第398話 ロールケーキ
王宮に行って、必要な物資のリストとお金を受け取って、いざ大陸のくびれへ。
この辺りは一年を通して気候が安定していて、日照時間も長い。そのせいで、穀物を始め農産物がよく育つ地域。
なので、市場はいつも活気がある。
「おっちゃん、ここにある野菜、全部ちょうだい」
「へ? 全部う!?」
「うんそう。お金はあるから」
計算してもらってお金を払い、品物をバッグ……と見せかけて亜空間収納へ放り込んでいく。おっちゃんだけでなく、隣の露店の人達も目を丸くしていた。
ここは野菜、その隣では果物。向こうの通りでは穀物を扱っている。さあて、市場を買い占める勢いで買い物するぞー。
結局、途中で市場の責任者という人に止められるまで、買い尽くした。
あっちこっちの都市で買い占めてたら、最後は必ず責任者が出て来て追い払われる。
他の客が買えなくなるから、買い占めちゃだめなんだってさ。でも、ちまちま買うのは面倒なんだよね。
仕入れなら別枠で受けるから、って言われたけど、先々じゃなくて今必要なんだよ。
仕入れだと商業組合に登録しないとならないし、品物を手に入れられるまでに時間がかかりすぎるから。
という訳で、いくつもの国、都市で買い占め、何とかリストに近い種類と量を集める事が出来た。
リストにある野菜とか果物が、店頭にない場合もあるからね。そういう時は代替品を買ったから、許してもらおうっと。
あちこちで買いまくったら、お昼までまだ大分間があるよ。この分だと、おやつの時間までには砦に帰れそう。
さて、残りは燃料の薪だね。
『くびれより、南ラウェニア大陸の方が、人のいない森や山が多いです』
という事は、南だね。
南には、以前行った時にポイントを打った……はず。よし、あったあった。という訳で、ポイント間移動であっという間に南ラウェニアでーす。
「ここも人はいないけど、薪に出来そうな木はないねえ」
南ラウェニア最南端は高い木がなく、あっても低木、殆ど草、あとむき出しの土。
『もう少し北に行けば、人が入っていない山があります。そこでなら、薪用の木も切り放題です』
とはいえ、丸坊主にする訳にもいかないしなあ。切ったら植樹しておこうか。
北には確かに山がいくつか連なっていて、しっかりした木もたくさん生えている。よし、狩る……じゃなくて切るぞー。
調子に乗って、切っては亜空間収納に入れ、枝打ちをして乾燥、薪に丁度いい大きさに切りそろえるまでを流れ作業で行った。
おかげで亜空間収納の中には、それこそ山のような薪。いや、他にも一杯入ってるけど。
んで、木を切った後は枝から作った苗木を植樹。こうしておけば、また何年か後には立派な木になるでしょ。
今回は緊急の依頼なので、他に何も見ずに北へ帰る。いや、南に何か見るものあるのかって聞かれると、首を傾げるけどね。
でも、ローデンで暮らしていた頃も、国から殆ど出なかったし、再封印の旅の時は北ラウェニアに行くまでの陸路くらいしか見てないんだよなあ。
もしかしたら、絶景がどこかに隠れているかも。
『調べますか?』
んー、今知っても行けないから、見に行くって決まってからでいいや。
一応依頼だから、今回買ったり切ったりしたブツは、依頼主に届けなきゃだめだよね。って事は王宮か。
一応、スーラさんで領主様に聞いてみよっと。
「もしもしー、領主様ですかー?」
『サーリか? 何だその妙な言葉は』
「気にしないでください。ご希望の品が揃ったんですけど、王宮に持っていきますか? それともホーガン伯爵領に持っていきますか?」
『もう揃ったのか!? 一体どうやって……ああいい。聞くだけ無駄だな。我々もこれからホーガン伯爵領に向かうので、そちらに頼む』
「わかりましたー」
何か引っかかる言葉があった気がするけど、まあいっか。んじゃ、ホーガン領へ戻りましょ。
ほうきで行くのは面倒なので、一度砦を経由してポイント間移動。あれ? じいちゃんは留守らしい。どこ行ったんだろう?
砦で少し時間を潰したら、ほうきでホーガン領へ行こう。って事で、一人寂しくおやつを食べようかな。
今日のおやつは急に食べたくなったロールケーキ。クリームはキャラメルにしよう。
まずはクリーム。本当は砂糖を焦がしてからーなんだけど、面倒なので砂糖と牛乳、バターを入れて火にかける。
こうしていっぺんに入れても、ちゃんとキャラメルになるんだー。で、良い感じに色がついたら温めておいた生クリームを投入。
冷たい状態で入れると、キャラメルが一挙に固まるから、温めてから入れる。後はキャラメルがクリームに溶けるまで混ぜる。
クリームが出来たら、魔法で急冷。本当便利だよね。ロールケーキの生地は、粉少なめ。卵を割りほぐして砂糖と一緒に泡立てる。
人肌くらいに温めて、リボン状になるまで。粉を入れて粉合わせをして、天板に流し入れて焼成。
焼き上がるまでに、キャラメルクリームを泡立てておく。ちょっと固めにしっかりと。
焼き上がったら、これまた魔法で急冷。こっからは大変だから、もう魔法を駆使して巻いていく。
スポンジを広げて巻き終わりになる部分を斜めに切り落とし、手前から奥へとクリームを塗る。手前が厚くなるようにね。
で、あとは魔法でくるくるっと巻いて、しっかり巻き終わったら、そのまま急冷。形を馴染ませないと。
後は切って食べるだけ。あー、久々においしー。もう一切れ、いっちゃえ。
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