第280話 ドカンと一発
ザクセード伯爵のところから、砦に戻って一息。なんだかんだで昼食には間に合っちゃった。
「今日は出来合でいいや……」
これから作る気にはなれないからね。何があったっけかなあ?
あ、魚のすり身のスープと、自家製パン、それにゆで卵のサラダをつけようっと。そろそろみんなダイニングに来るはず……
「あ、サーリが帰ってる!」
おっと、ミシアが最初かあ。ミシアは午前中じいちゃんに魔法を習って、午後は自主練に当てているらしい。
そしてじいちゃんは午後の時間、自分の研究に時間を当てている。
「おお、戻っておったか」
「うん、思っていたよりも、早く済んだよ。これも紹介状のおかげだねえ」
後で叔父さん大公にはお礼を言っておこうっと。一応紹介状やら何やらは、依頼の報酬の一部だけどね。
もの凄いお役立ちアイテムだったから、追加でお礼を言っても罰は当たるまい。
『神は些細な事では罰は当てません』
うお! まさか検索先生から返答が来るとは。ってか、最近ちょくちょく返答くれますね?
『……使われないと、寂しいものなのです』
しまった。検索先生をさみしがらせてはいかん。ストライキでも起こされたら、たまったものではない。
これはやはり、新しい温泉を早く掘らねば。
『期待しています!』
お任せください! 頑張っていい温泉にしますとも! 今度はスパリゾート風にしてみようかなー? トルコのハマム風とかどうだろう?
あ、でも従業員のお姉さんがいないと、エステとかは無理だなあ。
『ハマムですね! デザインやタイルなどを調べておきます!』
……検索先生がやる気を出してくれたので、よしとしておこう。
両伯爵に話を通した日から三日。今日は契約書が出来ている日。いよいよ、売買契約を交わす日です。
「検索先生、よろしく!」
『お任せください。おかしな契約書を出してきた日には、目にものを見せてくれます』
おお、恐ろしい。アメデアン伯爵は大丈夫な気がするけど、問題はザクセード伯爵だなあ。変な仕掛けをしてこなければいいけど。
ではまずアメデアン伯爵のところへ。
「待っておったぞ」
「お待たせして申し訳ありません」
あれ? 今更だけど、アメデアン伯爵とはいつ何時にって約束していないよね?
ザクセード伯爵が三日後って言ったから、大体そのくらいかなーと思って訪問したんだけどさ。
まだ契約書が出来上がっていなかったら、出直すつもりだったんだけど。これは出来てるな。
通された伯爵の執務室で、来客用に置かれているテーブルの上に書類が出された。
「こちらが契約書だ」
おお、仕事が早いな伯爵。では早速拝見させてもらいましょう。
検索先生、おかしなところはありませんか?
『問題ありません。サインして素早く売買契約を完了させましょう』
了解です。ちなみに、山全部買っても四百万ブールって……安すぎないかね? まあ、魔獣だらけで使えない山だから、二束三文で売られるのは当たり前かもしれないけど。
『これでも高い方です。領境という条件がなければ、もっと安く買いたたけたでしょう』
うわー。今のは聞かなかった事にしておこうっと。契約書にサインし、記載されていた金額を支払って売買契約完了。
この契約、私が破った時はもちろん、アメデアン伯爵が破った場合にも罰則があります。つか、神罰が下る。
この場合の神罰って、どんなのだろう?
『この先一生、秘密を持てなくなります。誰彼構わず、真実を話しまくるようになるのです』
こわ! 神罰こわ!
無事アメデアン伯爵との売買契約が完了したので、次はザクセード伯爵のところへ。
あ、山は普段から人が近寄らない場所らしく、柵とか作る必要もないってさ。でも、温泉掘るようになったら、人が入ってこないようにしておかないとね。
柵にするか、壁にするか……
『堀でもいいかもしれません』
堀か……空堀でも、人の行き来はしにくくなるもんね。よし、山の周囲ぐるりと空堀を掘ろう。
さて、ザクセード伯爵の屋敷に到着したんだけど……何か、様子が変じゃね?
『悪い気が漂っていますね。これは、神罰が下る予感』
マジで!? と思っていたら、いきなり目の前で屋敷に雷が落ちた。今日、晴れ渡ったいい天気なのに。
周囲もざわついてるよ。ここ、領都だから人も多いのに。
「門番も屋敷に走って行っちゃって、誰もいないねえ」
屋敷には、先程までのおかしさが見られない。あの雷で綺麗さっぱり消えてなくなった感じ。
『先程の雷は神罰ですから、屋敷に漂っていた悪い気は全て浄化されました』
ザクセード伯爵、何したんだろう? まあ、なんとなくわかるけど。契約書で、不正をしようとしたな?
多分、伯爵は神罰を信じていなかったんでしょ。って事は、今回の神罰は不信心故のものかな?
『そのようです。ですから、神罰の内容は強制改心です』
あー、ご愁傷様。
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