第378話 先生も成長する

 港街建設の妨害は消えた。私の船は亜空間収納内で建造されていて問題なし。温泉も国内でわかっている分は全て手に入れた。


 これでしばらくはゆっくりしていいよねー。


「あー……極楽極楽」


 初心に返って、一番湯で温泉につかる。ここ数日間の疲労が溶けて流れ出ていく感じー。


 一番湯があるのは山の中でそこそこ標高があるからか、建物の外は砦よりも寒い。


 砦は結界を張って気温調節をしているんだけど、温泉に限っては特に何もしていない。ここでは暑さ寒さも楽しむものなのだ。


 大きな浴槽につかりつつ、窓から庭を楽しむ。しかも明るい時間帯から。凄い贅沢ー。


 そんな贅沢な時間を過ごしながら、次につくるものでも考えよっかな。


「うーん、やっぱり飛ばす手紙だけでなく、携帯電話は欲しいかな」


 一回作ってはいるんだよね。冬に砦を留守にする時、ローメニカさんとだけ連絡が取れるようにって。


 あの後、彼女に渡した分は自然分解しているはずなのでもう使えないし、領主様から作ってほしいと言われていない。


 多分、冬の時のあれこれで、限定的な使い方しか出来ないと思われてるんじゃないかなー。それならそれでいいか。


 うんと簡単な作りにして、十日かそこらで使えなくなるようなやつ。ちょっとプリペイド携帯に似てるけど、使い捨てに出来そうな携帯、作れないかな。


 検索先生ー、いいアイデアないですかー?


『はー、極楽極楽ー』


 ダメだこりゃ。




 お風呂から上がって、スペンサーさんに出してもらった冷たい麦茶を一気飲み。ぷはー。


 イチゴミルクやコーヒー牛乳もいいけど、汗かいた時は麦茶が一番だね。今日は午前中ずっと浴場にいたから、結構汗かいてる。


 あの後浴場には冷泉も作って、のぼせた体を冷やせるようにしてみた。今回も、温泉で温まっては冷泉に入って冷やすを繰り返したんだよね。


 おかげでのぼせなくてすんだわ。


『やはり温泉は最高です! おかげで私の能力も飛躍的に向上しています』


 え? 本当に?


『今は見えづらいですが、そのうちわかるでしょう』


 えー? 今知りたいのにー。


『それと、入浴中にあった携帯電話の質問ですが』


 ああ、それそれ。今なら答えてもらえるかな?


『使い捨て……というよりは、プリペイドの考えを取り入れ、何らかの条件を満たした場合にのみ、通話可能な形にすればいいのではありませんか?』


 何らかの条件か……それって、条件はこちらで勝手に作っていいって事ですよね?


『作成者の権限かと』


 ですよねー。それなら、何かで連絡が必要な時のみ回線を開くとかにしておけばいいか。


 渡す相手は砦のメンバーと領主様とフォックさん、ローメニカさん、あとジジ様にも渡しておこうかな。


 銀髪陛下は……領主様と一緒でいいかな。あ、フィアさんか叔父さん大公には渡しておいた方がいいかも。ミシアを預かってるから。


 後は……使える使えないは別にして、島ドラゴンにも渡しておこうか。……果実の要求ばかりきそう。


 渡す相手は決まったから、後はどういう形にしようかな。メール機能はミシアとジジ様に渡す分くらいでいいかな。


 偏見だけど、他の人が使いこなせるとは思えない。あ、ローメニカさんなら大丈夫か。


 うーん、するとやっぱり形態はスマホタイプかな。文字の入力に慣れが必要だけど、多分大丈夫でしょ。


 一対一で繋げるだけなら問題ないけど、そうでないとなるとやっぱり基地局が必要かな。


『その仕事はこちらで請け負います』


 え? 本当に? 大変じゃないですか?


『機能向上に伴い、処理能力も飛躍的にアップしていますので、問題ありません』


 おお、ありがとうございます。って事は、各携帯に番号を割り振って、その番号で相手を指定して通話したりメールを送ったり出来るなー。


『それと、全機種にメール機能は付けておいた方がいいでしょう』


 そうかなー?


『でないと、時間も考えずにかけてくる人間が絶対に出ます』


 それは嫌。よし、全部に通話とメール機能を付けて、っと。私が持つ分だけは、カメラ機能も付けておこうかな。


 録音録画も出来て、写真も撮れる。まだまだダガードでも行っていない地方とか一杯あるから、隙を見つけて観光してみよう。


 観光といえば、やっぱり動画と写真でしょう!


「そろそろ冬だから、観光は来年だなあ」


 来年の話をすると鬼が笑うっておばあちゃんが言っていたけど。でも言いたい。


 来年はダガードの観光をしまくるぞー!




 砦に戻ったら、ミシアが難しい顔で唸っていた。


「どうしたの?」

「先生の仰る事が理解出来ないの……」


 ああ、最初の壁にぶつかったのかな。魔法修行では、大体三つの壁があるって言うらしいから。


「サーリはどうやって乗り越えたの?」

「私? 私の場合は乗り越えたというか、ぶち破った感じ?」

「はあ?」


 うん、壁に当たる度にぶち破ったもんだから、じいちゃんが顎外しそうになったんだよなあ。懐かしい。


「と、とりあえず、どこでつまずいてるの?」

「えーとね、魔力を絞るって言われたんだけど、うまく出来なくて」


 ああそれ、魔力制御をしっかりさせてからの方が良さそう。ミシアはまだ魔力を全力で使っちゃってるんだね。


 腕に嵌めたじいちゃん作の腕輪は、勝手に魔力の制御も行ってくれるから。でも、これを外すとまた勝手に心を読んじゃうしね。


 ミシアには毎朝毎晩、魔力の制御を行うトレーニングを教えた。単純に自分の体の中で魔力をぐるぐる回すだけだから、簡単と言えば簡単。


 でも、これをやっておくといつの間にか制御力が身につくんだよねー。


 私の場合は、その制御力も大きな魔法を何度も使う事で身につけました。だからぶち破ってるんだよ。

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