第285話 ジデジルさんからお手紙でーす

 聖地には、この前行った時にポイントを打ってあるので、ポイント間移動が使える。


 で、来たはいいけど、この先どうしよう? 前来た時は、ジデジルという最強パスがいたから奥まで行けたけど。


「うーん、どうしたもんか」

「どうかされましたか?」

「うえ!?」


 聖地の真ん前で唸っていたら、聖地在住の聖職者に声をかけられてしまった。聖地の聖職者かどうかは、着ている服の色でわかるんだって。


 聖地在住は白、それ以外は灰色か黒。特に白地に金の刺繍入りの服は、教皇しか着られない特別なものらしいよ。


 と、その前にこの聖職者だ。


「えっと、ジデジル総大主教猊下より、教皇聖下へのお手紙を預かってきたのですが」

「え!? 猊下から聖下への手紙ですか!? 失礼ですが、改めさせていただいてもよろしいですか?」

「こちらです」


 私が差し出した手紙を、聖職者は手のひらの上に乗せて、何やら唱えている。そうしたら、手の上の手紙が光った。おお!?


 この手紙、こんな仕掛けがあったの!?


「本物ですね……失礼しました。すぐ、聖下のところへご案内いたします」

「お、お願いします」


 あれ? 何かするっと入れる事になっちゃったよ? いいのか? いや、助かるけど。


『先程の手紙には、高位聖職者のみが使える術が施してあったのです。あの聖職者も、位階はかなり高いようです』


 マジで!? 何か、普通の司祭くらいに見えるんだけど。男性で、まだ若い感じ。多分、いっても二十代半ばくらいじゃないかなあ。


 でも本当に高位の聖職者だったらしく、奥の教皇のいる場所までフリーパスで行けた。


「こちらです。聖下、失礼します。ダガードに赴いていらっしゃる総大主教猊下よりのお手紙が届いております」

『お入りなさい』

「どうぞ」


 部屋の扉が開かれ、中へと招き入れられる。大きな机の向こうには、ユゼおばあちゃんの姿が。


「あら、まあまあ。何かあったのね?」

「えへへ……」


 ユゼおばあちゃんは私を見て驚いていたけど、私がジデジルの手紙を持ってきた事で何かあったと悟ったらしい。


 さすがユゼおばあちゃん。


「これが、ジデジルからの手紙」

「ありがとう。すぐ読むから、ちょっとそこに座って待っていてちょうだい」

「はーい」


 座り心地の良さそうなソファに座ったら、ここまで案内してくれた人が目を丸くしていた。


「ああ、案内ご苦労様。もう、戻っていいわよ」

「あ、はい……失礼します」


 狐につままれたような顔で帰って行ったなあ。あ、そうか。私がユゼおばあちゃんと顔見知りだって、知らないのか。


「ふふふ、今のあなたは、ユーリカの頃とは似ても似つかない外見をしているから」


 なるほど。私が神子なら、ここまで来るのも簡単だったのか。じゃあ、今度から聖地に来る時は、神子バージョンで来ようかな。


 今の外見って、魔法でいじってるから元に戻すのはちょっと手間なんだけど、ほんの数時間程度なら幻影を自分にかぶせればいいからね。


 よし、次に聖地にお使いに来る時は、神子の姿で来よう。って、本来の自分の姿なんだけどさ。


 うふふと笑いながら手紙を読んでいたユゼおばあちゃんだけど、読み進めていくうちに顔が険しくなっていった。


「これは……まったく……」


 大きな溜息を吐いた後、机の引き出しから紙を取り出して、何かを書き始める。


「これを、ジデジルに渡してくださる?」

「うん、わかった。他に何か、渡すものとか伝言とか、ある?」

「徹底的におやりなさい、と伝えてちょうだい」


 眼光鋭く言われると、大変怖いですよユゼおばあちゃん。まあ、ちゃんと伝えるけどね。


 そういえば、今は他に人はいないな?


「ユゼおばあちゃん、おばあちゃんに直接会いたい時やものを渡したい時に、直通でここまで来ちゃダメ?」

「構いませんよ? ああ、そうね。表からここまで来るのは、少し時間がかかるものね」


 そうなのよ。神子バージョンなら楽に奥まで通してもらえそうだけどさ。考えたら、ここの付近にポイント打って、ポイント間移動出来るようにしておいた方が、楽だよね。


 で、お許しが出たので、この部屋のすぐ外にある小さな庭の一角に、ポイントを打っておいた。といっても、何もないけどな。


「これでよし、と。じゃあ、ユゼおばあちゃん。またね」

「ええ、元気でね。ジデジルとあの爺さんにも、よろしく言っておいてちょうだい」

「はーい」


 ユゼおばあちゃん、じいちゃんの事は「あの爺さん」って呼ぶんだよね。仲が良いんだか悪いんだか。

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