第311話 お願い!!
一番湯の前に、見知った人達大集合。一部初めましての人もいるけど。そして一番問題なのは、この人。
「どうしてここに?」
「こっそり王宮に行ったら、母上に捕まってねえ」
そのままここに連れてこられたそうだ。ジジ様……
「ミシアも来ると聞いたし。ああ、久しぶりだねミシア」
「お父様! 元気だった? 寂しくなかった? ちゃんとご飯食べてる?」
「ミシアは心配性だなあ」
なんか、親と子が逆転していないかね? まーいっかー。あっちではユゼおばあちゃんを囲んで、挨拶合戦が始まってるし。
退いたとはいえ、元教皇という立場はやっぱり凄いんだね。
「この場だけで、偉い人間が揃っておるのう」
「本当だね」
じいちゃんと二人で端っこの方に行っておく。そこに、叔父さん大公がミシアと一緒に来た。
「サーリ、ミシアに聞いたんだけど、グリフォンと契約したって、本当かい?」
「本当ですよ。ミシアが凄くかわいがってます」
ちなみに、本日マクリアはブランシュ達とお留守番。ノワール曰く、ここでしっかり躾けておく、そうな。
何を躾けるんだろう?
叔父さん大公は何やらあわあわしてるけど、そんなに心配する必要ないよ。隣にいるあなたの娘はけろっとしてるでしょ? 大丈夫大丈夫。
今回はお付きの人なんかも一緒に来たので、結構な大所帯。これ、何人いるんだ? お弁当、足りるかな……
「どうしたんじゃ? 考え込んで」
「うーん、お弁当、足りるかなあって思って」
「大丈夫じゃろ。向こうさんは向こうさんで持参してきておるぞ」
「あ、そうなんだ」
じゃあ平気だね。
温泉はさすがに男女別れて入ります。叔父さん大公、やけににこにこしていたなあ。銀髪陛下の方は、ちょっと微妙な表情だったけど。
こちら女子組はジジ様とユゼおばあちゃんが、露天風呂で良い感じに溶けてます。二人とも、お疲れなのね。
「ああ……染み入ります……」
「ジデジルも大聖堂建設や、教会の不良聖職者の一掃なんかで疲れてるもんね。ゆっくり癒やしていくといいよ」
「ありがとうございますううう」
私とジデジルとミシアは、大きなガラス窓が特徴的な内風呂。天井を高く作ってあるので、閉塞感はない。これはこれでいいよねえ。
「ミシアさん、今日は静かですね」
ジデジルの言葉に、隣のミシアを見ると、確かにいつもよりちょっと元気がない。
あれ? 叔父さん大公と会っていた時は、そんな事なかったのに。
「ミシア、どうかした?」
「……あのね。サーリは、遠いところでも、あっという間に行ったり来たり出来るでしょ?」
ギク。ポイント間移動、バレてないよね? 思わずジデジルと顔を見合わせる。
「お母様、ここに連れてこられないかしら?」
またしても、ジデジルと顔を見合わせてしまった。
そういえば、ミシアのお母さんって、病気療養で他国にいるんだっけ。
「うーん、連れてくるだけなら出来ると思うけど……」
「お父様の許可は私が取るから! だから、お願い!!」
ミシアが必死に頼み込んでくる。そりゃそうか。お母さんの事、心配だよね。
「……じゃあ、大公殿下の了解が取れたら……ね」
「ありがとう!!」
そのままミシアは笑顔のまま、ジジ様達のいる露天風呂の方へと向かった。残ったのは、ジデジルと私だけ。侍女様方は、露天風呂の端の方にいる。
「よろしいんですか? あのような約束をしてしまって」
「問題あるなら大公の方で待ったがかかるでしょ」
「そう……ですね。ところで、大公妃の病気というのは……」
「詳しい事は聞いていないから知らないんだ。ただ、病気療養の為に、他国にいるってだけで」
「そうですか……」
ジデジルも、その辺りが心配なんだろうなあ。
病気療養の為だけに、他国に行くってちょっと普通じゃない気がする。療養先なんて、国内にもたくさんあるだろうし。
ただ、ミシアのお母さんって、身分が低い人だったらしいから、色々問題があるって言っていたっけ。
国内で療養していられない状況だったのは、大公領が襲撃される直前だったからわかってるけど。
他にも、事情があるのかな。
湯上がりには、みんなでイチゴミルクを。腰に手を当ててぐいっと飲む!
ぷはー。これこれ。
ちなみに、男性陣は冷えた麦茶を用意している。やっぱり、甘いものは女性陣にって思うよね。
浴衣に着替えて部屋へ。男性陣は先に上がっていたみたい。
「遅いぞ。いつまで入ってるんだ」
「ゆであがるまでですー」
いつまで入ってても、いいじゃないの。銀髪陛下はうるさいなあ。言い返したら、何かもごもご言ってるし。それを見て、ジジ様が溜息を吐いてる。
「お父様!」
ミシアは早速許可をもらいに、叔父さん大公のところへ。部屋の端で小声でやり取りしている。
様子を見ていたら、最初は笑顔だった大公が、一気に真顔へ。そして、眉間による皺。
あー、これ、ダメっぽい。
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