第321話 アレンジ

 昨日のタルトはなかなかの出来になりました。そして本日、やっと南の温泉に手を付けられる。


「さて、ではいつものように土台からいきましょうか!」


 あ、その前に、周囲には魔物避けの結界を。後、物理的に侵入出来ないように、堀もね。


 今回はハマム風なので、庭はなし。その代わり、中庭を作る予定。イスラム風の建物って、中庭が印象的だよねえ。


 地ならしをして、土台を築いたら基礎を。その上に石材とドラゴンコンクリートでちゃちゃっと建物を作る。


 砦で散々やったからか、大分慣れてきたなあ。……これを慣れるって、どうなの?


 まあ、私は魔力供給が主で、面倒臭い計算とかは全部検索先生が請け負ってくれている。感謝感謝。


 外観はタイルで装飾。あ、中庭もタイル。そして内装もタイル多用。全体的に青のグラデーションで仕上げてみた。


 まあ、ルリイロトカゲの色を使ってるからねー。緑の中の青いハマム。いい。


 中庭には噴水。下もタイル張りにして、木製のベンチを置く。中庭は円形じゃなく、八角形にした。


 そして、メインのお風呂場です。


「うーん……何かイメージがローマ風になりそう」


 石材で作る大浴場。周囲は柱とアーチで装飾を。大きな浴槽を中心に、小さな浴槽を周囲に配置する。ここも、上から見たら八角形だね。


 各角のところに、小さい浴槽を配置してる。ここは、一人用だなー。ここまで来たら、この一人用の浴槽も八角形にしよう。


 一人用と言っても、大きさ的に三~五人は楽に入れそう。そこに一人で入る贅沢さ。うん、やっぱりこの建物的には、贅沢さは正解って事で。


 色々細かいところの装飾は検索先生任せ。見たら、個人用の浴槽が置いてあるスペースの壁の装飾、八つ全部違うよ。


 芸が細かいですなあ。


『温泉の為なら、いくらでも労力は惜しみませんとも!』


 通常運転の検索先生でした。


 朝からやってるからか、大体のところは出来上がった。


 この山奥なら誰にも迷惑かけないだろうと、思いっきり魔力を使ってドラゴンコンクリートを乾かしてるので、出来上がりが早い早い。


 ちなみに、ここはアメデアン領との境にある方。もう一つ、北にあるところのも作らないとなー。


 こことデザイン一緒なら、建てるの楽そうだよね……


『変えます』


 そうですか……いや、止めません。魔力供給は任せてください。




 アメデアン領との境の方……こっちを四番湯とした。んで、北が五番湯。四番湯の方がほぼ出来上がったので、お昼休憩の後は五番湯の方をやる。


 あ、旧ザクセード領から四番湯までの道は、ちゃんと作ったよ。今は山の周辺に作った堀の橋を上げているので、誰も通行出来ないけど。


 ……これ、私がいなくても橋の上げ下げが出来るようにしないと、フィアさんが気軽に来られないよね。


 よし、四番湯にも五番湯にも護くんを配置するから、来場許可のパスでも発行して、それを護くんが感知したら通行出来るようにしよう。


 多分、これが一番簡単なはず。


「という訳で、五番湯もちゃっちゃと作っちゃおう!」


 改めて、魔法って、本当に便利だよねえ。




 五番湯は外観こそ四番湯と似通っているけれど、中身が大分違う。なんとここ五番湯には、岩盤浴を入れたのだ。


 四番湯では大浴場とした場所が、岩盤浴になってる。で、周囲に等間隔に配置した浴槽は、今度は全部丸。


 上から見たら、八角形の角が全部丸になって見えるだろうね。


 そして、こちらにも大浴場はあるんだけど、それが地下……というか、岩盤浴のあるフロアよりも下に作った。


 ワンフロアぶち抜きで、広いプールのような浴槽になっている。これ、絶対泳ぐよね。


 こちらも周囲を柱で囲んで、その上にはアーチの装飾。上の方にある明かり取り用の窓から差し込む光が、なんともいえない幻想的な風景を浮かび上がらせる。いいねえ。


 こちらも青のグラデーションのタイルで装飾しているんだけど、四番湯より、全体的に濃いめ。


 そして、こっちには個室ではなく大きな休憩所を設けた。その代わり、中庭はなし。


 四番湯は個室を多く作ったからこその中庭だからねー。


「うん、向こうとはまた、違うイメージの建物になった」


 これはこれで良し。なんだかんだで、今日一日で両方出来ちゃったよ。いやー、魔法って本当に素晴らしいね!




 砦に帰ったのは夕飯の時刻の少し前。今日はジデジルが料理当番の日。何が出てくるんだろー。


 ここ最近、砦では料理当番なるものが出来ました。といっても、私とジデジルとユゼおばあちゃんの三人で回してるんだけど。


 じいちゃんは自他共に認める料理音痴だし、ミシアはまだまだ未知数なので除外。今は各当番のお手伝い要員になってる。


 しかし、いいのかねえ。大公のお姫様に手伝いなんかさせて。


「いいのよ、私がやりたくてやっているんだから。ちゃんとお料理出来るようになったら、私も当番に加わるわよ!」


 わー、凄い野心ですねー。彼女が当番に入る日は、果たしてやってくるのかねえ。


 その前に、変なアレンジ精神を消滅させてほしいものだ。ミシアのは、大抵失敗するんだもん……


 まあ、それも料理の基本を憶えていく課程で、大分矯正出来てるみたいだけどね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る