第368話 また参加したいって
あっという間に一周年記念パーティーの当日。と言っても、会場になる八番湯に、検索先生に頼んでデザインしてもらった花を飾った程度。
まあ、八番湯のお披露目も兼ねてるから、メインは温泉と料理、飲み物だしね。
まず叔父さん大公一家を絨毯でお迎えに行き、そこから四番湯で銀髪陛下を拾う。
そこから王宮に向かいジジ様達を拾ってから、ネレソールへ。領主様、ネレソールに戻ってるって連絡が来たから。
で、最後にデンセットに寄ってフォックさんとローメニカさんを拾い、会場の八番湯へ。
ユゼおばあちゃんとジデジルは、ブランシュ達と一緒にじいちゃんが連れて行ってくれてる。
絨毯の上、結構な大所帯ですよ。さらに大きい絨毯を作っておいて正解だね。
『これ以上の人数になった場合、小型の飛行船の方がいいかもしれません』
うーん、確かに。でも、これ以上の人数をいっぺんに運ぶ機会なんて、あるのかな?
『神子の国に、備えあれば憂いなしという言葉があると思いましたが』
そうですねー。来るかどうかもわからないけど、一応備えておきましょうかー。
亜空間収納内で作っている大型船の脇で、それより二回り小さい船を作ってもらう事にした。素材、多めに採取しておいて良かったわー。
形としては、小型の帆船。飛ばす術式は絨毯と一緒だから面倒はないけど、質量が変わるのでちょっと変更を入れなきゃね。
『術式の記述を変更するより、同じ術式を複数連動させる方が危険は少ないと進言します』
なるほど。新しい設計の大きなエンジンを積むよりも、従来の小さいエンジンをいくつも積んだ方がいいって事ですねー。
『連動の術式と連動させる数はこちらで計算しておきます』
よろしくお願いします!
道中静かだった王宮組も、八番湯を前にしたら何やらざわついている。
「これは……今まで見た中で、一番地味だな」
「そうねえ……面白みには欠けるかしら」
銀髪陛下もジジ様も失礼だな! 確かに見た目は地味だけどさ。温泉は、見た目ではないのだよ。
今回は全員男性用の建屋から宿泊棟に入る。これ、外から直接入る口も必要かなあ。後で改築しようっと。
中に入ると、今度は違う意味でざわついている。
「綺麗……」
「いい香り」
「これは美しい。色鮮やかな花だね」
ミシア、フィアさん、叔父さん大公の大公一家が口々に感想を述べる。ジジ様も、飾りの花の美しさに目を見張っているらしい。
「あれは……サーリ、あの花瓶は一体どういう事?」
あれ? 花瓶の方?
「あれは、磁器の花瓶ですよ。必要だったんで、急遽作りました」
こういう場所なら、ガラスの花瓶より磁器でしょ、と思ったんだけど、ダメだったのかな?
「素晴らしいわ! あれも注文します!」
「えええええ!?」
注文? そっち? あれ、これも売り物になるのか……そして、当然のように領主様と銀髪陛下もご注文……え? 叔父さん大公、あなたもですか?
ジジ様が大きいのと小さいの各六個ずつ、銀髪陛下が大きいの八対、領主様が大きいの十二対に小さいの十二個、叔父さん大公が大きいのと小さいの各六個ずつ。
……絵柄考えるのも大変。助けて! 検索先生!
『女性には女神像を、男性には男神像を絵付けする事を提案します』
なるほど。地球の神様なら、どっか遠くの国の神話の神様達、って事で通せるかも。
この世界、教会で教えている神様って、唯一神なんだよね。どんなに小さな村に行っても、教会があってみんなその神様を信仰してる。
土着の神様とか、いないのかね?
『この大陸には存在しません。別の大陸の場合は、神が姿を変えて顕現しているので、そちらの神が信仰されている場所もあります』
さすが、本当に神様がいる世界。そして、場所によって現れる時の姿が違うって訳か。
ちなみに、この大陸、教会での神様の姿は光そのもの。人の姿はしていないので、教会にあるのは神を現す光をシンボル化したものだけ。
神像はないんだ。偶像崇拝が禁じられてる訳ではなく、神は光そのものだからって事らしい。
花瓶一騒動あったけど、無事一周年記念パーティーは始まった。
料理はほっとくんが頑張ってくれたので、和食っぽい料理や洋食っぽい料理、それにダガードの郷土料理もメニューに加わっている。
お酒はじいちゃんに頼んで選んでもらい、ノンアルコール飲料もいくつか用意した。
私はお酒、あまり好きではないので、今日はジュースのみ。用意したジュースはオレンジ、ブドウ、リンゴ、桃。それとイチゴミルクにコーヒー牛乳もある。
カフェオレやカフェラテではなく、コーヒー牛乳。昔懐かしい感じにしてみたよ。ちゃんとコーヒーは使ってるけど。
これが意外とジジ様達に好評だったんだ。甘いから、銀髪陛下や男性陣にはいい顔されなかったけど。
ミシアやフィアさんも、ジュース類を楽しんでいたみたい。あ、ローメニカさんはお酒の方。こそっと蛇酒はないのか聞かれたわ……
会場では、きゅーじくん達にも注目された。基本、ほっとくんは奥から出てこないからねー。
領主様と叔父さん大公が食い入るようにきゅーじくんを見ていたのが、ちょっと気になる。あげないし、売らないよ?
銀髪陛下と剣持ちさんは、四番湯できゅーじくんもほっとくんも見てるからね。あ、会場にはスペンサーさんも置いているよ。飲み物は大事だから。
そしてやっぱり、グラスに注目が集まった。これもあげないし売らないよ!
お腹がいっぱいになった後、食休みして温泉へ。大浴場の彫刻は、女性陣に大変好評でした。
男性陣の方は、後でじいちゃんが教えてくれるってさ。さすがに忍び込む訳にもいかないしねー。
散々飲んで食べて騒いで温泉入って。なかなか楽しいパーティーでした。
参加者にも好評だったらしく、みんなから「また参加したい!」って声を頂きましたよー。
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