第246話 終了フラグ?
「驚いたでしょう? 躾けも行き届いていない娘達ばかりで」
「えーと……はい」
驚いた……というか、あの勢いに飲まれていたというか。ぼんやりしている間に、侍女さんに助け出された感じ。
ああいうの、スルーするスキルをローデン時代に取得しちゃったからなあ……手を出してきたら、魔法で対抗するだけだし。
ただなあ、女性が集団でこっちに悪意を向けてくるのって、やっぱり怖い。
「ああいう、お嬢様の群れは苦手です」
「ぶふ!」
あれ? 侍女さんが吹き出したよ?
「……失礼。そうね、若い娘とはいえ、群れると厄介よね……くく」
「ですよねー。やっぱ、群れって怖いと思います」
「そうよね。これは、ジジ様にもご報告しないと」
……お嬢様の群れの終了のお知らせじゃないですか? それ。
「という訳で、中庭で騒いだ令嬢の群れの名前一覧がこちらです」
侍女さん早! 太王太后陛下のもとへ到着して、何やらさらっと書いてると思ったが、あそこにいたお嬢様の群れの名前リストを作成していたよ!
そして、侍女さんから報告を受けた太王太后陛下や他の侍女さん達も、何やら扇の陰で笑ってる。何がそんなに受けてるの?
「そう、群れ……確かに。どれどれ……なるほど、ブイコダーグ侯爵家、レグキア伯爵家、ネフォウス伯爵家、ワノガバ侯爵家の娘が中心ですね。あとは取り巻き連中といったところでしょう。まったく、困ったお嬢さん達だこと」
太王太后陛下、「困った」といいながら、何故そんな悪役のような笑みを浮かべるんですか?
これ、お嬢様だけでなくその親も終了まったなし?
「最近、表の方ではカイド陛下のご結婚の話が再燃しているようですから、そのせいでしょうか?」
「だとしても、サーリをいじめていい理由にはなりませんよ。まったく醜い事を」
へー、銀髪陛下、結婚の話が出てるんだー。まあ、いい年だもんね。本来なら、とっくに結婚してお世継ぎの一人も出来てなきゃいけないはずだもんね。
それにしても、そんな国の重要な話、一冒険者に聞かせてもいいんでしょうかね?
「ともかく、この者達の事は私が預かります。サーリ、今度から王宮に来るときは、直接この奥宮にいらっしゃい。そこの庭なら下りられるでしょう」
「いいんですか?」
「主の私が許可するのだから、誰にも文句は言わせません」
おおー、何だか頼もしい。
その後は、亜空間収納から取り出した試作品をお渡しして、ちょっと盛り上がった。
「ブラウスを着て、こちらのスカートをお召しください。シャツ一枚で寒い時は、こちらのストールをどうぞ」
オオツノヒツジの毛を細めに糸にして、大判のストールを作っておいた。こっちも生成りのまんま。
素材の風合いがある、と言えば聞こえはいいけど、どっちも薄い黄色の色だから、地味といえば地味。
「まあ、軽いし暖かいわ。今の陽気だと少し暑いけど、夏を超えたら使う頻度が上がりそうね」
「スカートも軽くて体が楽ですね」
「本当に。これなら、普段使いに出来るんじゃありませんか?」
侍女さん達にも好評のようです。聞けば、奥宮にはあまり来客がないので、公式行事で表に向かう以外は、これで過ごせそうとの事。
王国でも一番身分が高い女性の住む場所なのに、ご機嫌伺いとかないのかな?
「当然、そうした面会の申し込みはたくさんありますよ? ですが、それら全てに対応していては、ジジ様が疲れてしまいますからね」
にっこりといい笑顔で教えてくれた侍女さん。つまり、面倒だから大部分の面会者はシャットアウトしてるって事ですね?
「とうの昔に引退した身だからこそ、出来る事ですよ。本当ならカイドの妃が面倒を担ってくれるはずなのに……」
おおっと、銀髪陛下に太王太后陛下の怒りの矛先が向いたー。
「え、えーと、スカート、今回は試作品なので生成りのままですけど、色とか柄とかも入れられると思いますよー」
「そうねえ。どんな柄がいいかしら?」
「それでしたら……」
よし、意識逸らしに成功!
試作品をお気に召した太王太后陛下達からは、追加のスカートとブラウスの注文を頂きましたー。
それぞれ違う素材でもいけると伝えたところ、ぜひそちらも試作してほしいと頼まれたし、しばらく忙しくなりそう。
冒険者の仕事じゃないけど、素材採取で冒険者らしい事もしてるから、まあいっか。
何だか、あの四人を見ているとおばあちゃんを思い出して懐かしいし。多分、私が太王太后陛下達と一緒にいたいんだなあ。
次からは奥宮に直接来る事、来る前に侍女さん宛に手紙を送る事、それから四人を愛称で呼ぶ事を約束して、王宮をお暇した。
ご相伴したお昼ご飯、おいしかったなあ。味付けが濃すぎないので、あっさりしていていい。
あの味、砦でも再現出来ないかなー。
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