第351話 バッグも作ろう

 翌日目を覚ますと、ログハウスの隣に石造りの堅牢な建物が建っていた。検索先生、夜なべして建てたんですか?


『私に睡眠は不要です』


 いや、そうなんでしょうけど……よく騒音で目を覚まさなかったもんだ。


『周囲に配慮して、遮音結界を張って建設しました!』


 気遣い半端ないっす。


 新しい建物は、幅はそれほどでもないけど、屋根裏部屋付きの二階建て地下室付き。温泉は地下部分に引き入れて、大浴場が作ってあった。


 風が強い地方だから、確かに頑丈な建物の方がいいかもね。連日風台風並みの強風が吹いてるよ。気を抜いていると飛ばされそう。


 あ、建物の窓ガラスはドラゴンの鱗だ。これ強いから、強風で石が飛んで来ても割れないからいいよね。


 これなら、建物の周囲に結界を張らずに済みそう。


『そろそろ、島ドラゴンのところで鱗を仕入れておいた方が良さそうです』


 もうそんなに使ったっけ。金ぴかドラゴンの鱗は、少し黄みがかっていて、日に当たると綺麗な金色になるんだけど、窓ガラスには向かないよなー。


 ログハウス風の建物の方は、亜空間収納に撤去。今度から、野営する際にはこのログハウスだそうかな。水回りはテントと同じようにしてあるし。


 新しい建物は窓が多くて室内が明るい。島ドラゴンの鱗は一枚が大きいから、窓に格子がいらない。なので、外の景色がよく見える。


 といっても、周囲は眺めるのには向かない景色だけど。風が強いから大きな木が育たないせいで、所々地面が見えている草原がせいぜい。


 たまに背の低い小さな木が、まばらに生えている状態かな。全体的に岩場が多い感じ。


 まあ、これはこれでいかにも「国外に来た!」という実感が持てるかも?




 新しい建物探索はすぐに終了させて、まずは朝食。それから朝の空の散歩。ここらは上空の気流も流れが速いから、ブランシュもノワールもちょっと戸惑っていたみたい。


 でも、すぐに馴れたのはさすがだなー。ほんの十分程度でもう普通に飛べるようになってる。


 私はじいちゃんと一緒に絨毯で飛んだ。もちろん、周囲を結界で覆っているので、強風もなんのその。


 一連のルーチンワークが終わってから、本日の採取物の発表でーす。


『本日はここからもう少し東にいったところにある湿地帯で、ミナミヌメリゴマの採取をします』


 ミナミヌメリゴマ? ヌメリゴマとは違うの?


『違います。ヌメリゴマより質は悪いですが、大型で強靱な布を織るのに適した植物です』


 ん? それって、船の帆? でも、帆にはヌメリゴマを使うんじゃなかったっけ?


『ミナミヌメリゴマの方が適していると判断された為、変更となりました』


 いつの間に……まーいっかー。じゃあ、そのミナミヌメリゴマを採取しに行きましょう!




 東の湿地は広大で、地平線が見える程。でっかいなあ。


「こりゃまた、広々としておるのう」

「本当だね。この湿原の、どこにあるのやら」


 検索先生が群生地をマップに記してくれてあるので、後はそれを頼りに移動するのみ。


 今回、移動は絨毯で行っている。湿地に生える草の背丈ギリギリで浮かべて、マップを見ながらゆっくり移動させた。


 でないと、足を取られて沈みかねないからねー。ブランシュとノワールは、湿地の入り口付近で待たせてある。


 飽きたら空を飛んでていいよって言ってあるから、そのうちまた上空に行くんじゃないかな。


 ノワールは大分前から体が大きくなって、飛ぶスピードも飛んでる時間も凄く長くなってる。


 ブランシュも大きくなってはいるんだけど、グリフォンの成長の方が天馬よりも遅いらしくて、ブランシュはまだまだ成長途中らしい。


 結構大きくなったんだけどなあ。まあ、親グリフォンも大きいから、ブランシュも大きくなるんでしょ。


 それに、白いグリフォンは王となる個体だっていうからなー。でも、マクリアも白だよね? どっちがグリフォンの王になるんだろう。


『前方に、ミナミヌメリゴマの群生地です』


 おっと、考え事をしていたら、採取物の近くまで来ていたらしい。どれどれ……って、でっか!


 草で覆われた湿地の中で、ミナミヌメリゴマだけ背丈が違う。こりゃわかりやすいわ。


「じいちゃん、これらしいよ」

「ほう、こりゃ見つけやすいわい」


 じいちゃんも同じ事考えるんだね。手分けして、ミナミヌメリゴマを刈る。茎もヌメリゴマより太くて頑丈そう。


 この茎の部分を蒸してから水にさらすと繊維が取れるんだって。で、その糸で織ると丈夫な帆布になるらしい。


 あ、その布でバッグを作るのもありじゃね?


『では、少し多めに採取しておきましょう』


 そーですね。亜空間収納内で糸にしておいてもらえれば、後は好みの布に織ればいいし。


 機織りも、魔法で出来るんだー。ビバ魔法。ミシンがけも魔法で代用出来るしね。


 そうでなければ、裁縫大っ嫌いな私がバッグ作ろうなんて言い出さないよ。




 予定より多く採取出来たので、本日はこれにて終了。さー、石の家に戻って温泉だ温泉。


 結界を張っているので強風にはさらされていないけど、常に魔法を使い続けているのでそれなりに疲労はしてるんだ。精神的に。


 いわゆるマジックポイント的な面で言えば、私の保有ポイントって通常の人より桁違いに多いそうだから、早々魔力枯渇に陥ったりはしない。


 一応、邪神再封印の前にじいちゃんに鍛えてもらったからね。伸びしろはあったけど、最初から何でも出来た訳じゃないんだから。

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