第328話 お仕置きされたんだって
芝居を見終わって、周囲の屋台なんかもひやかして、さてそろそろじいちゃん達と合流しようかという時間。
時間はそろそろおやつの時間。いやあ、何かあったらじいちゃんから連絡くると思ったから、好き勝手に過ごしていたわー。
「サーリ、そろそろみんなのところに行きましょうか」
「そうだね」
ミシアもそう思ってたか。でも、ここからどこへ行けばいいんだ? やぱり、ユゼおばあちゃん達が行くって言っていた、聖堂かな?
今日は領主様のお屋敷に泊めてもらえるそうなので、最終的にはそっちだけど。
「ミシア、どこで待ち合わせとか、聞いてる?」
「いいえ? サーリが知ってると思っていたわ」
……ダメじゃん。
仕方がないので、じいちゃんに連絡してみた。
「じいちゃーん、今どこー?」
『おお、芝居見物は終わったかの? わしらなら、これから領主殿の屋敷に向かうところじゃ』
「じゃあ、領主様のところに行けばいいんだね?」
『そうじゃな』
「わかったー。じゃあねー」
よし、このまま領主様のお屋敷にゴーだ。
「コーキアン辺境伯のところ?」
「うん、そうだってさ。……ここから領主様のお屋敷って、どう行けばいいんだろう?」
「地元の人に聞いてみればいいわ。自分とこの領主の屋敷くらい、知ってるでしょ」
なるほどー。叔父さん大公の領都でも、そんな感じだもんね。いや、あの時はミシアに手を取られて、周囲もよく見ないまま拉致られたんだっけ。
「何? 私の顔、何かついてる?」
「ナンデモナイヨー」
「怪しいわ」
何でミシアってこう、勘が良いんだろうね?
あの後、地元の人がやってる屋台でお屋敷への行き方を聞き、領主様のお屋敷へ。広場からは、割とすぐでした。
門の前で止められるかなー? と思ったけど、それはなかった。
「ミザロルナ姫と、サーリ殿ですね。主様より承っております」
おお、さすがだなミシア。余裕の笑みで門番さんに「ありがとう」なんて言ってるし。そうしてると、本当にお姫様みたいだよ。あ、本物か。
お屋敷の中に入ってからは、メイドさんに案内されて進む。通された先は、広くて居心地の良さそうな部屋だ。
でも、置いてある調度品はお高そう……
「お帰り、二人とも」
「た、ただいま?」
半疑問形になるのは、仕方ない事だと思うんだ。
「芝居見物は楽しめたかい?」
「ええ、とっても!」
あー、私は微妙でした。大分美化されていたからなあ。何あの「家族を人質に取られて仕方なく悪事に手を染めました」な悲劇のヒロイン。
本物の悲劇のヒロインである王太子妃は、適当な描写だったくせにな。てかあの王太子妃、誰がモデルなんだろう?
私でない事は確か。だって、あんな大仰に人前で泣くような事、した事ないもん。
ただ、気になってるのは、ティアラを王太子に投げつけるシーン。あれ、私やったよね? あの時あの場にいた人なら知ってるけれど、芝居を書くような人が、どうしてあのエピソードを知ってるんだろう。
よもやあの芝居、ナシアンの工作だったりして。……ないか。あの芝居の中では、ナシアンは悪い国って描写されてたしな。
プロパガンダで作った芝居なら、自分達はいい国って描くだろうよ。
「何だ、サーリは芝居、楽しめなかったのかい?」
「え? いえ、そんな事は……」
いっけね。ミシアが領主様に芝居の話を熱心に語っていたから、つい自分の考えに没頭してたわ。
「あ、じいちゃん達は、どうだった? 聖堂に行ったんだよね?」
何しに行ったのかまでは聞いてないけど。てか、もしかして、聞いちゃいけない事だったかな?
だって、じいちゃんとユゼおばあちゃんとジデジルが、三人で目線を合わせて微妙な表情をしてるよ。
領主様を見れば、何やら苦笑してるし。
「えーと、何かあったの?」
「まあ、またしても教会内が腐敗しておった、というところじゃな」
またかよ! 本当にもう、ちょっとここの浄化は強めにしないとダメかもね。
「ほほほ、いけない事をした者達は、ちゃんとお仕置きしておきましたから、大丈夫よ」
ユゼおばあちゃん、何が大丈夫なのか聞いてもいい? お仕置きって、一体何やったの?
隣でジデジルが凄くいい笑顔でこっちを見てくるし。何だろう、あの「褒めて」って顔は。
じいちゃんはもう聖地とは関係ないし、ユゼおばあちゃんも引退した身。現役はジデジルだけで、しかもまだ総大主教の座にいる。
お仕置きは、ジデジルが主導でやったんですねそうなんですね。あ、いや、内容まではいいから。
聞かないって言ってるでしょおおお! そんな嬉しそうな顔で何やったか、報告しないでええええ。
結局、司教と司祭以下助祭に至るまで、聖堂の前で公開説教したそうですよ。しかも、地べたに素足で正座までさせて。
そういや、前に行きすぎた行動をした際、ジデジルを正座させて説教したっけね。その時の事、憶えてたんだ。
いずれにしても、人前で恥かかされた司教達は、この後聖地に送られて修業のやり直しだそうだ。
次の司教が赴任する前に、とっとと浄化をしておかないとなー。
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