第215話 予言機能も搭載されましたか?

 カエルの皮は、一時期値段が暴落したらしい。それと、領内でも比較的貧しい村や寄付に支えられる孤児院なんかに、カエルの肉が行き渡ったとか。


 ……需要と供給って、大事だよね。


 戸棚を作る素材として在庫の妖霊樹を殆ど使っちゃったので、船本体は後から狩った三千本強の妖霊樹で作る。


 既に亜空間収納の中で板材にしてあるので、後は作るのみ。いくつかは丸太のまま残してるけど。


 これ、帆柱っていうんだっけ? それにするらしいよ。


「んー。どこで作ろうかなあ……」


 いっそ、亜空間収納の中で作る?


『作るのは、秋頃までお待ちください』


 へ? 何で秋? 今から作れば、夏の間に処女航海に出られるのに。さすがに北の海を冬に行くのはちょっと……


『理由はいずれわかります。秋から制作に取りかかりましょう』


 ……何だろ? 理由って。




「ふむ。何やら予言めいておるのう」


 検索先生からの言葉をじいちゃんに相談してみた。現在、お昼休みの真っ最中。そろそろジデジルも帰ってくるかなー?


 今日のお昼は魚。素揚げした魚に野菜多めのあんをかける。出汁をしっかり利かせて、醤油はちょびっと。


 老人がいるから、塩分には気をつけないとね。


 それにしても、予言とは。


「とうとう検索先生に、予言機能まで搭載された?」

「今までだって、似たような事はあったじゃろうが」

「……あったっけ?」

「魔大陸に上陸する時は、お主の検索機能に助言をもらったじゃろうに」

「あ、そっかー」


 魔大陸に上陸するポイントとかは、検索先生に教えてもらったんだった。でも、あれは既にある情報を教えてもらっただけなんだけど。


 それを言うと、じいちゃんは髭を撫でながら考え込んじゃった。


「ふうむ……という事は、わしらの知らんところで既に何かが起きている?」

「何かって……何?」

「それこそ検索機能に聞いてみんかい」

「それもそうか」


 という訳で、検索先生! 何が起こってるんでしょうか!?


『今はお教えできません』


 あれー?


「今は教えられないって」

「ほう。今は、という事は、秋になればわかるかもしれんの」

「えー? 秋までって、まだ半年近くあるよー」

「若いお主なら、あっという間じゃ」


 うぬう。でも、船が作れないと、バニラやカカオを輸入出来ないんだけど。


「大体、船がなくともお主一人ならいくらでも行って帰って出来るじゃろうが。向こうにも、多くのポイントを打ってきたんじゃろ?」

「それもそうか」


 どこで手に入れた、とか聞かれると困るから、船が出来るまではやめておいた方がいいかも。


 また銀髪陛下にあらぬ……ではないけど、疑われるのは嫌だし。あ。


「じいちゃん、銀髪陛下にお前は神子かって聞かれた」

「何? そりゃ、いつの話しじゃ?」

「えっと、領主様のところに船を作って交易しましょって言いに行った時」

「ローデンの馬鹿王子が来るより前じゃな。全く、何故今まで黙っておったのじゃ?」

「忘れてた……」


 あ、じいちゃんが深い溜息を吐いちゃった。いや、だって。バニラやカカオがあるかもしれない大陸と、交易するってなったら、そっちに夢中になるじゃない?


 しかも、ローデンの意地悪王子まで来ちゃうしさ。そういえば、あの意地悪王子、もう帰ったんだよね?


「じいちゃん、意地悪王子ってもう帰ったんだよね?」

「そのはずですよ」


 質問の答えは、背後から聞こえた。あ、ジデジル。お昼ご飯食べに帰ってきたんだね。


「私がみっちり神学と神子様に関して講義しておきましたから、しばらくはダガードに近寄らないでしょう」

「ははは、そんなに詰め込んだんだ……」


 神子フリークのジデジルの事だから、神学半分神子の話半分で講義したな。神学だけでも結構な量になるだろうに。


 それと同じ量だけ、神子の話も聞かされたと。まあ、意地悪王子にはいい気味かな。ローデンでは大分いじめられたから。


「それより、カイド陛下に神子だと知られたかもしれないのですか?」

「ジデジル、どこから聞いてたのよ?」

「最初からです」


 だったら立ち聞きしてないで、入ってきなさいよ!




「という訳で、多分誤魔化せたんじゃないかなーと」

「なるほど……それなら、私が言った言葉がいい後押しになっているかもしれません」

「へ?」

「謁見の間で、神子様は旅立たれたと言いましたよね? いつとも、どこからどこへとも言っていませんから」


 と言う事は、ローデンを出てすぐに別の大陸へ渡ったと思わせておけば、異世界の道具がそちらにあったとしても不思議はないと言い訳出来る。


 そして、冬の間私が別の大陸に行っていた事は、領主様も銀髪陛下も知っている事。


 そっちで仕入れてきた道具だと言えば、嘘とは思われない。おお! 丸く収まってる!


「ジデジル、ありがとう!」

「いいえ、神子様に喜んでいただけるなら、このジデジル、どのような事でもいたしますとも!」


 あ、いや、別にそこまはいいです、はい。

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