第309話 道作り

 二番湯も三番湯も、基本山の中にある。なので、平地からそこまでの道がないと、普通の人は入りづらい。


 という訳で、今回は「馬車でも入れる道を作るぞ」計画発動です。幅や傾斜を考えて、道を作っていく。まずは二番湯から。


 まずは邪魔な木を伐採……ではなく、そのまま亜空間収納に放り込んでいく。根っこごと。枝を取り除いたり乾燥させたりは、収納内でやるからいいや。


 何かの材料に使えないような木は、全部乾燥させて薪にする。ええ、捨てませんとも。


 枝とかも、細かく砕いてペレットにして燃料に。この辺りは、大聖堂建設予定地に寄付する予定。漆喰を作るのに、火を使うらしいんだ。その燃料に。


 木を抜いた後は、土を均して整えて、圧縮して崩れにくくする。その上から、石材を薄くスライスして敷いていく。


 敷いた石を固定するように、コンクリートを使って固めていく。ドラゴンコンクリートを使っているので、耐久性は高いぞー。


 コンクリートは、魔力を使って瞬時に乾かしていくので、乾燥を待つ必要なし。はっはっは、どんどん道が出来ていくぞー。


 午前中の間に、大体三分の一が出来上がった。この調子でいくと、明日の午前中には二番湯までの道が出来上がりそうだなー。順調順調。


 お昼を食べに砦に戻ると、ちょうど午前の修行が終わったミシアとじいちゃんが角塔に入るところだった。


「サーリ、どこに行っていたの?」

「二番湯に、道を作りに」

「え?」


 ミシアが訳がわからないって顔をしている。そんなに変な事、言ったかな?




 本日の昼食は魚。湖で採れた新鮮な魚を油と香草を使ってオーブンで焼き上げました。いい匂い。


「ただいま戻りましたー。あ、いい匂いですねえ」


 匂いに釣られたように、ジデジルも戻ってきた。あれ? ユゼおばあちゃんは?


「ユゼ様は、デンセットの教会に向かわれています」

「そうなんだ。お昼には戻るの?」

「いえ、あちらでいただく予定だとか。お戻りは、夕食前になりそうです」


 そっかー。じゃあ、お昼はこのメンツだけでだね。


 本日の昼食時の話題は、私が現在やっている道作りになった。


「ほう、では、明日の午前中には出来上がりそうじゃの」

「うん、二番湯はそれでいけると思う。三番湯も続けてつくるから」

「入り口に、門でも付けておかないと、不審者が入り込む可能性があるのではありませんか?」

「その辺りは、護くんを置いておくから、大丈夫だと思うよ」


 ヘタな柵や門を設置するより、防犯対策になると思うんだよね。これにはジデジルだけでなく、じいちゃんも頷いている。


「……さっきから、普通に道を作るだのなんだのって言ってるけど、確か温泉って山の中じゃなかったかしら?」

「そうだよ」

「それを、たった二日で終わらせるって……」

「この砦だって、修繕するのにそんなに日数かけてないよ? まあ、素材集めに時間はかかったけどさ」


 それに比べれば、道くらいチョロいチョロい。じいちゃんもジデジルも、うんうんと頷いているじゃない。


 なのに、ミシアはあんぐり口を開けている。お姫様がする顔じゃないよー。


「……改めて、とんでもないところに来た気がするわ」


 どういう意味かな? それは。




 昼食の後、少し食休みして再び山へ。今日はもう夕飯の時まで砦に戻るつもりはないから、お茶菓子だけ食料棚に入れてきた。


 今日のおやつはシンプルにクッキー。今度はこのクッキーを使って、レアチーズケーキを作る予定。ベリーも入れて、彩り豊かにしてもいいかも。


「さーて、じゃあ続きをやりますか」


 と言っても、私は魔力を提供するだけで、あとの諸々の作業を計画、遂行するのは実は検索先生だったりする。


 ええ、張り切ってますよ。新しい温泉への一歩ですからねえ。


『この工事が終われば、南に手を付けられるんです。ですが、二番湯、三番湯もいいお湯ですし……悩ましいところですね』


 もはや、何も言うまい。私は野営用のテントを出して、のんびり過ごしつつ山の様子をスキャンしてみた。


 この山は、やっぱり魔獣はいないみたい。魔獣のいる山と、いない山で何が違うんだろう?


『土地の持つ魔力量の差です。この辺りは幾分、魔力量が少ないようです。そのせいで、魔法植物は殆どなく、あるのは普通の植物のみです』


 そういう差かあ。って事は、旧ザクセード領の二つの山は、魔力量が多いって事なんだね。……だからトカゲがいたりするのか。


『魔力量は、湧出する温泉にも影響が出るようです。二番湯、三番湯よりも、一番湯の方が魔力の回復に適しています』


 そうなの!? 知らなかった……あ、じゃあユゼおばあちゃんの疲労に効くのは、一番湯の方って事?


『必ずしもそうとは言い切れませんが、前教皇は魔力的にも疲弊している状態ですから、しばらくは一番湯の方で養生をお薦めします』


 うーん。道が出来たら二番湯とかにも招待しようと思っていたんだけどなあ。しばらくは、一番湯で我慢してもらおうか。


 あ、一番湯が魔力回復に向いているなら、旧ザクセード領の二カ所の温泉も、そうなのかな? どっちも魔力量が多いんだよね?


『そこは一度調べてみないといけません。という事で、早く掘って早く入って確かめましょう!』


 は、はい。でもまずは、目の前の道作りを終えてからですねー。

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