第377話 終わったので帰る
あの後夜会は中断になり、私も奥宮に戻ってきた。
「ん? あれ? 私もう、王宮にいる必要、なくね?」
今回王宮に留まったのって、さっきまでの夜会の為だよね? これ、もう砦に帰ってもいいよね?
「何を言っているの。こんな夜遅くに帰す訳にはいきませんよ」
「ジジ様」
あの夜会、ジジ様は出席していなかった。というか、大抵の社交行事に顔を出す事はないって話だったっけ。
だから隙を見ては、奥宮に突撃かます貴族がいるんだって。それもあって、いつぞや奥宮の中庭に入り込んだ群れ達にも、厳重注意が行ったんだとか。
なのに、夜会であの態度。貴族って違う意味で凄い。
結局ジジ様に引き留められて、もう一泊奥宮に泊まった。今回の件で、一週間以上ここにいた事になるねー。
朝食をいただいてさあ帰ろうと思ったら、今度は領主様と銀髪陛下がやってきた。逃げ遅れてるー。
「やはり逃げようとしていたな?」
「ナンノコトデショー?」
「誤魔化すな! まったく、夕べの顛末を知りたくはないんだな?」
「知りたいですごめんなさい」
一応、関わった者の責任というか、このままだと「あの後結局どうなったのー?」となりそう。
いや、主犯の貴婦人が捕まったのと、ネフォウス伯爵家が蟄居になったのはその場にいたんだから知ってるけどさ。
「レビサの自白により、ネフォウス伯爵家の他にも港建設の妨害に動いていた家があるとわかった。夕べの夜会の間に、各家の捜索を行っていたのだが、違う証拠も山程出て来たそうだ」
あちゃー。どうも、例の自白大会が行われた夏祭りに遅参した貴族は、ネフォウス伯爵家以外にもいて、それらが丸ごと妨害に関わっていたっぽいよ。
強力浄化、いっそ国内全体にかければ良かったかね。
『その場合、違う問題を引き起こしていた可能性が高いです』
違う問題とは?
『国中の至る所で自白が始まり、経済活動が停滞します』
そんなに悪人だらけなの!? この国。
『大なり小なり悪事に関わらないと、生きていけなかった人達も多く、また商売も回せない場合が多かったようです』
うーん……それは国の問題って事なのかな。領主様や銀髪陛下には、ぜひとも頑張っていただきたいところ。
無理そうなら、やっぱり砦持ってトンズラかな。
「聞いてるのか?」
「すみません聞いてませんでした」
「お前は……まあいい。どうせたいした事は言っていない」
なーんだ。じゃあ聞いてなくても問題ないね。って思っていたら、じろりと睨まれてしまいました。あれー? いつの間にか口から出ていた?
銀髪陛下によると、レビサさんの証言に基づき家宅捜索をした家がネフォウス家以外に七つ。
そのうち三つは出てきた証拠だけで、既に取り潰しが決定してしまったらしい。どうも王位に関する陰謀がうんたらだったそうな。
残りの四つの家は、爵位と領地の半分以上を没収して終わりになりそう。悪事は悪事だけど、下位の貴族家に対する悪さが中心だったので、この結果らしい。
港街建設の妨害に関しては、やはり貴婦人が主犯で他は協力していただけだそう。利害関係の一致ってやつらしいですよー。
その結果が取り潰しだの領地の減少だのなんだから、シャレにならないよね。
「レビサさんは、これからどうなるんですか?」
「本人の希望もあって、修道院に入る事になりそうだ」
そっか。強い浄化を受けたから、強制改心に近い状態になってるもんね。修道院のような場所の方が、レビサさんの為かもしれない。
国内の教会関係は、ユゼおばあちゃんとジデジルが腕によりをかけて改革しまくってるから、以前のような腐敗は当分ないし。
これからは心安らかに過ごしてほしいな。
話も終わってやっと砦に帰る事が出来た。領主様達には引き留められたけど、あんまり長居するのもね。
王宮とかって、どうしても私にとっては鬼門だわ。
「それじゃあ、お世話になりましたー」
いつも通り、奥宮の中庭からほうきで飛んで砦へ。あー、やっと帰ってきたって思えるわー。
「おお、戻ったかの」
「ただいまー! じいちゃん」
「お帰りなさーい!」
あれ? ミシア? 驚いていたら、ミシアがにやりと笑った。
「親子水入らずの時間もしっかり取ったから、お母様を説得してまたここに来たの」
「説得って。じゃあフィアさんはまだ納得していないんじゃないの?」
「大丈夫! 娘の涙ながらの訴えに、最後は了承してくれたわ」
フィアさん、お疲れ様。でもまあ、ミシア相手じゃなあ。私でも説き伏せられそうだ。
「サーリは王宮に行っていたんですってね。兄様やお婆さまはお元気だった?」
「うん、大変元気だよ」
特にジジ様は。出会った当初からパワフルな方だと思っていたけど、ここ最近さらに磨きがかかった気がするんだけど。
『温泉パワーですね!』
……何か、本当にそんな気がしてきた。
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