第218話 温泉別荘

 朝の散歩に行って、朝食を食べて、畑を見回って、温室を見回って。午前中のルーチンワークを終えると、もうやる事がない。


 本当は畑とか、もっと手間暇かかるものなんだろうけど、そういう部分はじいちゃんの土人形がやってくれるからねー。


 船造りは秋まで延期だし、何やろう?


『そろそろ、温泉別荘を建てるのはどうでしょう?』


 あー!! そうだったー! これまであれこらあったから、すっかり忘れてたよ。


 温泉……じいちゃんも待ってるだろうし、ジデジルも疲れがたまってるだろうから、とっとと建てていつでも行けるようにしておこう。


 あ、ポイント打っておけば、いつでも行き放題だね。


「って事は、妖霊樹の在庫確認からかな?」


 建てるのは、温泉旅館風。上に高くしないで、奥へ奥へと入り組んでいくような、そんな建物を目指す!


 という訳で、検索先生、設計図、よろしくお願いします。


『お任せください。建築資材が決まりましたら、お知らせします』


 よろしくー。……って、木材以外にあるのかな? 石材とか? まあいっか。




 そのまま検索先生にお任せして翌日。設計図が出来上がってきた。さすが検索先生、仕事が早い。


『それほどでもありません』


 いやいや、謙遜なさらず。

「んで、これが必要な建築資材か……って、また妖霊樹か!」


 まあ、木材の中でも最高峰だからね。しかもご丁寧に、妖霊樹の生息地地図までついている……


 これはあれですね。狩ってこいという事ですね。


「後は……あ、瓦か。えーと、魔力を含む粘土があればいいんだね。あ、これも採取地地図がある」


 どちらもダガード国内だから、日帰りでいけそう。他はいいのかな?


『残りは手持ちの資材で賄えます』


 あ、なるほど。教えてもらった資材は足りない分って事なんだね。


「じいちゃーん、ちょっと出てくるー」

「おー。お茶の時間には間に合いそうかの?」

「んー、ちょっと時間が読めないから、帰れそうなら帰るから、先に始めてて。あ、お菓子は冷蔵庫ね」


 本日のお菓子はプリン。何の変哲もないカスタードプリン。なんとなく、食べたくなったから。


 ああ、早くバニラが欲しい!


 その日、無事妖霊樹を必要本数……より多く狩ってこれたので、大変気分がいいですよ。そしてお茶の時間には間に合ったので、三人でプリンを食べつつコーヒーを飲んださー。カフェオレうまうま。


 翌日は、朝のルーチンワークを終えたら早速採取に出発。今日はお昼に戻るつもりはないので、お弁当持参。


 そして、本日はブランシュとノワールが一緒なのだ!


「ピイピイ」

「ウン、嬉シイネ」

「そうだねー、嬉しいねー。私達だけでどこかへ行くって、最近ではあまりなかったから」


 単独行動は何回もやったけど、二匹と一緒は久しぶりな気がする。最近、ブランシュもノワールもそれぞれ一匹で過ごす事が多いんだって。


 ノワールは高く遠くまで飛べるように練習中。ブランシュはじいちゃんのところで人間の文字やら学問を修得中らしい。


 本当に見事にばらばらだね。


「ピイ、ピイピイピピピイイ」

「ブランシュハ、モウジキ話セルヨウニナルッテ」

「本当!? 待ち遠しいなあ」


 やっぱり、親グリフォン同様流暢に話せるようになるんだ。あ、親グリフォンに会った話や、今度砦に遊びに来るって話は、みんなに伝えてある。


 私がいない時にひょっこり来て、護くんやじいちゃんに攻撃されたらやだからね。


 さて、そろそろ最初の採取地に到着。ここ、山の奥で人が入らないような場所だ。


 その山の中腹辺りに魔力の濃い地点があって、そこを少し掘ると粘土質の土が見つかる。


 これが、瓦に使う粘土かー。検索先生の指示通り……よりちょい多めで採取。あれ? ここ一カ所で終わりそう?


『複数箇所から採取してください。それぞれ性質が少しずつ違いますので、混ぜて使用します』


 あ、そうなんだ。失礼しました。


 で、その日のうちにもう一カ所、翌日は一日がかりで四カ所回って、合計六カ所から粘土を採取。


 後は必要素材と一緒に亜空間収納に入れておけば、検索先生が瓦に焼いておいてくれるって。


 いつになく、先生がやる気です。


『温泉と聞いては、黙っていられません』


 ……検索先生、温泉好きだったんだ。

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