第216話 親グリフォンとの再会
船造りが秋まで延期になったので、いきなり暇になりました。
「最近暇でさあ」
愚痴る相手は島ドラゴンだ。今日は果実の定期お届け便なのだよ。
『それを我に言ってどうするのだ?』
「いやあ、暇つぶしに付き合ってくれないかなー? って思って」
『ふむ、そのくらいなら良かろう。そろそろ、客も来るようだしな』
客? 神馬かな? 大体五日に一度はお届けに来てるから、神馬もそれを狙ってくるらしいんだよね。
いつもは果実を渡したらそのまま帰っていたから、神馬に会うのは久しぶりかも。
で、待ってたら、意外な客までいました。
「あー! 金ぴかドラゴン!」
『き……失礼な!! 我にはちゃんとした名がある!!』
えー? でも、名前呼んじゃやばいんじゃないの? ちらっと島ドラゴンを見たけど、向こうはやれやれという感じで首を振るだけ。
神馬は我関せずで、既に果実を頬張っている。食いしん坊め。
『よく聞け! 人間、我の名は――』
『名を呼ばせると、幻獣契約が成立してしまうぞ?』
『は! うぬう、人間め、狡猾な罠を……』
いやいやいや、あんたが勝手に名乗ろうとしただけでしょうが。てか、あんまり私の事をぞんざいに扱うと、多分……
『うぎゃああああ!』
あー、やっぱりー。多分、うちの砦を攻撃した時は、私個人への攻撃じゃなかったから見逃された感じかな?
その後の暴言については、私が自分でぶっ飛ばしたから、神罰の出る幕なし、とカウントされたのかも。
金ぴかドラゴンは痛みに耐えてきゅうきゅう鳴いてる。鳴き声、こんな可愛いんだ?
『この者は、ドラゴンとしては年若い部類だからな』
あ、そーなんだー。色々やらかしちゃうのも、若さ故って感じ?
「まあまあ、泣いてないで果実をお食べよ」
『な、泣いてなどおらんわ! ……でも、果実はほしい』
素直だなあ。いいけど。
『それで? 神子が島にいるとは珍しいが、何かあったか?』
神馬が果実を頬張りながら聞いてきた。その後ろでは、金ぴかドラゴンも子供みたいに果実にかじりついている。
「いや、珍しいって……いつも果実のお届けに来てるじゃない」
『会っていないぞ?』
「神馬が来るまで待ってないからね。ここに来たのは、暇つぶし。ちょっと時間が空いちゃって、やる事はあるにはあるんだけど、今すぐでなくていいし。なんと言うか、気分転換?」
そう、砦の地下に手を付けてもいいし、温室に新しい植物を植えてもいい。でも、今はどっちもやる気にならないんだよなあ。
船がお預けになって、なんとなくそこに注ぐべきだったエネルギーを持て余している感じ?
『ならば、グリフォンを訪ねてはどうか?』
「え?」
グリフォンっていうと、ブランシュの親の?
『神子の元に、子供のグリフォンがいるだろう? あれの親が、たまに上から子を見ているらしい』
「え? 来ているんなら、砦に寄っていけばいいのに」
『遠慮しているのだろう。だから、神子の口からいつでも遊びに来ていいと伝えてやってもらえないか?』
お安いご用だよ。でも、親グリフォンってどこにいるの?
『グリフォンなら、つい先程呼んでおいた。もうじきここに来るだろう』
「マジで?」
神馬って、凄いんだね。
『ああ、来たようだ』
神馬の視線に釣られて上を見たら、本当にグリフォンが下りてくる。久しぶりの親グリフォン。
……本当にブランシュの親だよね? 別のグリフォンって事はないよね?
『久しぶりだ、神子よ』
「うん、元気そうで何よりだよ。あ、ブランシュも元気だよ。最近では、一緒に生活してる黒い天馬のノワールと一緒に、よく飛んで遊んでる」
『ああ、時折、上空から見ていた』
神馬が言った事は本当だったんだ。さすがに空の上まで意識してなかったから、知らなかったよ。
「来てたんなら、砦に遊びにくればいいのに。きっと、ブランシュも喜ぶよ」
『招かれてもいないのに、訪れる訳にはいかない』
え? そうなの? 幻獣の掟みたいなのがあるとか? でも、金ぴかドラゴンは、招いていないのに来たよ?
思わず金ぴかドラゴンを見ると、果実に夢中でこっちには気付きもしない。
『……あれは別枠と考えていい』
「神馬……そうなんだね……」
見れば、島ドラゴンもなんとなく呆れた様子だ。金ぴかドラゴン……頑張れ。
おっと、今は金ぴかドラゴンよりも親グリフォンだよ。
「招かなくても、親グリフォンならいつでも歓迎するよ。遠慮はしないで」
『……ありがとう。今度は、寄らせてもらおう』
「うん、待ってる」
ブランシュだって、久しぶりにお母さん――だよね? 卵温めていたから――に会いたいと思うんだ。
でも、今回島ドラゴンのところに遊びに来て良かった。おかげで親グリフォンが砦に来てくれるっていうし。
あ、グリフォンは果実は強すぎていらないそうだから、何か別のものを用意しておこうかな。
ブランシュの好物なら、親グリフォンも好きかもしれない。ブランシュは甘い物が好きだから、お菓子でも用意しておこう。
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