第271話 大公様からお手紙ついた

 手段は伏せて、襲撃者達が集まっている場所を特定出来たので、こっそり近寄って全員撃退。後、首謀者三人をここまで連れてきたと説明。


 話している間も、叔父さん大公はハゲ達を驚きの顔で見ていた。


「以上でーす」

「ああ……感謝するよ……」


 叔父さん大公、驚き疲れてるみたい。ゆっくり休んでーって言いたいけど、その前にやる事山積みだよね。


 手始めに、あの場に置いてきた連中をどうするか、決めてもらおうか。


「それで、捕まえた兵士達はどうしましょう?」

「まさか、彼等も何らかの手段でここまで連れてきてる、とか言わないだろうね?」

「ははは、そんなまさか」


 叔父さん大公が、一瞬凄く怖い顔をしていたよ。連れてきていないってわかったら、あからさまにほっとしてるし。


 良かった、あのまま連れてこなくて。




 捕まえた兵士達は、叔父さん大公の私兵が連れてくるそうな。


「いや、本当に助かったよ。感謝する」

「どういたしまして」

「この連判状があるから、彼等は言い逃れ出来ないしねえ」


 そう言いつつ、部屋の隅に縛り上げたまま転がしてるハゲ達を見る。叔父さん大公、笑ってるんだけど、怖いです。


 ハゲ達も怖がって縮み上がってるよ。あ、漏らすのは勘弁ね。汚いから。


「それにしても、彼等に唆されたにせよ、詰めが甘いなあ」


 何の事だろう。連判状を見ながら言ってるから、それの事かな?


「君は、この中身は見たかい?」

「いいえ」


 懐のどれが連判状かは検索先生が教えてくれたけど、中身までは教えてくれないし、私も知らなくていいやって思ったから。


「そうか……ふふふ、そうなんだね」


 何か知らないけど、叔父さん大公が嬉しそうに笑ってる。でも、その笑顔に黒いものがにじんでいますぜ。領主様みたい。


 ひとしきり笑った後、叔父さん大公はデスクに向かって手紙を書き始めた。書き終わって封筒に入れ、封蝋を塗って指輪を押しつける。


「悪いが、これを王宮のカイドに渡してきてくれないかな。必ず、本人に手渡してほしいんだ」

「ぎ……陛下に、ですか?」

「そう。ああ、この手紙の配達も、依頼料に上乗せするよ。出来たら、カイドからの返事を何らかの形で持ち帰ってほしい。そこで、今回の依頼は完了という事でどうだろう? 依頼料は弾むよ?」

「わかりました」


 依頼の一部という事なら、まあいっか。王都までなら砦にポイント間移動して、そこからほうきを使えばいい。


 封のしてある手紙を受け取り、その場を辞して屋敷の裏庭へ。周囲に誰もいないのを確認してから、まずステルスの術式を使った結界を張り、それからポイント間移動。


 こっちでもステルス結界は効いてるから、そのままほうきを取り出してまたがる。あ、お姫様だ。


「? サーリ? いるの?」


 いませんよー。


「やっぱりいるじゃない!」


 しまった。お姫様は読心術が使えるんだった。面倒だから、このまま飛んじゃえ。


 下でお姫様が何か叫んでるけど、聞こえない聞こえない。さて、では王都の王宮まで急ごうか。


 あ、今から行きますの手紙、送らなきゃ。




 王宮で降り立つのは、奥宮の中庭。あ、今日のお出迎えはシーナ様だ。


「いらっしゃい、サーリ。今日はカイド陛下にご用事なのですってね」

「そうなんです。おじ……えーと、大公殿下から、お手紙をお預かりしてまして」

「まあ、ナバル様から?」


 あ、叔父さん大公の名前、ナバルさんっていうんだ。


 シーナ様が先導してくれて、奥宮を抜けて表へと向かう。奥宮から表の王宮までって、結構な距離があるよねえ。


 奥宮の侍女であるシーナ様達は、一日に最低二度はこの道のりを往復するんだって。いい運動になるそうな。確かに。


 ジジ様の侍女であるシーナ様が先導をしてくれてるからか、変な人に絡まれたりお嬢の群れに絡まれたりしなくて快適。


「この時間だと、カイド陛下は執務室でしょう」


 銀髪陛下、ちゃんとお仕事してるんだね。


 辿り着いたのは、いつぞや来た覚えがある部屋の前。ここまでの道のりはすっからかんに忘れてるけどね。


 入り口を護る兵士の人にシーナ様が来訪理由を告げ、中に伝えてもらう。その際、「サーリが来た」とは言っていたけど、手紙の件は言っていない。


 つまり、そういう事なんだろうね。


「珍しいな、お前がこちらに来るとは」

「それはそうでしょう、陛下。サーリは用がなければ王宮まで来ませんから。そうだろう?」


 ええ、そうですね。執務室の扉が閉まり、シーナ様がこちらに目配せする。もう出していいみたい。


「これを」

「うん? 俺にか? ……この紋章!」


 こちらに向けて確認しそうになった銀髪陛下に、シーナ様が口に指をやり止める。どこで誰が聞いてるか、わからないから。


 王宮なんて、いくら警備しても穴があるし、なければ穴を作ってでも秘密を暴こうとする連中がいっぱいいるところだからね。


 領主様も厳しい表情だ。そんな中、銀髪陛下が手紙を開封する。読み進めていくうちに、何だか怒っているように見えるのは、気のせい?


 読み終わった手紙を、銀髪陛下から受け取って読んだ領主様は、思い切り吹き出してます。


 叔父さん大公、一体何を書いたんだ?

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