第446話 神様の言う通り
場所を変えて、女王様のお話スタート。
「我が国との交易を望んでいるというのは、間違いないのだな?」
「ええ、貴国で生産される農作物や果実などは、我が国にはないものばかり。きっと良い交易が出来るでしょう」
「ふむ……ジェザバルの命やカムゼスの家族を救われた恩もある。ぜひとも交易を……と言いたいところだが、残念ながら、我が国は今問題を抱えていてな」
「ジテガン……ですね?」
「そうだ。あの国がある限り、我が国は常に脅かされる。ジェザバルが病に倒れたのも、カムゼスの家族が攫われたのも、裏にいるのはあのジテガンだろう」
「証拠はあるのですか?」
「確たるものはない。今ベーゴの屋敷を捜索させているが、おそらく何も出てこないだろう。だが、ジェザバルが倒れた病は、ある意味証拠になり得るかもな」
「と、言いますと?」
「病と言っていたが、正確には毒を使った呪いなのだ。だからこそ、清流の滴が必要だったのだよ」
「ほう」
女王様と領主様の一騎打ち……じゃなくて、独壇場っていうのかな? さっきから二人だけしか話してないや。
「その毒というのが、ジテガンにある山でしか採掘出来ないある鉱物を使って作るものなのだ。しかもその山は、ジテガンの王家が厳しく管理しており、盗賊はおろか一般の人間すら簡単には入れん」
「ほほう。ジテガンは、余程その毒に自信があったのでしょうな」
「今まであの毒から生還した者はいないからな」
マジで? 思わず王配殿下を見ちゃったら、苦笑しつつ頷いたよ。そうか……あの巨大魚からしか清流の滴が取れないなら、確かに難しいかも。
あれ、捕まえるの大変そうだし。美味しいんだけどね。
「しかし、確たる証拠がないとなると、あちらの国を糾弾する訳にもいきますまい」
「その事は問題ない。どうせ近々国境付近に奴らの兵が現れるだろう。そこでだ。お主達、妾達に力を貸さんか?」
「ほう」
「あの巨大魚を倒した程だ。腕に覚えはあろう?」
「だ、そうだよ、サーリ。どうするね?」
領主様からの問いに、答えるとしたらこれしかあるまい!
「やります! ジテガンは潰しましょう! そしてフルーツを我が手に!!」
あれ? 室内の人達が引いてるんだけど。何で?
とりあえず、カムゼス卿は家族と共に一旦王都の屋敷に戻るらしい。あ、屋敷に裏切り者がいる事も、ちゃんと伝えておいた。
「なんと! 先々代より我が家に仕えていたあの者が……」
「多分ですけど、家そのものよりその個人がお金に目がくらんだみたいですよ」
この辺りは検索先生情報。なんかね、賭け事好きで、結構な借金がある人なんだって。
で、その借金返済の為に、主を裏切る事にした訳だ。その結果がどうなるかは、知らないけどー。
女王様と王配殿下は、軍の支度に取りかからなきゃいけないから、大変そうだ。
で、私達はジテガンが動くまで待機って事で、マノンダ卿のお屋敷に逆戻り。
したら、いたよ、侵入者。護くんととーるくんに捕まって、門のところに網でひとくくりにしてあった。
「やはり来たか。マノンダ卿、これらは国内の人間でしょうか?」
「うーむ、身分証を持っていればわかるのですが……」
キルテモイアとニエハット、ジテガンは同じ人種の国らしい。元はもっと大きな帝国だったそうだけど、その国がなくなって、残った人達が住んでいた場所で国を興したのが、今の三国なんだそうだ。
という訳で、見た目だけじゃジテガンの人間かキルテモイアの人間かわからないって訳。
『ジテガンからの依頼を受けただけの、流れ者ですね』
あー、やっぱり足が付きそうな人間は使わないかー。とりあえず、その情報も領主様に教えておこうっと。
捕まえた連中は、まとめて衛兵に突き出してそっちで尋問やらやってもらう事になった。
で、ただいまお屋敷の一室。領主様と銀髪さんに捕まった。剣持ちさんもいるけど、我関せずを貫いているよ。
「さあ、話せ」
「カイド様、そんな言い方をしては、サーリも話せませんよ。なあ、サーリ」
えーと、これってどういう状況? じいちゃんは? ユゼおばあちゃんは? ジジ様はあああ!?
涙目になってたら、銀髪さんがちょっと慌ててる。
「いや、別に泣かそうとした訳じゃなくて」
「まあ、私達に詰め寄られたら、泣きたくもなるか。いっそジジ様を連れてきましょうかね?」
「お婆さまをか? 今ここに? それは……」
「大丈夫ですよ、カイド様。叱られる時は一緒です」
領主様、とてもいい笑顔で何を言ってるのやら。
そして、呼ばれたジジ様が来たら、本当に三人まとめて叱られてた。
「婦女子をむさい男三人で囲んで、何をしているのです!! サーリ、怖かったわね? もう大丈夫よ」
「ジジ様ああ」
やっぱりジジ様、大好き。
銀髪さん達が知りたがったのは、私の情報がどこ由来かって事なんだよね。出所がわからないと、説得力にも欠けるという事らしい。
「まあ、最悪サーリの魔法でどうにか知った、と言い張ってもいいんだけどね」
「でも、この国の近辺、魔法を使える人が殆どいませんよ?」
「何? そうなのかい?」
領主様も驚いてるね。ダガードも魔法士が少ない国だけど、少ないってだけで魔法を知らない訳じゃない。
多分、これから増えていくんじゃないかなー。
「で? それはどこで知ったんだ?」
詰め寄る銀髪さんなんか、嫌いだ。
さすがに検索先生の存在をじいちゃん以外に言うのはなあ。でも、神子だとバレていると、いい手があるのだ。
「それはあれです。神様からのお告げなんです!」
どうしてそこで、皆疑わしいような顔でこっちを見るのかな? 検索先生は神様に繋がってるんだから、割と嘘言っていないよ?
『嘘ではないですが、真実でもないですよね』
うるさいですよ、先生。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます