第302話 トカゲ皮は大人気なんだって
狩りが終わったので、必要な素材だけ確保して、残りは組合に卸しちゃえ。ルリイロトカゲの皮と爪と牙。
オオツノヤギは、角が欲しい素材だったけど、肉は美味しいというので売るのはやめて、毛皮も確保しておくことにした。
いい毛糸になるんだって。
『保温性、保湿性に優れているので、冬場の衣類や寝具に使われます』
検索先生にそう言われたので。この毛で何作ろうかなあ。
で、いつもの通り、デンセットの組合へ。街の門を潜ろうとしたら、門番さんに声をかけられた。
「お。しばらくぶりだな」
「えへへ」
そんなに久しぶりだったっけ? んー……カエル以来かな? まあいいや。
大通りを組合へ向けて歩いていたら、先の方からローメニカさんが走ってくる。何で私が来たってわかるんだろう?
「サーリ!」
「あー、ローメニカさん、お久しぶりで――」
「本当よ!」
え……何か、ゴメンナサイ。
いつものように組合長室まで連れて行かれ、フォックさんの前に座らされる。
「で? 今日は何を持ってきた?」
素材を持ってきた事前提なんだね。
「依頼を受けに来たとは思わないの?」
「ジンド様からの指名依頼で懐は潤ってるだろ? 前のカエル肉の時も相当いい報酬を出したし。依頼を受ける必要、あるのか?」
「ないですね」
「だろ?」
なるほど、そういう事から推察するのかー。
「えーと、ルリイロトカゲの皮と牙と爪を持ってきました」
素直に申告したら、フォックさんとローメニカさんが目を丸くして驚いている。もしかして、珍しい素材だった?
『ルリイロトカゲは魔法士でなければ狩れません』
なるほど。物理攻撃だけじゃあ難しい魔獣だったんだね……。目の前で、驚きから復活したフォックさんとローメニカさんが、同時に溜息を吐いた。
「そういや、サーリは魔法士だったな……」
そんな、何を今更。
とりあえず、持っている数を申告し、またしても二人に驚かれつつ、無事に売却完了。結構いいお値段になりました。
ルリイロトカゲの皮、貴婦人や富裕層の女性にバッグの素材として大人気なんだって。なので、素材だけでもかなり値上がってるんだとか。
地球世界でも異世界でも、女性の欲って怖いね。いや、私も女だけど。
素材は集まったので、亜空間収納内でタイル作り。凝った柄はデザインが難しいので、検索先生が地球世界からパク……探してきてくれた図案を元に、柄を作ってくれる。
植物を図案化したものが多いみたいで、草花や蔓植物を単色で描き出す。色を複数使ってもいいんだけど、今回は青のグラデーションを作る予定。
ルリイロトカゲの染料は、魔力の入れ方によって色の濃淡が出るらしいよ。
タイルはこれでいいし、他の建築資材もあらかた亜空間収納内のもので事足りる。
あ、マクリアの事と旧ザクセード領の北の温泉の周辺の土地の事、王宮に行って伝えてこなきゃ。
出来たら、温泉の出る周辺の土地は購入したいなあ。それも含めて相談って事で。
まずは……手紙はジジ様宛がいいかな? 先にミシアとマクリアの契約を伝えた方がいいよね。
んじゃ、ジジ様宛……っと。王宮に、領主様もいるといいな。領主様に話を通した方が、早くすむと思うんだよね。
手紙を飛ばし、ほうきでゆっくりと王都へ向けて飛ぶ。あ、まだお昼食べてないや。面倒だから、飛びながら食べるか。
亜空間収納の中には、食材も多く入ってるけど、屋台とかで買った料理やパンなんかもたくさん入ってる。結構食べたと思ったけど、まだまだ残ってるなあ。
簡単に、パンに切り込みを入れて、焼き肉を挟んで肉サンド。本当なら葉物野菜とかはさみたいところだけど、何せほうきに乗ったままだからね。贅沢言えない。
飲み物はデンセットで買った香草茶。煎れて冷やしておいたもの。さっぱりしてるから、食事にあうんだよね。
食べながら飲みながら、のんびり空の旅。このところ、急いで移動するばかりだったから、こんなにのんびり飛ぶのは久しぶりかも。
王宮奥宮の中庭に下りると、既に出迎えの侍女様がいた。今日はヤーニ様。
「いらっしゃい、サーリ」
「お邪魔します」
ヤーニ様に先導されて、奥宮を行く。おしゃべりの話題は、今準備段階に入っている旧ザクセード領の温泉だ。
ヤーニ様も、温泉には大変興味がおありらしい。
「では、今度の温泉の建物は、少し趣が変わるのですか?」
「はい。出来上がりましたら、ヤーニ様も皆様と一緒にぜひどうぞ」
「ありがとう」
ジジ様や奥宮の侍女様達にはお世話になってるからね。ご招待くらいしますとも。
いつもの部屋に通されると、何故か領主様も銀髪陛下も剣持ちさんもいる。あれー?
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