第238話 柄で悩む

 面倒な事はとっとと終わらせてしまおう。という事で、温泉につかりながら次の注文品を考える。


「うーんと……銀髪陛下からの注文が太王太后陛下とは違う花での装飾だっけ。で、他の倍の二ダースっと。太王太后陛下のは今回渡したのとは違う花柄で一ダース、領主様のも、花の種類は変えておいた方がいいよね」

『参考に出来る花や草木などは、ダガードにもたくさんありますから~』


 はて、検索先生の声が、微妙にいつもと違う。……は! もしかして、私を通して温泉を堪能してる!?


『その通りですう~。あ~、気持ちいい~』


 ……ま、いっか。検索先生には普段からお世話になってるし、別に私に害がある訳でなし。


 一緒に温泉堪能しましょうねー、先生。




 たっぷり楽しんで、風呂上がりのイチゴミルクも堪能した後、別荘で改めて柄を決めていく。


「領主様のは、薔薇はアウトかなあ……あ、別の薔薇ならいいかな?」

『色と形が違うものを選びましょう。色は女性好みなら赤かピンク辺りでしょうか』


 太王太后陛下の分は、淡いピンクの薔薇だったので、領主様のは鮮やかな赤の薔薇でどうだろう?


 赤……あ!


「太王太后陛下の分は、イチゴの実をあしらった柄はどうだろう?」

『……そういえば、地球世界にそんな磁器がありますね?』


 ギク!


『……パクリですか?』

「いや! でも! こっちにはないものだから!!」

『それもそうですね。では、あちらの柄を参考に、作ってみましょう』

「よ、よろしくお願いします……」


 領主様と太王太后陛下の分は決まった。後は銀髪陛下の分か……


「検索先生、向こうの洋物磁器の参考画像って、見られますか?」

『問題ありません』


 先生からの応答の後、すぐに目の前の空間に画像が映し出された。ほほう、いろんな柄があるのねえ。


 いっそ、銀髪陛下の肖像画を柄にしちゃおうかな。


『それもありかと思います』


 本人は嫌がりそうだけどね。あんまりやると、本気で怒られそうだからやめておこうっと。


 あ、この色と線のみもいいんじゃないかな?


『地味じゃありませんか?』


 地味っすか……じゃあ、こっちの金と天使の柄は?


『こちらには天使の概念がありません』


 うぬう……あ! いっそ、神馬をモチーフにしたらどうだろう?


『それは有りですね』


 よし! じゃあ神馬と……神馬と言えば、やっぱりあの果実だよね。果実とを柄にして……イメージ作成はこんな感じ。


 皿の中央からX字状に蔦の柄を伸ばして、区切られたところに神馬と果実。皿の縁には果実と蔦。これでどうだ!


『いいと思います。もしクライアントが不満を漏らしたら、別の相手に売りつけましょう』


 先生、凄いノリノリです。


 ともかく、柄は決まったから、後は検索先生にお任せ!


『素材のいくつかが心元ないです。採取に行きましょう』


 マジでー?




 やってきましたカエル捕り。


「てか、前にカエルは散々捕ったのでは?」

『足りません。染料に丁度いいのが、カエルの内臓の液なのですが、一匹から採れる量がごくわずかなのです』


 こんなでかい図体してるくせにな。ってな訳で、春のカエル捕り祭りであーる。


 水場にいるでかいカエルを捕るのは、私には楽なお仕事です。上から雷撃一発ですむからね。


 ついでにヌメリゴマやその他の素材も採取。いつ何時使うかわからないしー。


 水に浮かんだカエルも、当然採取。お肉はまた恵まれない人達に寄付って事で。


 このカエル肉、滋養があって病気の人とか栄養が不足しがちな人にいいんだって。


 カエル、以外と役に立つんだね。


 その他にも、色を安定させる為のスライムとか、銀や金を入れる為の銀鉱石や金鉱石なんかも採取。


 ……銀とか金って、勝手にとっていいのかね?


『そこにあると知られていないのですから、問題ありません』


 そ、そっすね……ちなみに、これらの鉱石を採取した山はコーキアン領ではないし、何ならダガードでもないという裏話。


 これ、絶対誰にも言えないわー。




 砦に戻ってからは、ご飯の支度しながら亜空間収納で磁器作成。本日のお夕飯は魚と野菜の具だくさんスープ。トマトで味付けしてるから、ちょっと酸味が利いてておいしいよ。


 お昼は別荘にお弁当持ち込んだし、朝も早く出たから、みんなと食卓を囲むのは夕飯のみになっちゃった。


 最近、ブランシュもノワールも単独行動が増えてるしなあ。ちょっとさみしい。

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