第251話 群れの結末

 結局、前回の群れとの遭遇話を話す事になった。


「えーと、群れの皆さん誤解しているようでして」

「群れ?」

「あの小娘共の集団ですよ。群れでいいのではなくて?」

「ああ」


 ジジ様、説明ありがとうございます。銀髪陛下も、何か納得してるし。そういや、前回の時は銀髪陛下、いなかったっけ。


「それで? あの群れは何を誤解していると?」

「そのう……」


 ちらりと銀髪陛下を見る。領主様は、それだけで理解してくれたらしい。何やら頷いているよ。


「何だ? ジンド」

「おそらく、あの群れのお嬢さん方は、サーリが陛下にまとわりついていると誤解したのでしょう」

「何?」


 いや、銀髪陛下、誤解ですから、誤解。だからそんな眉間に皺を寄せないで。顔が怖いよ。


「あら、報告ではカイドだけでなく、フェリファーにもまとわりついていると誤解されていたのではなくて?」

「ぶっ!」

「あー、そう言えば、そんな事を言ってた気が……」


 それ誰の事だっけ? てか、剣持ちさん、何吹き出してるの。汚いよ。


「私の事は話題に上らなかったのかね?」

「領主様ですか? 出てたかな……」

「ジンド、自分の年齢を考えなさいな。それに、あなたは妻帯者でしょう? 小娘達の狙いからは外れますよ」


 ジジ様の言葉に、領主様は苦笑いして肩をすくめた。群れのお嬢さん方からすれば、領主様って父親と同年代くらいだもんね。


 まあ、たまにそれくらいの年齢差がいいって人もいるけど、少数派だよなあ。やっぱり年齢差はプラマイ三から五歳くらいでしょ。


「とりあえず、連中の狙いはよくわかった。父親共の考えもな」


 銀髪陛下、最後の部分が凄く低い声でしたよ。しかも、何か領主様ばりに黒い笑みだし。


 これはあれか。群れのお嬢さん方とその親に、王家が軽んじられてる事への怒りかねえ。


 普通、私的とはいえ王族から抗議の手紙とかもらっちゃったら、本人は元よりその親兄弟も、宮廷に出るのをしばらくやめるくらいの事だよ。


 なのに、群れは再び同じ事をやらかした。いや、前回よりも更に酷い。今回いたのは奥宮。ジジ様の宮殿だ。


 ジジ様ご本人が仰っていたけど、奥宮にはジジ様の許可を得た者しか入れないはず。当然、群れは許可を得ていない。


 それ言うと、奥宮の警備体制もどうなってるんだって話だよね。群れを通しちゃってるんだから。


 父親からの賄賂か、群れ本体からの袖の下か。どちらにしても、処罰対象じゃないかなあ。


 と思っていたら、まさに目の前でその話し合いが始まりましたよ。


「それで? あの群れはどう対処するつもりなの? カイド」

「本来なら、反逆罪で一族郎党極刑ですね」

「今回は奥宮にも無断で立ち入っていますからねえ。妥当だと思いますよ。両陛下からの抗議文も無視した形ですし」

「そうね。ところで、群れの家はどの派閥の家か、わかっているわよね?」

「お婆様から、名前の一覧を頂いていますから。わかりやすい連中です」

「侯爵家が二つ程入っていましたね。まあ、爵位の割に家は没落気味ですから、ここで潰しても国には何の支障もありません」


 何か、怖い話になってるんですけど!? 確かに群れは怖かったし、毎回あんな感じで絡まれたら、いつかぶち切れて攻撃しちゃいそうだけど!


 でも! だからって全員極刑というのはいかがなものかと!


「まあ、今回はそこまではやりませんが」


 良かったああああ。銀髪陛下、ナイスです!


「とはいえ、何の罰もなしは無理ですから、当事者である群れの娘達は修道院へ、父親の方は爵位を二つ落として領地を没収。その辺りですか」

「そうね。そこら辺がギリギリのところでしょう」

「両陛下がそう仰るのであれば」


 今回の群れのお嬢さん方の家、一番下で侯爵家と伯爵家の家が殆どだったから、子爵と男爵に爵位が落ちるのか……


 国によっても違うけど、ローデンでは子爵以下って貴族の中でも下層扱いだったなあ。男爵なんかだと、領地を持っていない家が殆どだったし。


 ダガードはどうなんだろうね?




 少しして、群れの処罰が国内に公表されたらしい。食材を買いにデンセットに行ったら、その話題で持ちきりだった。


「へー、伯爵が男爵まで爵位を落としたってよ」

「こっちの侯爵なんか、子爵だぜ? 一気に落ちぶれたなあ」

「はは、違いねえ」


 ダガードは識字率が高いのか、今回の騒動のビラを見ながら人々が噂している。やっぱり、侯爵家から子爵家へって、かなりの事みたいだね。


「あ! サーリが来た!」

「へ?」


 組合の前を通りかかったら、何故かローメニカさんに捕まって、そのままフォックさんの部屋まで連れて行かれた。


 いや、今日は買い物に来ただけなんですが。


「いいからいいから。組合長! サーリが来ました!」

「何!? 本当か?」


 お? フォックさん、ちょっと見ない間に肌の色艶がよくなってませんか? 何か凄く元気そう。


「もらった酒な、うまいだけじゃなくて凄く効いたよ。ずっと重だるかった体が、すっきりしてる」

「私も、お肌の艶が違うのよー」


 あれ、美容効果もあったのかね?


「でね? 物は相談なんだけど……」


 どうやら、ローメニカさんはもう一本飲みきったらしい。追加が欲しいんだってさ。それで私が来るのを待ち構えていたらしいよ……

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