第428話 王都郊外でまったり

 手配書が届いてから、領主様が速攻で山脈譲渡に関する契約書をもぎ取ってきてくれたので、さっさと盗賊退治です。


「一人で平気かのう?」

「うん、大丈夫!」


 これまでも散々やってきた事だからね。それに、私には強い味方がいる。護くんととーるくんだ。


 護くんに検索先生が調べた盗賊達の居場所を入力して、とーるくんと一緒に放って後は待つだけ。


 護くんが盗賊を見つけて、とーるくんが捕縛する。その後、私がいる場所まで連れてきてくれるって訳。


 さすがに王宮や離宮に集める訳にはいかないから、王都の外に出て、人気のない場所まで来た。


「乗せてくれてありがとう、ノワール」

「ドウイタシマシテー」


 王都からここまで、船着き場の船でのんびりしていたノワールに乗せてもらったんだ。普通の馬のように、地上を走ってきたよ。


 だって、空を飛んだら色々バレるじゃない? 今はまだ、空を飛べる事は隠して置いた方がいいだろうからねー。


 離宮から馬車を出してもらい、まず水路の船着き場まで行き、船に残っていたユゼおばあちゃんや侍女様方に今回の件を説明しておく。


 四人とも、溜息を吐いていたよ。まあ、呆れるよね。セコいやり方だし。


 で、同じく留守番していたノワールに、元の大きさに戻ってもらった訳だ。そうそう、ノワールってば、新しい技を憶えていたよ。


 背中にある天馬特有の翼、あれをうんと小さくする事が出来るようになってた。おかげで、見た目は普通の……と言うにはちょっと大きめの黒い馬だ。


 ブランシュとマクリアも一緒に行くって言ったから、二匹には小さいままで懐に潜ってもらってる。


 さて、では護くんととーるくんを出しましょうか。




 検索先生に調べてもらった盗賊達の居場所は、見事に国内のあちらこちらに散らばっていた。中には私がもらう予定の山脈とは違う山に潜んでいる連中もいたよ。


 ついでだから、盗賊達に捕まっている人や、貯め込んだお宝があったら一緒に持ってきてもらうよう指示を出し、護くんたちを解き放つ。


 さて、じゃあ後はここでゆっくり待ちましょうか。


「あ、ついでだから、何か作ろうっと」


 王都の外も結構な暑さだけど、結界を張ってしまえば温度調整が出来るからね。ついでにテントを出して……と。


 テントには簡易キッチンがある。これだけで作るとなると、何がいいかなあ。あんまり凝ったものは作れないや。


 そういえば、フルーツをたくさん買い込んだっけ。この国、おいしそうなフルーツが安く手に入るんだよなあ。


「んー……よし! 暑いからよく冷やしたフルーツポンチはどうだ」


 まず、使うフルーツを洗って皮を剥く。一口大……出来たら丸とかにした方がいいんだけど、面倒だから切るだけ。


 後はサイダーとかに入れれば完成なんだけど……そういや、いつぞやフィエーロ伯領に行った際、手に入れたのがあったね。


 てっきり売ってるのかと思ったけど、普通に取れるものなので売り物じゃないんだって。


 メイドさんがそんな話をして、ビンに詰めたものを何本か融通してくれたんだよなあ。


 その一本と、温室で取れたオレンジを搾ったジュースを混ぜて使おう。入れる器は……磁器だと、面倒かな。


 よし、銅の鍋を器代わりに。見た目がスイーツというより料理のようになっちゃったけど、まーいっかー。銅って、熱伝導率が高かったはず。


 んじゃ、魔法で冷やしてから味見を。うん、なかなか美味しい。炭酸のシュワシュワした感じがいいわー。夏って感じで。


 いや、今の季節は春なんだけど。ウィカラビアって、暑いからさ。




 テントでのんびりしていたら、検索先生からの連絡が。


『護くんととーるくん達が、順調に盗賊を捕縛しているようです』

「おおー、さすがだね」


 砦の警備を任せているので、未だにしつこく侵入しようとする連中をこっそり捕縛しているんだよね、護くん達って。


 で、その経験を全機で共有しているので、今では捕縛にかけて右に出る存在はいない。


 基本、護くんが捕縛する相手かどうかを判断して、とーるくんが捕縛するという連携になっている。


 とーるくんって、野生動物や魔獣はきちんと全て捕縛するけど、人間を見分ける機能が足りていないから。元々、そういう用途で作ってないしね。


 なので、今回みたいに盗賊の捕縛の場合は、護くんとの連携が必要な訳です。


 いくつかの組は、既にこちらに向かっているそうな。今回も、空は使わず陸路を移動するよう指示してある。


 盗賊が引きずられるようだけど、知らなーい。盗賊って、大抵の場合処刑される程重い罪だそうだから。


 強盗殺人って思えば、罪の重さにも納得出来るってもの。


 続々と戻ってくる護くんととーるくんの連携チームと、彼等が捕縛してきた盗賊と手配書をにらめっこして確認する。


 うん、今のところ、半分くらいは終わったかな。


 盗賊達はそのままにしておくとうるさいので、魔法で眠らせた。今のところ、攫われたりして盗賊達に捕まっていた人達はいない。


 貯め込んでいたお宝は、それなりにあるけれど。結構金銀宝石と、良い物が揃ってるなあ。ウィカラビアって、お金持ちが多いのかね?


 そういえば、前回の海賊退治の時も、アジトからたくさんのお宝を集めたっけ。あれもまだ、亜空間収納に全部丸ごと残ってるよ。


 換金するの、すっかり忘れてたわ。




 全部の盗賊を集めるのに、結局丸一日かかっちゃった。


「もしもーし、領主様ですかー? 盗賊全部捕縛出来たんですけど、これどうしましょう?」

『では、今から我々も一緒に引き取りに行くから、その場にいてくれ。王都から出ているんだよね?』

「そうでーす。えーと、詳しい場所は……」


 簡単な地図をじいちゃんのスーラさんに送ったので、もうじき引き取り手が来るでしょ。


 盗賊は渡すけど、お宝はどうしようかなー?

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