第237話 追加注文受けました

 剣持ちさんが案内してくれたので、無事銀髪陛下と太王太后陛下の元へ辿り着く事が出来た。


 剣持ちさんがいなかったらどうしていたかって? その辺り歩いてる侍女さんに聞くつもりだったよ?


「今日はどうしたんだ?」

「磁器が出来たのね!?」


 銀髪陛下と太王太后陛下のこの対応の違い。銀髪陛下、鈍いなあ。


「ご注文の品が出来上がりましたので、お届けに上がりましたー」


 にこやか対応は、太王太后陛下に対して。隣で銀髪陛下が苦い顔をしているけど、鈍ちんには愛想笑いはしてあげない。


「早速見せてちょうだい!」

「はい、ただいまー」


 ちょうどテーブルがあるので、その上に二人分の食器を取り出す。改めて見ても、凄い数だねえ。


 小山になったテーブルの上の磁器を見て、銀髪陛下も太王太后陛下も目を丸くしている。


 ふっふっふ。いいリアクションいただきました。


「あら、カイドと私のは、絵柄が違うのね?」

「はい。太王太后陛下の方は、お好きだという花を柄にあしらいました。ぎん……陛下の方は、お名前の頭文字を柄にあしらっています」


 あぶねー。うっかり、銀髪陛下って呼ぶところだったわ。


「あら、カイドの事は髪の色で呼んでいるのでしょう? 私の前だからといって、遠慮する事はなくてよ?」

「お婆さま……」


 バレてたよー。


「おお、皆さんおそろいで。サーリ、私の注文したものも、出来上がったのだろうね?」


 あ、領主様だ。もちろん、領主様の方は大量生産……おっと、多めに作ったもので対応可能なので、注文を受けた時には既に用意出来てたんだよね。


「どちらに出せばいいですか?」

「そうだね。ああ、そこの君。空のワゴンを三台ほど用意してくれないか?」

「かしこまりました」


 部屋の隅に控えていた、制服の小間使いさん……侍女さんは普通のドレスを着た貴族のお嬢さんなんだけど、小間使いさんはお仕着せの制服を着た裕福な家のお嬢さんなんだって……に頼んでる。


 んじゃ、ワゴンが来てからでいいか。


「そちらが両陛下のご注文なさった食器ですか?」

「ええ、そうよ。素敵でしょう?」

「ほほう、薔薇をあしらっているのですね。確かに、これは女性が好みそうだ」


 む、領主様の目がきらーんて光った。何か、嫌な予感……


「サーリ、この柄付きの食器も、十二人分用意出来ないかね?」


 やっぱりー! しかも、領主様の言葉を聞いて、太王太后陛下と銀髪陛下もやる気を出している!


「あら、では私は別の花をあしらった食器を十二人分注文するわ」

「俺も花や葉をあしらったものを十二……いや、二十四人分注文だ」


 あんた達……そうか、そんなに欲しいか磁器が。


 では! その値段にひれ伏してもらおう!


「それは構いませんが……お値段が張りますよ?」


 ちょっと、商人っぽく微笑んでみた。あ、領主様、今笑いましたね? 根に持ってやる。


「そういえば、注文した時に値段を聞かれなかったな。いくらなんだ?」


 よし、銀髪陛下が乗ってきた。さあ! 値段を聞いて驚くがよい!


「銀髪陛下の方が一千五百万ブール、太王太后陛下の方が一千八百万ブール、領主様のは数がありますので二千万ブールとなります」


 よし! 全員あっけにとられているぞ!


「その値段、本当なの?」

「もちろんです。何分、余所では手に入らない素材を使っておりますので……」


 嘘でーす。金山から採取しましたー。他にも手持ちのあれこれを使っているので、素材だけでいうなら実質ゼロかな。


「なんて事……それなのに、こんなに安いだなんて!」

「へ?」


 太王太后陛下、今、何て仰いました?


「サーリ、お前、金額の桁を一つ間違えていないか? これだけのものをそんな低い値段で売るなどと……」


 あ、銀髪陛下が可哀想なものを見る目でこっちを見てる!


「サーリ、わかっていないのなら、先に相談してほしかったよ。これからでも遅くはない。ものの価値をきちんと学ぶべきだ」


 領主様まで!? ものの価値って……え、もしかして、本当にもっと高い値段付けなきゃいけなかったってオチ?


 そんなあ。ちゃんと検索先生に聞いて、じいちゃんにも確かめたのに。


『呈示した金額は、あくまで参考価格です』


 あ、先生が逃げた。




 結局、それぞれの値段が倍に跳ね上がりました……それでもまだ安い言うとか、あの人達の金銭感覚ってどうなってんの?


 そして、新しい注文までされてしまいました……そんなに磁器好きか!? 好きなんだろうな……綺麗だもんね。


 砦に戻って、じいちゃんに次の注文と値段の事を話したら、何か納得してる。


「なるほどのう。確かに、他にないものなら、値段は天井知らずじゃわい」

「そうなの?」

「それに、数を揃えるのも、国力を示す事になるからのう。最初から、追加注文を考えておったのかもしれんぞ?」

「領主様や太王太后陛下はそうかもしれないけど、銀髪陛下は違うと思う」


 だって鈍いもん。


 まあ、ともかく、次の注文品をちゃちゃっと作っちゃおうか。検索先生、相談よろしく!


『私は逃げていません。参考はあくまで参考です』


 ……はい、わかりました。

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