第228話 ついでだから……

 いやあ、魔法って本当に便利! あっという間に別荘が出来上がったよ!


 肝心のお風呂場は、岩の露天風呂を二つと、ドラゴンコンクリートで作った内風呂を二つ。


 何故ドラゴンコンクリート? って思ったら、保温力に優れているんだって。そうなの?


『ドラゴンコンクリートは、込める魔力により保温、保冷、耐久力などが変わります。その為、保温と耐久力に適した魔力を注ぎ、風呂を作ればいいんです』


 そうなんだー。しかも、表面もざらついたものではなくて、つるっと仕上げる事が出来るんだって。


 混ぜる鱗の一番外側を細かくすればいいんだってさ。なので、パウダー状になるまで細かくしてみました。


 そしたら、本当に手触りが大理石みたいにつるんとしてる。これで保温力が高くて耐久力も高いなんて。凄くいい素材だね。


 脱衣所も広めに作って、内風呂から露天風呂へ行くルートも完成。露天風呂は、湖が見える側と、山が見える側に分けた。


 検索先生曰く、この山紅葉する木が多いらしいんだ。秋になったら紅葉狩りもいいね! もちろん、その後はここの温泉で一服だ!


 あー、楽しみ。


 私がお風呂場の工事を終えた辺りで、じいちゃんも庭作りが終わったらしい。


「じいちゃん、素敵な庭をありがとう!」

「いやなに、図面通りに作っただけじゃわい。それにしても、変わった庭じゃのう……」

「まあ、私の国の庭園だからね」


 石と緑の庭園だ。ちょっと枯山水っぽいけど、厳密には違うと思う。でも、確かにこっちのお屋敷とかでは見ない庭だよね。


 こっちの庭園はローデンの王宮とダガードの奥宮くらいしか知らないけど、どっちかっていうとフランス式庭園ってやつかな。


 樹木を綺麗に刈り込んで、花壇もきちんと計算して整えてるやつ。


 それはそれで綺麗だと思うけど、この別荘は和風建築だから、庭も和風の方が合ってるんだよ。


「何だか見ていると心が落ち着きます」

「そう? ジデジルも気に入った?」

「ええ」


 良かった。ブランシュとノワールも、庭の上を飛び回ってるから、気に入ったみたい。あ、一番奥に置いた大きな岩の上に下りてる。


 ブランシュはまだしも、ノワールはあの上によく乗れたね。やっぱり幻獣で普通の馬じゃないからかな。


 さて、後は家具とかファブリック類を整えるだけ。その辺りは、飛行船を作った時の余りもあるし、何ならしばらく飛行船から持ってきてもいいし。


 和風の外観だから、家具とかも和風か、少なくともアジアンなテイストにしたいね。


 でも、アジアンなテイストって、具体的にはどうすればいいんだろ?


『調べておきます』


 おお、検索先生ありがとう! ……でも、先生が調べるの? 知ってるんじゃないんだ?


『何か、問題でも?』


 ないです! 全っ然、無問題です!


 時たま、検索先生は怖くなる事がある。




 別荘が出来上がって翌日、砦で別荘に置く家具の製作に取りかかる。こたつとこたつ布団は絶対として、他に何置こうかな……


 あ、和箪笥は置きたいな。おばあちゃんのお友達の家に、凄く素敵な和箪笥があったんだって。


 写真で見せてもらったけど、凄く格好よかったなあ。


『これでしょうか?』


 うお! け、検索先生、最近いきなり過ぎやしませんか? あ、でもこれこれ。金具の部分が凝った飾りで素敵だったんだよね。


『妖霊樹と魔法銀で作りましょう』


 あ、はい。妖霊樹、まだ残っていたっけ……


『なければ狩りに行きましょう!』


 ……検索先生、本当に温泉にかける情熱が半端ないですね。亜空間収納の妖霊樹を探ると……微妙?


「じいちゃーん、ちょっと妖霊樹狩ってくるー」

「おー。気をつけてのー」

「はーい」


 研究室のじいちゃんに一言言って、ブランシュノワールと一緒に空へ。ジデジルは朝から大聖堂建設地だからいないしね。


 にしても、近場の妖霊樹はほぼ狩り尽くした気がするんだけど。


『人の立ち入らない山や谷は、たくさんあります』


 そうですか……えーと、案内よろしくです、先生。


『お任せあれ!』


 何だろう。最近、検索先生が暴走してる気がする……




 妖霊樹がいるのは、深い山奥の谷になってるところ。確かに、こういう場所は普通人が立ち入らないよね。


 でも、普通じゃない人達は、いたりするんだね……


「何だありゃあ!?」

「人が浮いてる!?」

「おい、ありゃグリフォンだぞ?」

「捕まえて売れば、大もうけだぜ!!」


 見るからに盗賊らしき汚いおっさん達。てか、誰を捕まえて売るって?


 問いただす気も起きないから、全員電撃で失神させて、ひとまとめにして石の牢獄を作って放り込んでおく。


 さて、妖霊樹狩りだー!


 何の苦もなく妖霊樹をたくさん狩り、ついでに狩った盗賊と捕まっていた人達と盗まれたものは全て近くの村へ送りつけた。


 ここ、コーキアンじゃないから、妖霊樹の事がバレると困るんだよね。捕まっていた人達を助けたのも、妖霊樹を狩った後だし。


 何か報償がどうのお礼がどうのって聞こえたけど、聞こえないふりして走って逃げた。人の目がないところでほうきに乗って空へ。


 空で待っていたブランシュとノワールと一緒に砦へ帰還。よし、これで大丈夫!


「何をそんなに慌てておるんじゃ?」

「え? 何でもないよ?」


 じいちゃん、なんでたまに鋭くなるの?

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