第247話 蛇とお酒
追加注文分は、手持ちの素材でどうにかなりそうなので、早速亜空間収納内で作成しておこうっと。
「その間、私は何しようかなー……あ、そうだ」
フォックさんが疲れてるそうだから、何か精の付くものをお土産に持っていこう。何がいいかな?
『蛇酒など、どうでしょう?』
何そのまがまがしいお酒。
『魔獣の中でも、魔力値の高い蛇を酒に漬けたものです。蛇の精が酒に溶け込み、滋養強壮によく効きます』
へー、そうなんだ。でも、ちょっと前にもカエル祭りをやったよね?
『カエルと蛇は別物です』
別物ですけど! そりゃあ別ですけど! おっきなくくりでは一緒だと思うの!
私、もふもふは好きだけど、ぬるっとしたのやつるっとしたのは好きじゃないんだってば。
カエルの時は、見るだけで触れる必要なかったからいいけどさあ。
『蛇も似たようなものです。こちらは氷雪系がよく効きます』
何でも、周囲の温度が下がると動けなくなって仮死状態になるらしいよ。それなら、大丈夫かな……
『ついでに、つけ込む蒸留酒も造っておきました』
いつの間に!?
蛇がいるのは、深い森の中や山の奥だそうだ。奥に行けば行く程人がこないし、山の力を取り込めるので、魔力値の高い蛇がいる確率が上がるんだって。
「それでここかあ……」
旧ウーズベル領にある山脈の一つに来てる。ウーズベルって、山が多い領だったんだー。
『それが不満で、謀反まで起こしたようです』
よく知ってるね、検索先生。山が多いと作物が多く作れないので、結果領が貧乏に陥りやすいって事らしい。
でも、ダガードってちょっと前まで瘴気の害が多い国だったはず。どのみち作物はろくなもの作れなかっただろうに。
『ウーズベルには、瘴気に強い特産の果物があったようです。ですが、平地でないと育たないので、山が邪魔だったのではないでしょうか』
あー、特産品があったのかー。でも、だからといって謀反はダメでしょ謀反は。
それに、今ではその邪魔もの扱いしていた山は、文字通りお宝の山になってるのにね。銀は出るわダイヤは出るわ素材は豊富だわ。
そして、今いる山脈にも魔獣がたくさんいるそうなので、魔獣素材の宝庫なんじゃね?
山の奥までは、ほうきでひとっ飛び。一応旧ウーズベル領も今はコーキアン領になっているので、狩りをするのは問題ない……はず。
あとで領主様に事後報告しておこうっと。
『山の調査を並行して行えば、文句は言われないと思います』
あ、そっか。それで有益な資源が見つかれば、勝手に狩りに入った事は怒られないね。
よし、それでいこう。
蛇を探すついでに、山の調査。石材でも出れば御の字じゃないかなあ……と思っていたのに。
「あれ? もしやこれは鉄鉱石?」
『かなり豊富な鉱脈ですね』
金、銀、ダイヤときて、今度は鉄かあ。銅が来るかと思ったのに。
『銅鉱脈も、近場にありますよ』
「マジでー!?」
本当、ダガードって鉱脈がたくさんある国だねえ。
見つけたからには、少し採取して領主様に届けておこう。鉄鉱石と銅鉱石を一抱えずつ亜空間収納へ。
さて、これでいいか。
『あとは蛇だけですね』
う……忘れたふりしてこのまま帰ろうかと思ったのに。いや、いかんいかん、フォックさんの疲れを癒やさないと。
思ったんだけど、二、三日温泉別荘に招待すれば、疲れも取れるんじゃね?
『その代わり、ローメニカ嬢と一緒に居座られる危険性があります』
それはいかん。定期的に招くくらいならいいけど、さすがに居座られるのは……でも、フォックさんとローメニカさんが、そんな事するかな?
『あくまで、可能性です』
……ま、いっか。とりあえず、頑張って蛇を捕まえよう。今度は蛇に的を絞って山の中を探す。
お、めっけ……って、でかくない!?
『亜空間収納内でつけ込めば、いけます』
いけるんだ!? ……まあ、つけ込んだ姿を見せない方が、ただのお酒といって渡せるからいいのかな?
って事は、あの巨大蛇を捕まえないといけないのね。ほうきで、巨大蛇の上までいく。なんと言うか、列車くらいの太さと長さなんだけど。
人間なんか、簡単に丸呑みできるね。
「寒いのが苦手なんだっけ」
まず蛇の周囲を結界で覆い、その中身の温度をどんどん下げていく。蛇が暴れるかと思ったけど、うねうね動いて前進していたのが、段々動きがにぶくなるだけだった。
最後には、表面に霜のようなものがついた状態で、動かなくなってる。
「これで平気?」
『上出来です。では、亜空間収納内へ』
あとは検索先生がうまくやってくれるそうな。こんだけでかい蛇の漬かった酒なんて、見たくないしね。
……ん? でかい蛇を、酒に漬ける?
「検索先生、どれくらいの量のお酒を造ったの?」
『……黙秘します』
大量に作ったんだな!? 本当、いつの間に……私、お酒は飲まないのになあ。
誰の為のお酒だよ、もう。
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