第445話 謁見の間での騒動
さて、謁見の間では、話がどう進んでいるのかな? と耳を傾けたら、やや高い男性の悲鳴が上がった。
「そのような戯れ言、お信じなさいますな! これは、我が国とジテガンを断絶しようとしている罠です! カムゼス卿! あなたのご家族は、きっと女王様によって拉致されたのですよ!」
「見苦しいぞ、ベーゴ。そこまで言うのなら、カムゼス卿の家族をここに呼ぼう。連れて参れ!」
おっと、多分家族全員にも結界を張った方がいいよね。物理も魔法も全部弾く優れものですよ。
連れにきた兵士に従い、夫人以下家族全員で部屋を出る。謁見の間に入ったと思しき時に、今度は女性の悲鳴が上がった。
「ははははは! カムゼス卿! 家族の命が惜しかったら、私の言う通りにしなさい!」
さっき大声で戯れ言云々言ってた人だな。多分、これがベーゴ卿でしょう。カムゼス卿の家族を人質に取ろうとしてるな?
でも残念、私の結界は頑丈な上に高機能なんだぞー。
「ぎゃあ!」
うん、多分家族を拘束しようとした兵士が倒れたな。危害を加えようとしたら、電撃で相手を倒すようにしてあるから。
そして、やっぱり王宮にも裏切り者がいたよ。だから結界張るようにって検索先生が言ったんだね。
謁見の間がどよめいている。こっちの大陸って、魔法は珍しいのかな? 王宮にも、対策が施されていないようだし。
『こちらの大陸で魔力持ちが生まれる事は非常に珍しく、成人まで育つ事はさらに希です』
それは、突っ込んで聞いちゃいけない理由だな。人間って、自分がわからないものは怖いって思うものだから。
知識がある人が側にいればいいけど、魔力持ちが珍しい環境じゃ、それも厳しそう。
領主様や銀髪さん達と、こっそり謁見の間を覗くと、細面の男性が慌てている。彼の背後には、全体的に四角いおじさん。
「あちらの大柄な男性がカムゼス卿です。その前にいるのが、ベーゴ卿ですね」
おっと、マノンダ夫人も覗いていて、教えてくれましたよ。そっか、あの二人が。
んじゃ、ちょっくらカムゼス卿にも結界を。気づいたじいちゃんがぼそっと一言呟く。
「大盤振る舞いじゃな」
「念の為ね」
ベーゴ卿って人がカムゼス卿を裏切って家族を人質に取ったのなら、カムゼス卿は生きていなきゃ。
じいちゃんとの会話を聞いていたのか、銀髪さんが不思議そうな顔でこちらを見ている。
「何の話しだ?」
「内緒です」
「……それも含めて、後で説明してもらうぞ」
その時までに、忘れてくれないかなあ。
「な、何なんだ、何なんだこれは!」
あ、ベーゴ卿が叫んだ。目の前でいきなり兵士が悲鳴を上げて倒れれば、そりゃパニックにもなるか。
それを、玉座から冷静に見下ろす女王様。
「騒ぐな、鬱陶しい。授けられた計画が台無しになったのが、それ程悔しいか?」
女王様の言葉に、ベーゴ卿は真っ青になっていた。
「反論もないか? さて、カムゼス。一連の事は、己の目で見た通りだが」
「は……何も申せません」
「家族にはかける言葉があろう。ぼうっとするでない!」
「は!」
カムゼス卿は、家族の元へ走り寄る。家族を人質にしていた兵士達は、倒れた仲間にビビって家族から離れてるわ。
「ズイニール、ジェタ、シギ、メーニ、ディット、皆無事か?」
「はい」
「お父様!」
全員で抱き合っている。麗しき家族愛なり。
その間に、部屋の外からなだれ込んだ兵士達によって、裏切り者達は一網打尽になっていた。
「さてベーゴ。申し開きする事はあるか?」
「あ……ああ……」
「ないのであれば、そなたにはカムゼスの家族の誘拐及び王宮騒乱の罪を問う。ああ、反逆罪も追加だな。引っ立てよ!」
何か喚きながら、ベーゴ卿は引きずられていった。捕まった裏切り者達も同様に。
あ、まだ何か続きがあるっぽい。
「さて、カムゼス。そなた、これまで国外とのやり取りは最小限にすべきという考えであったな?」
「左様にございます。外から来るものの中には、厄介なものが多うございます故」
「ふむ、だが、今回我が伴侶を救い、そなたの家族を救い、ひいては我が国の危機を救ったのは、その外から来た者達ぞ?」
「むう……それにつきましては、返す言葉もございませぬ」
「そうであろう? 外から来るものを全て悪とするよりは、それぞれを見定める目を養う方が国の為になるとは、思わぬか?」
「言葉も、ありませぬ……」
「よい。今すぐ考えを改めよとは言わぬ。だがな。今回の事を踏まえ、この先の事をよくよく考えるべきではないか?」
「は」
「まあ、本日はこれまでとしよう。まずは家族と共に帰り、無事を喜ぶがよい」
「ありがとうございます」
おっと、これで本当の一件落着か。いやー、これで温泉開発に手がつけられるー。
「さて、そなた達にはもう少し、付き合ってもらうぞ?」
マジでー?
『神子、フルーツ』
おっと、そうだった。フルーツの為にも、ジテガンは潰しましょう!
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