第322話 あ、あれもやっておこう

 朝のルーティンワークを終えて、それぞれが仕事なり勉強なりに散っていく。


 そして私は、ポイント間移動で四番湯へ。今日はブランシュとノワールも一緒だ。


「久しぶりに、私達だけだねー」

「ピイピイ」

「一緒、一緒」


 二匹も嬉しそう。最近はなんだかんだと留守番させる事が多かったからね……


 朝の散歩は欠かさず一緒だったんだけど、夕方とかは私が参加出来ない事も多かったしなー。


 そんな二匹と、新しく建てたばかりの四番湯で昼間っから温泉三昧。いやあ、極楽極楽。


 ちなみに、二匹は専用のお風呂に入ってる。幻獣だからいいのかもしれないけど、一応四番湯は私以外にも入るからね。


 中央の大きな浴槽の脇に、幻獣用のちょっと小さめ浴槽が作ってある。ブランシュとノワール、それにマクリアも入る事を想定して、少し深め。


 マクリアには、ちょっと深すぎるかもだけど、ちゃんと浅い部分も作ってあるので、多分平気。


「あー、気持ちいいー」

『日々の疲れが癒やされますー』


 ……すみません、検索先生を疲れさせてるの、確実に私だよね。色々頼んでばっかだからなあ。


 湯上がりには、中庭で一息。瓶入りのイチゴミルクを飲んで、空を見上げる。二匹は体を魔法で乾かした後、小さくなってベンチでごろり。


 本来の大きさだと、もうブランシュは象みたいな大きさだし、ノワールも普通の馬よりずっと大きい。


 お風呂は本来の大きさで入れるようにしたけど、ベンチもそのくらい大きくした方が良かったかな。


 北の夏は短いっていうから、しばらくは四番湯に通うのもいいかもね。良い感じに仕上がったのがわかったから、今度はじいちゃん達と一緒に来よう。


 フィアさんも来られるよう、叔父さん大公に道とか教えておかないとなー。何はともあれ、南の温泉は無事出来上がりました。




 さて、既に初夏という季節でもなく、そろそろやる事を考えないと。


「うーん、南はこれで終わったから、次は西の温泉を開発するか、それとも船造りの下準備に入るか」


 それともこっそり向こうの大陸に行って、バニラとカカオを探すか。ポイント間移動を使って朝行って夕飯までに帰れば、問題ないと思うんだけど。


 検索先生からは『まだ時期じゃない』って言われるし。


 デンセットに行って、依頼でも受けてこようかな……


 あ、そういえば、もう少し南の方で、地下に瘴気が溜まっていた地域があったよね。それが原因で、あの魔法士がおかしくなったんだし。


 あれ、自然になったんじゃなかったよね?


「検索先生、地下に溜まった瘴気の事で、何かわかる事はありますか?」

『検索中です。しばらくお待ちください……ヒットしません』

「え?」


 ヒットしない? 検索先生が? 何か、おかしくね?


『再度実行します……ヒットなし。再度実行します……ヒットなし。検索ワードを変更、検索を実行します……ヒット』


 おお!? 一体、何をどう変えたらヒットしたんだ?


『地下の瘴気で検索した際にはヒットしませんでしたが、人為的な瘴気の操作で検索したらヒットしました』


 って事は、やっぱりあの瘴気は誰かがわざとあの場所に誘導して貯め込んでいたって事だね。


 でも、誰が?


『今回ヒットしたのは、瘴気の操作方法そのものです』


 瘴気って、操作できるの? だったら、北の瘴気もどうにか……って。


「待って待って。その方法、使えるのは、どんな人達?」

『教会関係者です』


 ですよねー!? 瘴気をあれこれ出来る技術って、基本教会しか持ってないもんねえ!? つか、門外不出にして稼いでたしな!


 その教会の連中が、地下に瘴気を貯め込んでいたって事は、嫌な予感しかしない。


『その瘴気を街に蔓延させ、浄化という名目で料金を取っていたようです』


 何と言うマッチポンプ。しかも地下に貯めておけば、いつでも好きな時に瘴気を地上に持ってこられるから、便利程度に考えていたそうな。


 地下でも、瘴気の影響はわずかながら地上ににじみ出てくるのに。


『瘴気を扱っていながら、その危険性に気づかなかったのでしょう』


 バカにも程がある。これ、ユゼおばあちゃんやジデジルにも教えておいた方がいいかな……


 あ! 神罰申請!


『瘴気を操っていた者達を対象に、神罰申請を行いますか?』


 もちろん! こういう事なら、気兼ねせず申請出来る。


『申請受理後は、破棄出来ません。また、審査の結果、神罰が妥当と判断されない場合は、申請者に神罰が下る場合があります。よろしいですか?』


 え? マジで? 軽々しく神罰申請するなって事なんだろうけど……


 うん、今回は瘴気を操って多くの人に影響を与えただろうから、申請します!


『了解しました。神子による神罰申請を受け付けます。……審査結果が出ました』


 早!


『審査の結果、神罰は妥当であると認められました。これより、神罰執行に入ります』


 今回の神罰は、どんな内容なんだろう。


『強制改心まで、カウントダウン開始。十、九、八……』


 おっと、今回も強制改心か。そういえば、聖地で汚職をしていた聖職者も、強制改心の神罰だったっけ。


 神様に関する事で悪い事をすると、重い神罰が下るという訳だね。これで悪巧みする人がいなくなればいいけど。


 多分、いなくならないんだろうなあ。

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