第449話 バッテリー素材

 トンネルの出入り口は、山から少し離れたところに作った。山の周辺は、相変わらず堀を作って人が入れないようにしてあるからね。


 トンネルは、幅が広くて天井が少し高めに設定。所々で空気の通り道を上に作る事も忘れてはいけない。


 明かりは、自然発光するキノコを使った。天井にびっしり生やしたら、結構な明るさだよ。


「これ、栄養はいらないのかな?」

『土地の魔力を糧に成長するキノコなので、問題ないです』


 ああ、温泉の湧く土地って、大抵魔力が強いんだっけね。これで明かりも換気も大丈夫、と。


 片側二車線の計四車線、脇には路側帯あり。これだけ広ければ行き来に困る事はないでしょ。道もまっすぐだしね。


 そんなトンネルを、三つ作って完了。後の管理は女王様が引き受けてくれるそうだから、丸投げで。


 ふっふっふ、これでトロピカルなフルーツが食べ放題……


『神子、カロリー』


 いいんです! ちゃんと魔法で消費するから! あと運動もするし!


 まあ、食べ過ぎは良くないのは当然だけど、それよりもフルーツがいつでも好きな時に好きなだけ食べられるっていうのがいい。


 あ、ウィカラビアで見つけたパイナップル、こっちの果樹園でも栽培してた! やったー。


 そして、アップルマンゴー。名前は違うそうだけど、あれはもう完全にアップルマンゴー。味もそうだった。ああ、魅惑のマンゴー……


 他にも見た事のないフルーツがたくさん。どれも甘くてちょっと酸味があって最高。


 ああ、これでフルーツタルト作ったら最高。フルーツパフェもいい。もうフルーツの盛り合わせでいいんじゃないかな。


『フルーツもいいですが、温泉の開発も頑張りましょう!』


 そーですねー。



 キルテモイアの東の山同様、旧ジテガンの山々も魔獣が多い。なので、護くんととーるくんのコンビに頑張ってもらおう。


 あ、ついでに盗賊がいたら捕まえてね。アジトも押さえてくれると助かるな。お宝があったら、もらっちゃえ。


 捕まってる人がいたら、助けたいから教えて。あれこれ頼んで、各山に数組ずつ放つ。後は待つだけ。


 その間に、どんな建屋にするか、いい加減デザインを決めないとなあ。ウィカラビアの山も、お風呂場は仮で作ったけど、別荘はまだだし。


「うーん、ここはやはり、気候に合わせて解放的な造りにしようかな」


 アジアンテイストを入れつつ、南国風にアレンジして。


「あ、ジテガンって、台風来るのかな?」

『位置的に、台風よりはゲリラ豪雨の方が多いかと』


 え? こっちにもあるの? ゲリラ豪雨。


『日本のもののように、予測しづらいものではありませんが、急に土砂降りが降る事もあります』


 んー、それだと解放的なのは、いかがなものか。湿気とかの対策も考えないと。


『それらは結界でどうにでも出来るのでは?』

「あ! そうだった。でも、長く空ける時もあるよね? 結界張りっぱなしは難しいかも」

『なら、遠隔で結界を張れるよう、ここに常駐させる護くんなりとーるくんなりを改造すればいいのでは?』

「その手があったああああ!」


 そうだよ、どのみち護くんたちはここに置きっぱなしになるんだから、彼等に結界を張り直せしてもらえばいいんだ。


 あ、でも護くん達の魔力バッテリー、もつかな?


『そこは亜空間収納を用いて、彼等がローバッテリーになった時に自動で交換出来るようにしてみては?』


 魔力バッテリーを取り外し可能にして、不足気味になった個体から順次自分でバッテリー交換を出来るように……か。


 その辺りは、じいちゃんに要相談かな。こういうアイデアに関しては、じいちゃんの方が上だから。




 とりあえず、温泉別荘を建てる位置を確認し、泉質を調べてからマノンダ卿の王都屋敷に戻る。


 ジテガンの温泉、色々泉質がバラエティに富んでいて楽しいなあ。腰痛肩こり筋肉痛に効く温泉もあったから、ユゼおばあちゃんやじいちゃんにもいいかも。


 そのユゼおばあちゃん、スーラさんでジデジルに連絡を取りまくってる。


「ええ、そうよ。こちらの大陸には伝手が殆どないでしょう? だから、この国を中心に布教活動をするのもいいと思うの。聖地に連絡して、人員を見繕ってもらってちょうだい。……足? それならダガードから定期便が出るというから、船で来ればいいわ」


 うん、頑張れ、ジデジル。


 領主様も王宮に向かう事が多いらしく、屋敷にはジミネ夫人とジジ様、領主夫人……リーユ様。ジジ様を愛称で呼んでるって知ってから、自分も愛称で呼んでって言われてさ……


 後侍女様方の三人、それに銀髪さんと剣持ちさんとじいちゃん。銀髪さんと剣持ちさんは、よく庭で剣の稽古をしている。


 気温の高い国では、あっという間に体力がなくなるから、日中は止めた方がいいって言ったんだけどねー。


 若いからなのか、二人とも割とタフだよ。でも、熱中症は怖いから、水分補給はこまめにね。


「おお、戻ったかの。して、とんねる、とやらは出来たのかのう?」

「うん、出来たよ」

「ふうむ。今でも地面の下の道というのがよくわからんわい」

「まあ、まっすぐ山の向こう側まで楽に行けるって思っておけばいいんじゃないかな?」


 こっちにトンネルなんて、ないからね。あ、ジテガンに出来たのが初か。


「それにしても、その道は温泉の邪魔にはならんのかのう?」

「大丈夫、検索先生が一発で温泉から外れた経路を計算してくれたから」


 そう、だから山の地下をトンネルが走っても、温泉にぶち当たる事はないのだ。検索先生のどや顔が目に浮かぶ……




 領主様達が戻って、夕食の席。トンネルの話題が出た。


「という事は、もう出来上がったのかい?」

「はい。今は人が入れないよう、柵で封じてありますけど」


 入り口は、下位種ドラゴンの骨で作った劣化ドラゴンコンクリートで作ってある。間違えて入らないよう、柵をしっかり閉じてきた。


「道自体も色々素材を使って強化してあるので、壁や天井が崩れてくる事はないですよ」

「ふうむ……サーリ、そのとんねる、という地下の道は、ダガードでも作れるのかね?」

「作れますよ」

「国に戻ったら、作ってもらいたいのだが」


 あー、やっぱりそうなるかー。でも、そこは私でなくても何とかなると思うんだよなあ。


「それなら、あのめ……め……」


 名前、何だっけ? じいちゃんのストーカー。


「メヴィアンの事かの?」

「そう! それ! あの人なら、作れる……というか、監督出来ると思いますよ」

「ほう」


 あ、領主様の目がぎらりと光った。ぜひ、こき使われてください、じいちゃんのストーカー。




 夕飯後の一時、皆思い思いにくつろいでいる大きな部屋で、じいちゃんを隅に連れて行く。


「何じゃ? こんな隅っこで」

「あのね、実は……」


 トンネルを掘っていた時に検索先生に言われた魔力バッテリーの事を、じいちゃんに相談した。


 現在、護くん達に内臓している魔力バッテリーは、じいちゃんに作ってもらってる。素材はドラゴンの鱗。砦の窓ガラスで余ったり、削って出た部分とかを使ってるんだって。


「で、こっちに放りっぱなしだと、いつ魔力の充填にこれるかわからないでしょ? だから、自動でバッテリー交換してくれるようにしたいんだ」

「ふうむ。魔力が少なくなったバッテリーはどうするんじゃ?」

「亜空間収納内で、自動で魔力充填出来るようにしておく」

「護くん達をそこに入れて、充填するんじゃダメなのかのう?」

「それだと、魔力切れを起こした個体が長く持ち場を離れるでしょ? それはちょっと……」

「ふうむ。そういう事なら、素材を代えて長持ちするバッテリーにした方がいいかもしれんぞい」


 おお、新素材? ドラゴンの鱗以上に魔力を貯め込めるなんて、何を使うんだろう?


「簡単じゃ。ダイヤモンドを使うんじゃよ」 


 えー? それ、コストがかかりすぎると思うんですけどー。……って、あ!


「工業用のを作ればいいのか」


 ダイヤって、人造で作れたよね?

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