第365話 大っきな目玉?

 結局振り切れず、銀髪陛下と剣持ちさんを引き連れて、砦に戻る事になった。


「ほう。これはまた」


 じいちゃんがちょっとだけ驚いてる。ちょっとなんだ……


「しばらく厄介になるぞ」

「滞在費はこちらに」


 一応、食費くらいは入れてくれるらしい。それはいらないから、帰ってくれないかなあ。


 来客用の棟に二人を押し込めて、じいちゃんと角塔に向かう。


「またどうしてあの二人が?」

「それがさあ」


 フォックさんから領主様に話が漏れて、領主様はもちろん銀髪陛下と剣持ちさん、それにジジ様が参加する事になりそうだと説明する。


「で、銀髪陛下は一周年記念パーティーまで居座る気満々らしい」

「そういう事か。なら、一足先に温泉に送ってはどうかの?」

「その手があったあああ!」


 そうだよ。砦に居続けさせる必要ないじゃん。疲れてるだろうから、先に温泉で癒やされてるといいんだよ。


 ちょうどほっとくんも稼働するし、きゅーじくんの数も揃った。あ、きゅーじくんの外観は、各施設共通にしてる。


 いや、あんまり人間っぽくは作ってないから。いっそメカっぽいままの方がいいかなって。


 そうと決まれば、あの二人を四番湯に放り込んでこよう。何故四番湯かと言えば、男性人気が高かったのが四番湯だったから。


 六番以降はまだお披露目してないからね。一周年記念パーティーでお披露目するんだー。




 という訳で、空を飛んでいる。砦から四番湯までは二時間もあれば行けるから、あの後すぐに飛び立った。帰りはポイント間移動で一瞬だし。


「温泉に入れるのはいいが、お前、俺たちを体よく追い払ってないか?」


 ギク。銀髪陛下、割に鋭い。


「ソンナコトナイデスヨー」

「返答がおかしい上に、目をそらしてる時点で自白しているようなもんだろ!」


 ソンナコトナイヨー。




 四番湯に二人を下ろし、ほっとくんの使い方を説明してバイバイ。何か文句言っていたけど、疲れてるんだから、二人だけで静かに過ごしなよ。


 あ、着替えは作務衣を渡してみた。だって、二人とも着替え一つ持ってきてないんだよ? 信じらんない。これだから世間知らずは困る。


 下着はさすがに手持ちがないので、じいちゃんが自分用に作った奴を流用した。何で持ってるかと言えば、何かで預かってそのまま忘れていただけ。


 着替えとして十セットくらい渡したから、しばらくは洗濯しなくても問題ないでしょ。


 でも、こうなると各温泉に洗濯機を置いておいた方がいいかなー。洗浄浄化の術式を使えば、水や洗剤がなくても綺麗に出来るし。


 よし、砦に戻って早速作ってみよう。




 今まで洗濯機を作らなかったのは、ずばり必要なかったから。


 亜空間収納内で洗浄・浄化・修復をワンセットで使うので、わざわざ洗濯機を作るまでもなかったんだー。


 でも、私以外の人が温泉を使う時は必要だし、いっちょ作ろうかと。砦にも一台置いておけば、ユゼおばあちゃん達が使えるかな。


 ユゼおばあちゃんもジデジルも、浄化は使えるけど洗浄がいまいちだから。修復も無理だったし。なので、護くん洗濯機バージョンに全部任せられるようにしておこうっと。


 あ、じいちゃんにも専用で一台作らなきゃ。そうなると、温泉でも男性用と女性用の各一台ずつは欲しいね。


 組み込む術式はもう決まってるから、悩まなくてすむのは楽。形状は……まん丸にして、ドラム式洗濯機のようなドアを付けようか。


 中に洗濯物を入れて、スイッチ一つで術式発動。余分な機能を付けない分、見張るくん並に簡単に作れそう。


 本来なら、組み込む術式が一番大変なやつだよねこれ。浄化は普通の人では使えないし。


 む。まん丸だと転がるね。当たり前だけど。護くんや見張るくんのように、浮かせる必要はないから、台座でも作るか。


 手持ちの金属でちょちょいとまん丸を支える台座を作る。植木鉢なんかの台座みたいなやつ。それのちょっと丈夫めなのを。


「よし、出来たー」


 見た目は大きなボール。それに丸いドアを付けたら……やだ、目玉みたいに見える。


 いやいやいや、多分大丈夫。きっと誰もそんな発想しないはず。えーと、これの名前は……


「洗濯機だから、たっきくん? いやいや、何か語呂が悪いし洗濯機を連想しづらい」


 名前から、機能を連想出来ないと意味ないからね。って事は……


「洗う機械だから、あらいさん!」


 くん付けからは外れたけど、まあいいや。そしてやっぱり、検索先生から冷たい視線を感じるよ。実体ないのに!


 じいちゃん達に見せたら、何だか微妙な反応。どうして?


「何だか、巨大な目玉に見えるんじゃが……」

「そうねえ……本体が白で、扉部分が青いからかしら」

「ちょっと、不気味な気がします」


 やっぱり目玉か……


 仕方がないので、洗濯機らしく四角くしてみた。角は怪我をしないよう、ちゃんと丸める。ついでに扉も四角に。カクカクした見た目になりました。


「おお、今度のはいいのう」

「まあ、お茶のシミが付いた台ふきんが、あっという間に真っ白に」

「本当ですね! 泥汚れも落ちましたよ」


 今度は反応も上々です。ジデジルの泥汚れは、大聖堂建設で付いたらしい。あっちにも差し入れた方がいいかな。


 ユゼおばあちゃんに確認したら、作業で出た汚れを落とすのも、また神への奉仕に繋がるので、却下だそうな。難しいね。


 とりあえず、あらいさんは出来上がったので、各温泉に設置してこようっと。

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