第358話 一掃しちゃおう

 早めに対策しなけりゃいけなかった盗賊問題は解決したので、次は魔獣一掃計画です。


 盗賊を浄化した翌日、再びおじいさん伯爵の領地に来てる。ここの山は普通の山だから、いる魔獣の種類も幅が広いんだって。


「いっそ山丸ごと網で覆って、一網打尽にしてしまいたい」

『魔力で網を作れば、いけるかと』

「マジでー? じゃあそれで行く!」


 網で掬って、窒息させればいっか。残酷なようだけど、人に害を為す存在だから、仕方ない。


 ……決して素材の為じゃないですよ、うん。


「ちなみに、この山の魔獣から採れる素材で、今私が必要としているものって、ありますか?」

『船関連は前回の採取で揃いました。この先となると、新しい温泉別荘の建築に使う素材でしょうか。様式が決まりませんと、必要資材も計算出来ません』


 う……が、頑張って決めます。設計から建築まで、検索先生におんぶに抱っこ状態だから、どんな様式に決めてもいいとは思うんだけどねー。


 あ、でもお風呂場のイメージは固まった。和風、ハマムとくれば、やはり外せないのはローマ風呂!


 といっても、じゃあどんなのよ? と言われてぱっと出てこないので、大理石の浴場で、大きな円形の浴槽のど真ん中に彫像を置いて、そこから噴水のようにお湯が出てくるようにしたい。


『了解しました。めぼしいイメージ画像を探してきます』


 検索先生さすが、仕事が速い。外観はどうしようね。ローマ風の建物って、どんなだ?


 現代のローマだと、歴史地区って古代ローマ時代よりずっと後の様式だしなあ。


 思い浮かべようとすると、ギリシャ神殿が浮かんでくるんだけど。何でだ?


『これはどうでしょう?』


 どれどれ? ……何だか、のっぺりした外観だね。でも、外観の奇抜さは他でもやってるから、逆にシンプルシリーズでいくのも有り?


『図の入り口部分も部屋がありますが、これを多柱室にし空間をすっきりさせて、雨水受けの浅い人工池までの空間を大きく取ります。その奥に浴室と休憩室を設ければいいのではないでしょうか』

「でも、それだと混浴にならない?」

『入り口で男女別にしてしまえばいいのです』


 なるほど。男性用の建屋と女性用の建屋は別にする、と。山だから土地はたくさんあるし、どうせ整地するから二つ同時に建設も問題なし。


 よし、これでいきましょう! あ、ついでに張っておいた網で魔獣が掬えたらしい。


 ちゃんとお仕事もしてますよー。


「おお、大猟」

『鹿型の魔獣が主ですね。他に猪型、ウサギ型、オオカミ型、モグラ型』


 モグラ? そんなのまでいたのか。


『他にも蜘蛛型、昆虫型、蛇、トカゲ、カエル』


 ここにもカエル? にしても、昆虫型の魔獣って、いるんだ。


『います。ただ、素材としては安値なので、好んで狩る者はいないようです』


 なるほどー……って、蜘蛛デカ! 私の身長くらいあるんですけど!?


『魔獣ですので』


 にしても、大きいでしょうよ。これも素材になる?


『内臓の一部が素材です。糸を作る器官がそれで、上質の絹糸のような糸が作り出せます。糸を紡ぎますか?』


 う……絹と聞くと、ちょっと興味が。なんでも、この蜘蛛型の魔獣の素材は、大きい個体であれば有る程いい糸が採れるそうな。


 そして、ここの個体はかなり大きい部類だそうです。繊維系を扱う商人が依頼して狩ってもらうのは、あれの半分ちょっとくらいの大きさなんだって。


 いや、それでも十分大きいけど。


『他に、鹿型は毛皮と内臓、角、肉。猪型は毛皮、牙、肉。ウサギ型は毛皮、肉、爪、牙。オオカミ型は毛皮、爪、牙、内臓の一部が素材です。他蛇は皮、内臓の一部、牙。トカゲは皮。カエルは内臓の一部、肉、皮』


 安値であっても、これだけ量があれば結構いい値段になるでしょう。これ、デンセットで買い取りに出せばいいかな?


『それでもいいですが、一部はこの領で卸すのはいかがでしょう?』

「構わないけど、どうして?」

『魔獣素材は転売に適した商品です。丸ごと買い取りに出せば、領の経済を回すことになるでしょう』


 あー、なるほど。じゃあ全部この領で売っちゃえ。


『その場合は、小分けにして出した方がいいです。一度に出すと、買い取るだけの資金がなく、買い取り側が諦める可能性が高いです』


 そっか。組合も予算があるもんね。んじゃあ、安値になりそうな昆虫辺りから売りさばくか。


 虫が嫌いだから、亜空間収納にもあんまり入れておきたくないんだよね。




 その後、細長伯爵の領や甲冑伯爵の領でも同様に魔獣を一掃し、それなりの素材を手に入れたー。


 鹿革は、加工して少し手元に置いておくんだ。何かで使うかもしれないし。あと、ウサギの毛皮も。これ、毛糸にも出来るんだって。


 そして何より山羊型。こいつの毛はいい毛糸になるそうな。以前手に入れたオオツノヤギを思い出すね。


 こっちの山羊型は蹄も固くて、キック力はオオツノヤギの三倍くらいだそうな。大きさは四倍くらいあるけど。


 いや、デカかった。そしてこの山羊の肉はおいしいんだって。と言うわけで、肉は砦で消費する事に決めました。


 近い地域だから、甲冑伯爵のとこはおじいさん伯爵のとこと同じような魔獣の分布具合だったなー。


 ええ、ここでも昆虫も蜘蛛も蛇もトカゲもカエルもいましたよ。カエル多いな!


 普通の蛇やカエルなら冬眠するんだろうけど、魔獣は基本冬眠はしないんだって。だから冬になると人里に下りてくるのか。


 畑の作物が一番の目当てらしいけど、家畜や、酷いと人も捕食対象になるので、危険危険。


 ま、今回でどこも一掃したから、大丈夫でしょう。


『魔獣は一定期間で再出没します』


 ゲームのリポップか!

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