボットが、全部検索先生みたいになったらどうしよう?


『有り得ません。私は私だけの存在です』


 聞かれてるし。

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