第301話 狩りのお時間です

 検索先生のナビで来たのは、山の中でも北の方の谷底。日陰でじめっとしている沼地だ。


 そして、上からでもわかる程、びっしりとトカゲトカゲトカゲ。


「……ってか、あれ本当にトカゲ? どう見ても青いワニ――」

『ルリイロトカゲです』


 あくまで、トカゲなんですね……名前にルリイロと入るだけあって、上から見てもわかる程青い。そしてでかい。


 あれ、体長どんくらいあるんだろう?


『あの場で一番小さな個体でも、五メートル超えです』

「デカ! そんなでかいワニ、捕まえないといけないの!?」

『そうです。今回のトカゲは、内臓が非常にデリケートなので、電撃は使用しないでください』


 なんと。検索先生曰く、染料に使う内臓が、熱に弱いらしい。そういう事は、先に教えてくださいよ、もう。


 魔獣とは言え生き物。呼吸をしなくちゃ生きていけない。なので、電撃がダメなら、窒息だ。


 ワニに見えるトカゲを、一匹ずつ結界で囲む。それだけ。ただし、この結界は普通のものとはちょっと違っていて、何にも通さないようになっている。


 もちろん、空気もね。沼地に群がるトカゲ達は、最初は異変を感じ取ってジタバタ動いていたけれど、次第にもがき始める。


 うーん……ここから眺めているだけでも、地獄絵図。でも、魔獣だから。人に害をなす存在だから。


 それに、いい素材をくれる存在だから。


『ルリイロトカゲの素材は、皮と牙、爪と一部内臓です』

「肉はさすがに食べないんだ」

『毒があるので、食用には向きません』


 おうふ。毒かあ。そういえば、そのまま食べると毒だけど、あの手この手で食べられるようにするのは、日本人、得意だよね。


 いや、やらないけど。トカゲ肉食べなくても、生きていけるから。


『残念ながら、ルリイロトカゲの肉は、毒を抜いても食用には向きません。不味いです』


 そっか。おいしくないなら、廃棄しちゃってもいいね。


『毒は人間にのみ有効なものなので、肉は細切れにして肥料にしましょう』


 ……それは、野菜や果物に影響は出ないの? 出ないんだね。だから、肥料にって提案してるのか。


 んじゃ、皮やらの素材だけ組合に卸して、染料は別荘に、その他は肥料にしよう。


 沼地を覆い尽くす程いたルリイロトカゲの大群は、あっという間に私の亜空間収納へ。


 さて、次は山羊か。でも、とかげであれなら、山羊もデカいとか?




 連山の北側から、今度は南側へ。こっちは日当たりはいいものの、北より標高が高いのか、高い木がない。低木と草、それと岩場ばかり。


 ちょうど良さそうな場所で、ほうきから下りる。もふもふ相手なら、近寄っても怖くない。


「いかにも山羊がいそー」


 山羊って、崖とか登るんだよね。あれ? 全部の種類じゃなく、一部の山羊だっけ?


『いました。正面向かって右斜め三十二度の方向です』


 微妙な角度だなあ。えーと、右ね。あ、何か動いた。


「あれ? あれが、山羊?」


 確かに崖をちょこまか動いてる。うん、丸っこい、もさもさしたのが。角は確かに生えてるね。ちっさいけど。


 名前、オオツノヤギじゃなかったっけ?


『本体に比べると大きいという事で、この名が付いたようです』

「本体って……」

『半分以上が毛で、本体はあの半分程度の大きさになります』

「どんだけ分厚い毛だよ!」


 中にたっぷり空気を含んでいるので、万一崖から落ちても怪我をしないんだってさ。


「うーん、角が目当てだから、網を使って生け捕り?」

『小さくとも気性は荒いので気をつけてください。縄張りに侵入した相手は、容赦なく蹴り飛ばします』

「あの小ささで」

『魔力を込めて蹴るので、威力は高いです』


 さすが魔獣。そして、なんとなく奴らの視線がこちらに向いている気がするのですが、気のせいですか?


『いえ、ここは既に彼等の縄張り内のようです』


 だから! そういう事は早く言ってよおおお! ああ、集団でこっちに向かってきてる。


『オオツノヤギは、内臓その他、全ての素材で熱に強いです』

「よっし、じゃあ電撃ー!」


 こちらに向かってくる一団に、電撃を放ってみた。うん、一発でいける。ちょっと威力強めにしてみたしね。


 近寄って、一頭持ち上げてみたら、本当に長い毛で覆われた体は小さかった。小型犬くらい?


 それが膨らんだ毛で中型犬くらいには見えるんだから、どのくらいもふもふかわかるってもんだよね。


 他にもオオツノヤギはいるようなので、どんどん狩っていった。ちなみに、食べられる部分は少ないけど、オオツノヤギの肉はおいしいらしいよ。


 いいお土産が出来たね。

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