第300話 ヌルっともふっと
無事子グリフォン改めマクリアとミシアの契約は完了。引き続きマクリアのお世話はミシアがする事になった。
捕まった後、虐待されていたせいでまだ体がボロボロ状態なんだよね……人間で言ったら、まだ赤ちゃんくらいなのに。
グリフォンは人間と同じものを食べても問題ないから、今は人間の離乳食っぽいものを食べさせている。作るのは私だけど、食べさせるのがミシア。
マクリアってば、ミシア以外には懐こうとしないからねえ。
「ピイピイ」
「アイツ、躾ケナキャダメダッテー」
うん、グリフォン同士のマナーとかは、ブランシュにお願いしようかな。それにしても、ブランシュもノワールも、マクリアの事は嫌いみたいだね。
あの子はまだまだ赤ちゃんだから。教育はこれからだよー。
なんとなくだけど、ミシアがしっかり教え込みそうだしね……
ダガード国内の教会の汚職証拠は全て出揃った。くびれの地下にある瘴気は浄化した。
それに関しては、ちょっと気になる部分もあるけど、今できる事はない感じ。
マクリアとミシアの契約に関して、叔父さん大公とジジ様に報告するのは明日でもいいよねー。
という訳で、そろそろ南にある二カ所の温泉を掘ろうと思う。うん、二カ所なんだよなー。
「ねえ、じいちゃん」
「何じゃ?」
「ザクセード伯爵領って、もう王領になったのかなあ?」
「さて、こういった事は手続きに時間がかかるもんじゃが……どうしたんじゃ?」
「ザクセード伯爵領って、アメデアン伯爵領との境だけでなく、北の領境にある山でも温泉出るんだよね……」
「アメデアンとの境の山と一緒に、権利を買い取ったんじゃなかったんか?」
「えーと……」
ころっと忘れていましたー。
『万死に値しますね!』
ひい! 検索先生に怒られた!
「と、とにかく、王領になってから、改めて交渉すればいいかな」
「そうじゃなあ。見返りに何を要求されるのやら」
ちょっとじいちゃん、怖い事言うの、やめてくれる?
掘る場所は検索先生が教えてくれる。近場まではポイント間移動が出来る。という訳で、これからやるのは新しい温泉別荘の設計であーる。
専門的な部分は、相変わらず検索先生にお任せなので、私は大まかな方向性とデザインを決めるだけ。
四つ目となるアメデアン領と旧ザクセード領の間の山にある温泉には、イスラム風の建物を作ろうと思ってる。
テレビで見た、ハマム風の建物にするんだー。って事は、必要なのは木材じゃなくて石材だね。手持ちの石材で、足りたかな?
『いっそ、色つきの石材を採取しに行きましょう』
色つきかー。ってか、提案じゃなくて確定なんですね。
『タイルを焼いて装飾を施すのもいいかと』
ああ、イスラム風って、綺麗なタイル装飾ってイメージ、あるある。タイル装飾って、目地にカビが発生しやすくて大変なんだよねえ。
『カビや汚れは魔法で防げます』
本当、魔法って便利だ。じゃあ、タイルを使いましょうか。
『では、染料を採取しに行きましょう。購入した山の沼地に棲息するルリイロトカゲです』
「え? カエルの次はトカゲ?」
私、ヌルっとしたのやツルっとしたのは好きじゃないんだけど。どっちかっていうと、モフっとしたのが好きなんだけどなあ。
『もふもふも狩りに行きましょう。こちらも、山に棲息するオオツノヤギの角が、いい染料になります』
山羊かあ。あ、山羊ミルクって、牛乳にアレルギーがある人でも飲める場合があるって聞いたな。
『生け捕りにして、飼育しますか?』
「え? 飼えるの?」
『気性が荒く、好戦的な種ですが、飼い慣らせない事もありません』
「……大変そうなので、やめておきます」
どうせ家畜として飼育するなら、気性が穏やかな種がいいな。そんでもって、たまにもふもふさせてくれるのがいいかも。
最近、ブランシュはあまり小さくなってくれないので、こう膝の上でもふれる子が欲しくなるんだよ。
あ、決してブランシュに不満があるとかではないです。本当です。
ポイント間移動で、旧ザクセード領側から山に入る。標高二千メートル前後の山がいくつか連なる連山なんだけど、周囲から入れないようにしておこうかな。
まずは売買契約書に記載されている山の裾野に、魔法的なラインを引く。そこから山側に幅十メートル、深さ五十メートルの空堀をつくる。これで、普通の人は入ってこられないでしょ。
元々この連山は魔物が多く棲息しているせいで、人が近寄らなかったそうだから。問題ないよね。
さて、山羊はどこかなー?
『先にトカゲです』
えー……
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