第291話 何ですとー!?
ジジ様お抱えの料理人さんが作った、おいしいケーキを堪能していたら、領主様と銀髪陛下が慌てた様子で入ってきた。
「今度は何があった!?」
何があった、って、まるで私が何かしたみたいな言い方、失礼じゃない?
息巻く銀髪陛下の隣で、領主様が宥めてる。
「落ち着いてください、陛下。バム殿、説明を頼む」
「承知」
じいちゃんは短く答えると、ザクセード領の教会で見つけた檻と書類、それから王都の南にある小さな教会に隠されていた財宝と書類の事を話した。
話が進むにつれ、銀髪陛下の顔が険しくなっていく。
「……舐められたものだな」
「陛下」
「これが落ち着いていられるか! 教会の連中、王家を何だと思っている!!」
多分、なんとも思っていないんじゃないかな。言えないけど。銀髪陛下はまだしも、先代の国王はあんまりいい話、聞かないしねえ。
私が知っているのは噂話程度だし、ここにはその先代国王の母君であるジジ様がいるから、何も言えない。
「ともかく、幻獣を一撃で仕留められる魔法士がこの国にいるというのは、憶えておいた方がいいと思いますぞ」
「その魔法士に、心当たりは?」
領主様の言葉に、じいちゃんは無言で首を横に振った。本当にねえ、ちょっとでも腕の立つ魔法士なら、じいちゃんの情報網に引っかかっても不思議はないんだけど。
だからこそ、逆に危険な気がする。表に出てこない、腕利きの魔法士って、どう考えても怪しいんだよね。
しかも、不正をしていた教会に手を貸していたって事だから。平気で犯罪に手を染める人でもあると思う。
ついこの間、ナシアンと繋がっている魔法士を使って、叔父さん大公を襲撃しようとしていた人達を捕まえたばかりなのになあ。
あ。
「じいちゃん」
隣にいるじいちゃんの袖を引っ張る。
「ナシアンが関係してるって事は、ないよね?」
「あそこは国丸ごと、神罰が下ったばかりじゃなかったかの?」
「神罰下る前に仕込んでいたとか……」
「そもそも、ナシアンの人間なら離れていても神罰対象なのは、お主がその目で見たんじゃろ?」
そっか。そうだよね。何でも悪い事はあの国のせい、と考えるのは、よくないな。
「そこ、何をこそこそとしている?」
「え? 何でもないですー」
銀髪陛下が睨んでる! 領主様が宥めてるけど、そんなに怒ると血圧上がるよ?
「カイド、今はその正体不明の魔法士対策を考えるのが先ですよ」
「……わかっています」
対策って言ってもなあ……どこにいるかすらわからないのに。
『検索可能です』
「え!?」
「何だ?」
「どうしたんじゃ? いきなり」
「な……何でもない、です」
びっくりした。検索先生で、怪しい魔法士の居場所を検索可能とか。
『逆に、何故出来ないと思ったのかが不思議です』
……ですよねー。いつも検索先生に頼りっぱなしなのに、こういう時だけ何故思いつかないのか。
……わかってますよ、私の頭がポンコツだと言いたいんでしょ、けっ。
ともかく、じいちゃんにだけでも報せておかないとなあ。
教会の不正の証拠を押さえた事と、正体不明の腕利き魔法士の存在、これからも国内の教会の不正をこっそり調べる事などを伝えて、一旦砦に戻る。
「じいちゃん、例の怪しい魔法士、居場所はわかるって」
ほうきと絨毯で空を飛びながら、じいちゃんに報せておいた。
「お主の能力でか?」
うーん、一応、検索先生は私のスキルの一部って事になってるから、能力で間違いないのか。
「そうなる……かな?」
「まあ、現在地がわかるのなら、様子を見るにしても楽じゃからのう」
「そだね」
検索先生、例の魔法士、今どこにいますかー?
『コーキアン領都ネレソールの宿屋です』
何ですとー!?
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きりがいいので、ちょっと短め。
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