第240話 お三方がやってきた
温泉別荘でのんびりだらだらしていたら、二十日なんてあっという間……と思っていたんだけど、その前に別荘の方に来客があった。
「ほう、出来上がったとは聞いていたが、これ程とはな……」
「何だこの……家? なのか? 変わった形だが……」
「まあ、本当に。見た事もない様式ねえ」
何故、別荘の玄関先に、すまなそうなじいちゃんと領主様と銀髪陛下と太王太后陛下がいるの?
特に最後のあなた! 奥宮から出ないんじゃなかったんですか!?
「すまんのう、サーリや。領主殿達にどうしてもと言われてのう……」
「じいちゃんが悪いんじゃないよ……」
このメンツ相手では、私だって断り切れなかったと思うもん。
仕方ないから中へ招いたけど、玄関先ではお約束な出来事があったよ。
「靴は脱いでください。こっちのスリッパに履き替えて」
「何故だ?」
「ここは土足厳禁です。守れないなら入れません」
「うぬう……」
睨んでもダメですからね!? 銀髪陛下。領主様や、太王太后陛下を見習ってください。
それにしても、太王太后陛下の靴、剣持ちさんが脱がせるのか……あ、彼もいました。銀髪陛下の背後にいたから、気づくの遅れたわー。
領主様の靴も、彼が脱がし、渋々といった風に銀髪陛下も剣持ちさんに手伝ってもらって、靴を脱いでいた。
今度から……というか、次がない事を祈るけど……来る時は、脱ぎ履きしやすい靴にしてください。
スリッパに履き替えた一行を、奥の部屋へと案内する。その途中でも、三人が三人とも、あちこちを見回していた。
「あら、あの花は?」
「庭先に咲いていた花ですよ。この山に自生していたみたいです」
「まあ……」
別荘内に花を飾ろうと提案してきたのは、検索先生です。女子力とは……
ま、まああれだ。センスも先生の方が上だし、花の生け方も先生の完全指導の下私がやったけど、向きとか長さとかは全部先生が見てくれた。
私、本当に先生の手足になっただけ。でも、だからこそ綺麗に仕上がったんだと自覚してるから、いいの。
生け花は、こっちの王宮とかにある、大きな花瓶にこれでもかと盛るタイプではなく、わびさびな世界を表現云々……すいません、これも受け売りです。
まあともかく、別荘内の装飾なんかも、全部こっちの世界にはない和のテイストでまとめてあるって事ですよ。
当然、銀髪陛下から質問が飛んでくるわな。
「これは、一体どこの建物の様式なんだ?」
「向こうの大陸の、小国の建物を模したんですー」
嘘でーす。和風建築でーす。しかも、多分完全和風とも言えない箇所がちらほらある感じ。
でも、日本の事なんて、この世界の人達にはわからないだろうからね。口からでまかせでいいんだよ。
「おお!」
「これは……」
「おい! どうして風呂が外にあるんだ!!」
露天風呂と庭園を見た、領主様、太王太后陛下、銀髪陛下それぞれの感想です。
「外にあるから露天風呂っていうんですよ。景色や自然と一緒に温泉を楽しめる、最高の施設なのです!」
ここは胸を張って堂々と宣言するよ! それに、外で入った方がのぼせにくいとも聞くね。
私の言葉を聞いても、銀髪陛下が何か不満顔。もごもご言ってるけど、何がいいたいんだろう?
「何です? 人の別荘に、何か文句でもあるんですか?」
「あるに決まってる! こ、こんな外で肌をさらすなど……誰かに覗かれたらどうするんだ!」
「えー? 銀髪陛下のエッチー」
「え、えっち……とは何だ?」
あれ? そこから? うーんと、どう言い表せばいいんだ?
『考えが卑猥だ、とかではどうでしょう?』
ああ、そうか。ありがとう、検索先生。
「考え方が卑猥だって事です」
「な! だ、誰が卑猥だ!!」
銀髪陛下ですよ。この状況ですぐに覗きに頭が向くなんて。欲求不満ってやつ?
あれ? そういえば、銀髪陛下ってもういい年なのに、まだ未婚だったっけ。お妃様がいたら、王宮にいるはずだもんね。
あ、怒る銀髪陛下の後ろで、剣持ちさんが剣を抜いている。その剣先、こっちに向けたら山の外まで吹っ飛ばすからね。
むっとして剣持ちさんを睨んでいたら、領主様が彼を止めた。
「やめんかフェリファー。相変わらず頭にすぐ血が上るやつだな」
「ですが! 陛下を愚弄されて黙って見過ごす事など、出来ません!」
「あら、今のはカイドが悪いわよ。わかっていますね?」
おおう、太王太后もこっちの味方らしい。さすがにお婆さまに言われては、銀髪陛下も怒り続ける事は出来ないみたいだね。
それでも一国の王様だからか、「もういい」と言って話を切り上げた。
「さて、ではここの温泉とやらを、体験させてもらおうか!」
「えー、やっぱりそれが目的ですかあ?」
この人達の顔ぶれを見た時から、嫌な予感はしていたんだよなあ。もっと言うと、領主様に温泉の話をした時から……かな。
まさか、それに太王太后陛下や銀髪陛下までくっついてくるとは思わなかったけど。
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感想で、花を飾ったらどうかといただいたので、使わせていただきました。
欄間はまた今度にでも。
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