第363話 ご招待
試食会は成功したので、ほっとくんはこの路線で行くことにする。なお、各温泉別荘に置くほっとくんは、外観のイメージに沿った料理を出すようにしてる。
一番から三番までは外観が日本家屋なので、和食中心。四番、五番は中近東……と言いたいところだけど、私がよく知らないので魔改造洋食を。
六番から八番は、イタリアンを中心に出す予定。だって、古代ローマのメニューなんてわかんないし。
『調べますか?』
いや、いいです。わかっても、口に合うかどうか疑問。というか、普通にイタリアンが食べたいです。
パスタ、ピッツァ、他にも肉、魚。おいしいよねー。
ほっとくんの外見も、出す料理に合わせてちょっと変更。基本のコック姿は四番と五番のみ。
一番んから三番は板さん風の外見に、六、七、八番は基本から少し変えたコックコートにしてみた。
まあ、ほっとくんを見せる機会はそうないと思うけど。厨房の奥に置いておくんだしね。
あ、配膳用のロボ……じゃなかった、自動人形? も必要だよね。やっぱりここは、可愛いウエイトレス風にするかな。
『ワゴンを魔法で動かせばいいのでは?』
珍しく味気ない事を言いますね、検索先生。
『給仕に興味はありません』
清々しい程の回答をありがとうございます。では興味のある私が作りますねー。
人間のように二本足で動かすのはバランスが難しいので、足下は四角くしてキャスターで移動するようにする。
上半身は、ギリギリ人形っぽく見えるかな、程度に。リアルすぎると下とのギャップでホラーチックになりかねないから。
うーん、人形っていうか、可愛い系のロボットの顔をモデルにしようか。デフォルメした目と口。表情は動かなくていいや。
あ、でもこれだと性別不詳な感じだな……。ま、いっか。これはこれで十分可愛い。
腕は可動域を大きくして、ワゴンと一体化した感じのボディにする。これなら安定感もあるし、移動も楽でしょ。
これを……各施設四体くらいでいいかな?
『倍の数にしておきましょう。運搬用と考えれば、更に倍でもいいかもしれません』
そんなに必要かな……。けど、検索先生が言うんだから、間違いはないでしょ。じゃあ、一施設に四体の四倍で十六体を。
「よし、完成ー。後は数を揃えるだけー」
十六体を八カ所分。計128体……結構多いな。まあ、護くんの総数よりは少ないか。
あっちこっちに作り続けていたら、予備も含めて三百体近くいるんだよね、護くんって。
温泉別荘に配備した分は、順次とーるくんと交換してるけど、それでも数が減る訳じゃない。休眠状態で収納の中に置いておくだけだから。
あ、給仕システムの名前、決めなきゃ。
「うーん……よし、女の子っぽくなくなったから、そのままきゅーじくんでいいや」
『……』
何か、検索先生から呆れた目で見られた気がするんだけど。気のせい?
これで一通り温泉関係は終わったかな。ほっとくん辺りは、砦にも一台置いておくべきかも。
砦に置くなら、お菓子もメニューに登録しておかないとね。あ、各ほっとくんには、和菓子や洋菓子のメニューも登録しておかなきゃ。
それと、亜空間収納内の食材の在庫チェックをする機能も、付けておこうかな。
でないと、知らないうちに収納内の食材が底着いた、なんて事になりかねない。コーヒー豆がなくなりかけていたのは、驚いたわ。
でも、当然かも。考えてみたら、そろそろローデンを飛び出して一年経つんだよね。ダガードに来たのは、もう少し秋が深まってた頃だったけど。
早いもんだなあ。
「……うん、砦一周年記念に、ちょっと豪華な料理をほっとくんに作ってもらおうかな」
自分で作るのは面倒だから、割と簡単なものばかり作ってたしね。ここは一つ、鳥の丸焼きとか作ってもらうのもいいかもしれない。
あと、記念のケーキも、ホールで生クリームとフルーツたっぷりにして。おお、何か楽しくなってきた。
いっそ、フォックさんやローメニカさんも招待しようかなー。でも、そうすると領主様に筒抜けになりそうな気が……
その辺りは、デンセットに行って相談してみるか。
と言うわけで、久しぶりにデンセットに来てみた。やっぱり門番の人が走って行ったから、大通りを歩いていればローメニカさんが迎えに来てくれるでしょ。
あ、やっぱり。
「ローメニカさん、お久しぶりです」
「本当に久しぶりな気がするわ。さ、行きましょ」
ローメニカさん、逃げたりしないから、連行するみたいに腕をがっしり掴むの、やめてもらえませんかね?
「で? 今日はどうした?」
いつもの通り、フォックさんの部屋に来て、開口一番これですよ。
「依頼探しに来たとか、思わないんですかねえ」
他にも買い物しに来たとかさあ。そういえば、最近あんまりここに買い物に来てないな。
いかん、地元にお金を落とさないと、経済が回らない。
「ここ最近、指名依頼以外受けてないだろうが」
「そういえばそうでした。街にはたまに買い物に来たりもしてたんだけど」
「それも、夏祭り前辺りから姿を見ねえって話だぞ?」
最近、砦の畑が調子いいからなあ。じいちゃんの土人形は働き者だし、肥料はいいし。温度管理は魔法で出来るし。
おかげで亜空間収納内の農作物は増える一方だ。消費人数が少ないってのもあるのかな。多くても五人と三匹だもんね。
しかも、夏祭りの最中はネレソールや王都でもあれこれ食材を買い込んでいたからなあ。今や亜空間収納内の食材は、かなりの量です。
「実はですね、お二人をちょっとした食事会にご招待しようと思いまして」
「食事会?」
フォックさんとローメニカさんが声を揃える。
「私、あの砦に住むようになって、そろそろ一年経つんですよ。で、そのお祝いというか、記念に内々の食事会というか、小さなパーティーを開こうかなって」
「絶対行くわ!」
ローメニカさんが、身を乗り出してきた。は、鼻息荒いですよ。落ち着いて。
「だって、砦のパーティーでしょう? 絶対おいしい食事とお酒が出るわよね!? 楽しみだわあ」
どうやら、以前渡した蛇酒の事が忘れられないらしい。あれ、フォックさんの疲労回復にって作って渡したものなんだけどなあ。
あ、ついでだから、温泉にもご招待しようか。日頃の疲れを癒やしてもらいましょう。
って事は、一泊コースだな。
「まだ詳細は決まってないんですけど、一泊する予定でいてください。都合のいい日にちがあったら、今教えてもらえると助かります」
私の言葉に、二人が顔を見合わせた。
「一泊って、砦にか?」
「ちょっと違います。疲れが取れて、美容にもいい場所があるんです」
「詳しく!」
ローメニカさんが食いついてきたね。
「今は詳細は伏せておきますね。でも、領主様やジジ様もお気に召していただきましたよ」
「ジジ様って……太王太后陛下か!? お前……なんつう方と知り合ってるんだよ……」
その辺りは領主様に文句を言ってください。あの人が引き合わせたんですから。
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